消防設備士 乙6の試験には、筆記問題とは別に「鑑別」と呼ばれる記述式の科目があります。5問出題され、60%以上(5問中3問以上)の正解が合格の条件の一つです。選択肢から選ぶ形式ではなく、図や写真を見て部品名や判定結果を自分で記述するため、対策の仕方が他の科目と異なります。
この記事では、鑑別の試験形式・出題テーマ・各テーマの攻略ポイントを整理します。法令(共通)・法令(類別)の対策は乙6の鑑別の対策(出題テーマと点検要領の使い方)もあわせてご参照ください。
乙6の試験対策はこちらのアプリをご利用ください。
▶ 消防設備士 乙種第6類 問題集
鑑別の試験形式
鑑別は、消防法施行規則第33条の12が定める試験科目のうち「消火器の構造、機能及び整備の方法」の実技試験に相当します。消防試験研究センターは「鑑別等試験」と呼んでおり、筆記試験とは別の科目として採点されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 問題数 | 5問 |
| 出題形式 | 記述式(選択肢なし) |
| 合格ライン | 60%以上(5問中3問以上の正解) |
| 試験方法 | CBT方式でも記述式として実施 |
| 試験時間 | 筆記と共通(全体で1時間45分) |
出典:消防法施行規則第33条の12・消防試験研究センターの案内(2026年10月確認)
筆記試験の合格ライン(全体60%かつ各科目40%以上)を満たしても、鑑別で60%を下回ると不合格になります。鑑別だけで足切りになるケースがあるため、専用の対策が必要です。
CBT方式(コンピュータ試験)では、画面上に写真や図が表示され、キーボードで回答を入力します。手書き記述ではありませんが、選択肢は表示されないため、部品名・判定結果を自分で答える形式は変わりません。
鑑別に出る4つのテーマ
鑑別の5問は、次の4つのテーマから出題されます。複数テーマが1問にまとまることもありますが、基本はこの4分野から構成されます。
| テーマ | 出題の内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 部品の名称 | 消火器の断面図や写真を見て部品名を答える | 規格省令第13条・第26条・第27条 |
| 消火器の種類の識別 | 外観・標識の色から消火器の種類を判定する | 規格省令第8条・薬剤規格省令 |
| 点検結果の判定 | 点検後の状態から「廃棄推奨」か「使用可」かを答える | 消防庁告示第9号・点検要領 |
| 標識の読み方 | 消火器に貼られた表示ラベルの内容を確認する | 規格省令第8条 |
出典:規格省令(昭和39年自治省令第27号)・消防庁告示第9号・点検要領(2026年10月確認)
このうち「部品の名称」が最も出題頻度が高く、優先度が高いテーマです。「点検結果の判定」は廃棄基準を覚えることで安定して得点できます。
部品の名称問題の攻略
部品の名称問題は、消火器の断面図または外観写真を見て、矢印が指す部品の名称を答える形式です。加圧式と蓄圧式で構造が異なるため、それぞれの部品構成を区別して覚えることが必要です。
加圧式と蓄圧式の主要部品
| 部品名 | 加圧式 | 蓄圧式 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 安全栓 | あり | あり | 規格省令第13条 |
| 使用済み表示装置 | なし(加圧式は除外) | あり | 規格省令第35条 |
| 指示圧力計 | なし | あり | 規格省令第26条 |
| 加圧用ガス容器 | あり(内置き・外置き) | なし | 規格省令第27条 |
| 排圧栓 | なし | 粉末蓄圧式に設置義務 | 規格省令第28条の2 |
| 安全弁 | なし | あり(ガスの過圧放出) | 規格省令第26条第3号 |
| ホース | あり(大型・一定以上) | あり(大型・一定以上) | 規格省令第14条 |
出典:規格省令(昭和39年自治省令第27号)各条(2026年10月確認)
混同しやすい部品のペア
鑑別問題でよく間違えるのが、名称が似ている部品のペアです。次の2組は特に注意が必要です。
| 混同しやすいペア | 安全弁 | 排圧栓 |
|---|---|---|
| 役割 | 容器内の圧力が異常に高まったとき、ガスを自動放出して過圧を防ぐ | 整備・充填前に残圧を手動で排出するための弁 |
| 操作 | 自動(手動操作なし) | 手動 |
| 設置対象 | 蓄圧式(規格省令第26条) | 粉末蓄圧式(規格省令第28条の2) |
| 混同しやすいペア | 安全栓 | 使用済み表示装置 |
|---|---|---|
| 役割 | 誤操作防止。引き抜くことで操作可能になる | 使用後に変形・変色して「使用済み」を示す |
| タイミング | 使用前に引き抜く | 使用後に自動で表示される |
| 設置対象 | 全消火器(規格省令第13条) | 蓄圧式のみ(加圧式は除外)(規格省令第35条) |
出典:規格省令第13条・第26条・第27条・第28条の2・第35条(2026年10月確認)
「安全弁」は自動・圧力超過で動作、「排圧栓」は手動・整備時に使う、という役割の違いで区別します。「安全栓」は使用前に引き抜くもの、「使用済み表示装置」は使用後に状態が変わるもの、という時系列で覚えると混同しにくくなります。
種類の識別問題の攻略
種類の識別問題は、消火器の外観写真や特徴の説明から「粉末・強化液・泡・CO₂・ハロゲン化物」のいずれかを答える形式です。外観上の特徴を知っておけば安定して得点できます。
消火器の種類と外観の特徴
| 種類 | 指示圧力計 | ホーン(ラッパ状のノズル) | その他の外観特徴 |
|---|---|---|---|
| 粉末(ABC・BC)蓄圧式 | あり | なし | ノズルは通常タイプ |
| 粉末(ABC・BC)加圧式 | なし | なし | 加圧用ガス容器が内部にある |
| 強化液蓄圧式 | あり | なし | 透明な薬剤が見える場合がある |
| 泡(化学泡) | なし | なし | 2室構造(A液・B液)の場合がある |
| 二酸化炭素(CO₂) | なし | あり(ホーン必須) | 本体が細長い。銅色・金属光沢 |
| ハロゲン化物 | なし | なし(または小型ノズル) | ほぼ生産中止・試験では選択肢として登場 |
出典:規格省令第26条・薬剤規格省令・規格省令第8条(2026年10月確認)
識別のポイント
まず「指示圧力計があるかどうか」で蓄圧式かどうかを判断します。次に「ホーン(ラッパ状のノズル)があるかどうか」でCO₂かどうかを判断します。この2点で絞り込める問題が多くなっています。
- 指示圧力計あり → 蓄圧式(粉末または強化液)
- ホーンあり → CO₂消火器
- 指示圧力計なし・ホーンなし → 加圧式粉末・泡・ハロゲン化物のいずれか
ラベルの色は規格省令第8条が定める表示項目の一つですが、「種類を示す色」の法定はなく、メーカーによって異なります。ラベルの色だけで種類を判断しようとすると誤答につながるため、外観の構造的特徴(圧力計の有無・ホーンの有無)で判断する習慣をつけてください。
点検判定問題の攻略
点検判定問題は、点検後の消火器の状態を見て「廃棄推奨」「再充填して使用可」「そのまま使用可」のいずれかを答える形式です。消防庁告示第9号と点検要領に基づく廃棄推奨条件を覚えることが対策の中心です。
廃棄推奨となる主な条件
| 確認箇所 | 廃棄推奨となる状態 | 根拠 |
|---|---|---|
| 本体容器 | 著しい腐食・変形・損傷がある | 消防庁告示第9号・点検要領 |
| 本体容器 | ピンホール(穴)がある | 点検要領 |
| 指示圧力計 | 指針が緑色の範囲を下回っている(ガス漏れ疑い) | 規格省令第26条・点検要領 |
| 安全栓 | 安全栓が抜けている | 消防庁告示第9号 |
| 使用済み表示装置 | 使用済みの表示が出ている | 規格省令第35条・点検要領 |
| 本体・キャップ | 緩みがあり締め直しても解消しない | 点検要領 |
出典:消防庁告示第9号・消防庁が定める点検要領・規格省令第26条・第35条(2026年10月確認)
判定問題の考え方
判定問題では、写真や説明文から「廃棄推奨かどうか」を先に判断します。廃棄推奨条件に該当しない場合は「再充填して使用可」か「そのまま使用可」の二択になります。
- 廃棄推奨条件に1つでも該当 → 廃棄推奨
- 廃棄条件なし・薬剤の充填量が不足 → 再充填して使用可
- 廃棄条件なし・充填量も適正 → そのまま使用可
安全栓が抜けている状態は「誤放射の可能性がある」ため廃棄推奨です。「安全栓を差し込めば使用可」ではない点に注意してください。
標識の読み方問題の攻略
標識(ラベル)の読み方問題は、消火器に貼られた表示ラベルの内容を確認し、記載内容の意味や誤りを答える形式です。規格省令第8条が定める必須表示項目を把握しておくことが基本です。
| 必須表示項目(規格省令第8条) | 内容の例 |
|---|---|
| 品名 | 「粉末消火器(ABC粉末)」など薬剤の種類を含む名称 |
| 型式番号 | 型式承認を受けた番号 |
| 製造年 | 製造された年(月は不要) |
| 製造番号 | 製品固有の識別番号 |
| 製造者名または商標 | メーカー名 |
| 充填された消火薬剤の種類・質量(または体積) | 「ABC粉末 3.0kg」など |
| 使用温度範囲 | 例:「-20℃〜40℃」 |
| 適応火災の種別 | A・B・Cの絵表示 |
| 放射性能(放射時間・放射距離) | 規格省令第10条に基づく数値 |
| 取扱い上の注意事項 | 使用方法・廃棄方法など |
出典:規格省令第8条(昭和39年自治省令第27号)(2026年10月確認)
「製造年月が記載されている」という説明は誤りで、正しくは「製造年」のみです(規格省令第8条の文言は「製造年」のみを要求しており、月の記載は不要)。この区別が標識問題で問われるケースがあります。
鑑別対策の3ステップ
鑑別の5問で3問以上の正解を安定して確保するには、次の3つのステップで準備します。
ステップ1:部品の名称と位置を図で覚える
加圧式・蓄圧式それぞれの断面図を用意し、主要部品の名称と位置を覚えます。テキストの断面図を見ながら、部品名を隠して答える練習を繰り返すのが効果的です。
- 加圧式:安全栓・加圧用ガス容器(内置き・外置き)・バルブ・ホース・ノズル
- 蓄圧式:安全栓・使用済み表示装置・指示圧力計・安全弁・排圧栓(粉末のみ)・ホース・ノズル
両方の断面図を並べて比較することで「どちらにしかない部品」が明確になります。指示圧力計は蓄圧式にしかない、加圧用ガス容器は加圧式にしかない、という点を確実に押さえてください。
ステップ2:外観の特徴から種類を識別できるようにする
消火器の種類ごとに「指示圧力計の有無」「ホーンの有無」「外観の形状」をセットで覚えます。テキストの写真ページを見ながら、種類を答える練習をします。
CO₂消火器はホーン(ラッパ状のノズル)が最大の特徴です。粉末蓄圧式は指示圧力計がある、粉末加圧式は指示圧力計がない、という区別も頻出です。
ステップ3:廃棄推奨の条件をパターンで覚える
点検要領と消防庁告示第9号に基づく廃棄推奨条件を、箇条書きで暗記します。「腐食・変形・ピンホール」「指示圧力計の指針が緑範囲を外れている」「安全栓が抜けている」「使用済み表示が出ている」の4パターンを中心に覚えてください。
判定問題では「この状態は廃棄か、それとも再充填か」を問われるため、廃棄推奨条件を先に暗記し、それ以外を「使用可」と判断する流れを作ります。
試験前の確認ポイント
| テーマ | 確認すること | 根拠 |
|---|---|---|
| 部品の名称 | 加圧式・蓄圧式で部品構成が異なる。混同しやすいペアを区別できるか | 規格省令第13条・第26条・第27条・第35条 |
| 種類の識別 | 指示圧力計・ホーンの有無で絞り込む手順を確認できるか | 規格省令第26条・薬剤規格省令 |
| 点検判定 | 廃棄推奨の4パターン(腐食・指針異常・安全栓・使用済み表示)を答えられるか | 消防庁告示第9号・点検要領 |
| 標識の読み方 | 規格省令第8条の必須表示10項目と、「製造年のみ(月は不要)」の区別 | 規格省令第8条 |
出典:規格省令(昭和39年自治省令第27号)・消防庁告示第9号(2026年10月確認)
まとめ
鑑別は5問の記述式で、60%以上(3問以上)の正解が必要です。消防法施行規則第33条の12に基づく試験科目であり、CBT方式でも選択肢なしの記述形式で実施されます。
出題テーマは「部品の名称」「種類の識別」「点検結果の判定」「標識の読み方」の4つです。部品の名称問題が最頻出で、加圧式と蓄圧式の部品の違いを図で覚えることが最優先です。種類の識別は指示圧力計とホーンの有無で絞り込む、判定問題は廃棄推奨の4パターンを先に覚える、という手順で対策してください。
5問のうち3問を確実に取ることが目標です。部品の名称と廃棄判定の2テーマを固めるだけで、3問の正解は十分に射程に入ります。
乙6の試験対策はこちらのアプリをご利用ください。
▶ 消防設備士 乙種第6類 問題集


コメント