消火器の試験問題では「この薬剤はどの火災に使えるか」「電気火災に使えない消火器はどれか」という問い方をされます。この問題を解くには、A・B・C火災の定義と、各薬剤がどの火災に対応しているかを整理しておく必要があります。
この記事では、消火器の技術上の規格を定める省令と消防法施行令別表第二をもとに、火災区分と薬剤の対応関係を整理します。
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▶ 消防設備士 乙種第6類 問題集
A・B・C火災の定義は省令第1条の2に書かれている
消火器の技術上の規格を定める省令(昭和39年自治省令第27号。以下「規格省令」)第1条の2は、火災の区分を次のように定義しています。
| 区分 | 名称 | 対象となるもの |
|---|---|---|
| A火災 | 普通火災 | 木材・紙・繊維・ゴムなど固体の可燃物が燃える火災 |
| B火災 | 油火災 | 石油・ガソリン・アルコール・油脂類など液体の可燃物が燃える火災 |
| C火災 | 電気火災 | 通電中の電気設備や電気機器が関係する火災 |
出典:消火器の技術上の規格を定める省令第1条の2(2026年10月確認)
A火災は木材・紙・衣類など、身の回りにある固体が燃えるケースです。一般的な建物の火災はこの区分に当たります。B火災は液体燃料の火災で、石油ストーブの燃料こぼれや工場の可燃性液体が対象になります。C火災は通電中の電気機器が絡む火災で、感電の危険があるため水系の消火剤は使えません。
なお、国際規格(IEC 60335-1等)では調理油火災を「F火災」(欧州表記)または「K火災」と区分していますが、日本の消防設備士試験の出題範囲はA・B・C火災の3区分です。調理油火災専用の消火器も市販されていますが、乙6試験ではA・B・C火災の3区分の理解が中心になります。
消火薬剤の種類と適応火災の対応
消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令(昭和39年自治省令第28号)第3条から第7条は、薬剤の種類を定めています。各薬剤がどの火災に対応するかは、消防法施行令別表第二(消火器の適応性)と規格省令を合わせて確認します。
| 薬剤の種類 | A火災 | B火災 | C火災 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 粉末(りん酸塩類等) | ○ | ○ | ○ | ABC粉末。最も広く使われる |
| 粉末(炭酸水素塩類等) | × | ○ | ○ | BC粉末。A火災には適応しない |
| 強化液 | ○ | ○ | ○ | 霧状放射時はABC対応。棒状放射はA・Bのみ |
| 水 | ○ | × | × | 冷却効果が高いがB・Cには使えない |
| 機械泡 | ○ | ○ | × | 合成界面活性剤泡。電気を通すためC火災不可 |
| 化学泡 | ○ | ○ | × | 炭酸水素ナトリウムと硫酸アルミニウム。C火災不可 |
| 二酸化炭素 | × | ○ | ○ | A火災には適応しない。電気絶縁性が高い |
| ハロゲン化物 | × | ○ | ○ | A火災には適応しない。水分は厳禁 |
出典:消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令第3〜7条・消防法施行令別表第二(2026年10月確認)
上の表で特に押さえておきたいのは次の3点です。
- 水と泡(機械泡・化学泡)はC火災に使えない
- 二酸化炭素とハロゲン化物はA火災に使えない
- 粉末(炭酸水素塩類等)はB・C対応でAには使えない
「ABC」と名のつく粉末消火器が広く使われているのは、この3区分すべてに適応しているためです。一方で、炭酸水素塩類等の粉末(いわゆる「BC粉末」)はりん酸塩類等と見た目が似ていますが、A火災への適応性がない点が違います。
C火災に水・泡が使えない理由
水や泡(機械泡・化学泡)がC火災に使えないのは、電気を通す性質があるためです。通電中の電気設備に水や泡を噴射すると、電流が消火器のホースや放射した液体を伝って噴射者に流れ、感電するおそれがあります。
規格省令は消火器の適応性を定めていますが、C火災への不適応の根拠は「電気を通す薬剤は通電状態の設備への使用に危険を伴う」という性質にあります。
これに対して粉末消火薬剤(りん酸塩類等・炭酸水素塩類等)・二酸化炭素・ハロゲン化物・強化液(霧状放射時)は電気を通しにくいため、C火災への適応性が認められています。
強化液については、霧状(噴霧)放射であればC火災に適応しますが、棒状放射(ストレート放射)の場合は電気を通すためC火災には使えません。この区別は消防法施行令別表第二に記載されており、棒状と霧状で適応性が異なります。
消防法施行令別表第二の読み方
消防法施行令別表第二は、消火器の種類ごとに適応する火災(防火対象物の用途・危険物の種類)を一覧表で示しています。試験では、この表の主要な列に対応できるかどうかが問われます。
別表第二の横軸(列)には「建築物その他の工作物」「電気設備」「第四類の危険物・指定可燃物(可燃性液体類等)」などが並んでいます。縦軸(行)に消火器の種類が並び、適応するものに「○」、しないものには記号なし(もしくは「×」相当)が入ります。
| 消火器の種類 | 建築物(A火災相当) | 電気設備(C火災相当) | 第四類危険物等(B火災相当) |
|---|---|---|---|
| ABC粉末(りん酸塩類等) | ○ | ○ | ○ |
| BC粉末(炭酸水素塩類等) | — | ○ | ○ |
| 強化液(霧状) | ○ | ○ | ○ |
| 強化液(棒状) | ○ | — | — |
| 水(棒状・霧状) | ○ | — | — |
| 機械泡・化学泡 | ○ | — | ○ |
| 二酸化炭素 | — | ○ | ○ |
| ハロゲン化物 | — | ○ | ○ |
出典:消防法施行令別表第二(主要列を抜粋・2026年10月確認)
別表第二の全列は「建築物・電気設備・第四類・可燃性液体類」以外にも、ガス・金属火災・その他の危険物など多岐にわたりますが、乙6試験では建築物・電気設備・第四類の3列の組み合わせを問う出題が中心です。
薬剤ごとの特性と適応性の理由
粉末(りん酸塩類等)がABC全対応の理由
りん酸塩類等の粉末は、熱分解して生じるメタリン酸がA火災の燃焼面に被膜を形成し(防炎効果)、遊離ラジカルを捕捉することでB・C火災の燃焼連鎖を断ちます。A火災への対応力を持つのはこの被膜形成作用によるものです。
炭酸水素塩類等の粉末がA火災に対応しない理由
炭酸水素塩類等の粉末はB・C火災に有効な窒息・抑制効果を持ちますが、A火災で起きる固体の燃焼には燃焼面への被膜形成が追いつかず、再燃を防ぐ効果が低くなります。そのため、別表第二でA火災(建築物)の欄に「○」がつきません。
水がB・C火災に使えない理由
水はB火災(油火災)では油の上に広がって火を拡大させるリスクがあり、C火災では電気伝導性のため感電の危険があります。冷却効果は最も高いため、A火災(固体の可燃物)には適していますが、B・C火災への使用は禁忌です。
二酸化炭素がA火災に対応しない理由
二酸化炭素は酸素濃度を下げる窒息効果でB・C火災を消火しますが、固体の燃焼(A火災)では燃焼物の内部まで酸素を遮断できず、表面の消火後に再燃しやすいため適応性がありません。
試験の出題パターン
この内容は規格科目(消火器及び消火薬剤の規格・6問)と法令(類別)科目(4問)の両方に関係します。出題のパターンを整理します。
| 出題パターン | 正解の導き方 |
|---|---|
| 電気火災に適応しない消火器を選ぶ | 水・機械泡・化学泡・強化液(棒状)が不適応。これらが選択肢に含まれているかを確認 |
| A・B・C全部に適応するものを選ぶ | ABC粉末・強化液(霧状)の2種。強化液は放射方式の条件に注意 |
| A火災(普通火災)に適応しないものを選ぶ | BC粉末・二酸化炭素・ハロゲン化物の3種が不適応 |
| B火災のみ・Bに適応するもの | 水はB火災に使えない点を押さえる。泡・粉末・強化液・CO₂・ハロゲン化物はB対応 |
| 別表第二の「○」を問う | 電気設備(C火災)の列に「○」がつく薬剤を選ぶ。水・泡はつかない |
出典:消火器の技術上の規格を定める省令・消防法施行令別表第二(2026年10月確認)
間違えやすいのは強化液の「霧状か棒状か」による違いです。強化液は霧状放射でABC全対応、棒状放射ではC火災への適応性がありません。放射方式の記述が問題文にあるかどうかを確認して答える必要があります。
また、「炭酸水素塩類等の粉末はA火災に使えない」という点も問われます。ABC対応の「りん酸塩類等」とBC対応の「炭酸水素塩類等」は、薬剤名で区別する練習をしておきましょう。
まとめ
消火器の適応火災は、規格省令第1条の2が定めるA(普通)・B(油)・C(電気)の3区分です。薬剤の適応性は別表第二と規格省令の組み合わせで決まります。
整理すると、C火災(電気火災)に使えないのは「水・機械泡・化学泡・強化液(棒状)」、A火災(普通火災)に使えないのは「炭酸水素塩類等の粉末・二酸化炭素・ハロゲン化物」です。ABC全対応は「りん酸塩類等の粉末」と「強化液(霧状)」が該当します。
薬剤の種類と適応火災の表は数字ドリルや問題集で繰り返し確認すると定着しやすいです。
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