キッチンカーの創業計画書、収支の見通しの書き方。

キッチンカーの開業で日本政策金融公庫に融資を申請する際、「創業計画書」の「事業の見通し」欄に収支の数字を記入する必要があります。記入に必要な数字は「売上高・仕入原価・経費・利益」の4段ですが、キッチンカーの場合は固定店舗と収支の構造が異なるため、各項目への数字の当てはめ方を理解しておくことが重要です。

この記事では、キッチンカーの創業計画書「事業の見通し」欄の書き方と、各数字の計算方法を解説します。

創業計画書とは

日本政策金融公庫の創業融資を申請する際に提出が求められる書類です。事業の概要・経歴・資金の調達方法とともに、「事業の見通し」欄で月次・年次の収支見通しを数字で示します。

創業計画書の書式は日本政策金融公庫のウェブサイト(jfc.go.jp)から入手できます。書式は複数ありますが、個人事業主・小規模事業者向けの「創業計画書」が一般的に使われます。

「事業の見通し」欄の4つの項目

「事業の見通し」欄には、創業当初と軌道に乗った後の2期分の数字を記入します。項目は次のとおりです。

「事業の見通し」欄の項目
項目 キッチンカーでの考え方
売上高 客単価 × 1日の食数 × 出店日数 × 12か月(年間)
売上原価(仕入原価) 食材費(売上高 × 食材費率)
経費(人件費・家賃・その他経費) 出店料・車両維持費・保険・駐車場代・消耗品・通信費・借入利息など
利益 売上高 − 売上原価 − 経費

キッチンカーには「家賃」がありませんが、代わりに「出店料(場所代)」が発生します。出店料は経費に含めます。出店料が歩合制(売上の○%)の場合は月によって変わりますが、創業計画書には安定月の数字を記入するのが一般的です。

売上高の計算例

「事業の見通し」の売上高は月次・年次の数字を示します。

売上高の計算例
項目 創業当初 軌道に乗った後
1日の食数 30食 50食
客単価 900円 900円
月の出店日数 18日 20日
月の売上高 486,000円 900,000円
年間の売上高(×12) 5,832,000円 10,800,000円

「創業当初」は開業後に売上が立ち上がる前の数字を使います。出店場所が確保できていない初月から段階的に増えていくため、最初の1〜2か月は計画より少ない食数を想定することが現実的な計画になります。「軌道に乗った後」は、固定出店先が確保され、リピーターも付いた安定期の数字です。

売上原価(食材費)の計算例

売上原価は食材費(仕入れにかかる費用)です。

  • 月の食材費 = 月の売上高 × 食材費率
  • 例:月の売上高900,000円・食材費率35% → 315,000円

食材費率は業態・メニューによって異なります。キッチンカーの食材費率の目安については「キッチンカーの原価率、飲食店と何が違うか。」で解説しています。

経費の内訳の書き方

経費は「人件費」「家賃」「その他の経費」に分けて記入します。キッチンカーの場合、それぞれの当てはめ方は次のとおりです。

経費の項目とキッチンカーでの当てはめ
創業計画書の項目 キッチンカーでの記入内容 月の金額の目安
人件費 スタッフを雇う場合の給与。1人経営なら0円(オーナーは利益から生活費を充当) 0〜10万円程度
家賃 駐車場・車庫の賃料。店舗なし 1〜3万円程度
その他経費 出店料・車両維持費・燃料費・保険料・消耗品・包装資材・通信費・借入利息など まとめて記入

出店料は「その他経費」に含めて記入します。月の出店料が変動する(歩合制)場合は、安定月の見込み額を記入します。

月の経費の計算例

月の経費の内訳例(軌道に乗った後)
費目 月の金額
出店料(歩合20%) 180,000円(月の売上900,000円×20%)
駐車場代 15,000円
車両維持費・燃料費 20,000円
保険料(年間平均) 8,000円(年96,000円÷12)
消耗品・包装資材 20,000円
通信費 5,000円
借入利息 3,000円(借入残高による)
その他 5,000円
合計 256,000円

経費の内訳は審査担当者が「実態に即しているか」を確認します。根拠のない数字ではなく、見積もり・相場・実際の契約条件をもとに積み上げることが重要です。

「事業の見通し」全体のまとめ方

上記の数字を使って「事業の見通し」欄の記入例を示します。

「事業の見通し」記入例
項目 創業当初(月次) 軌道に乗った後(月次)
売上高 486,000円 900,000円
売上原価(食材費35%) 170,100円 315,000円
粗利益 315,900円 585,000円
経費(出店料・維持費など) 170,000円(出店料含む) 256,000円(出店料含む)
利益 145,900円 329,000円

創業当初の利益は月14.6万円(年間175万円程度)の計画です。借入返済はここから支払われます。借入200万円・年2%・60か月返済の場合、月の返済は約35,047円です。利益14.6万円から返済3.5万円を引いた約11万円が手元に残る計算になります。

創業計画書を書く前に準備すること

創業計画書の数字は、根拠なく書いても審査の場で問い直しが入ります。記入前に次を準備しておくことをお勧めします。

  • 出店先の候補と出店料の見込み(交渉中・問い合わせ中の状況でも)
  • 車両・改造費の見積書
  • 食材の仕入れ先と価格の目安
  • 客単価の設定根拠(類似業態の相場・自分の提供内容)
  • 1日の食数の根拠(出店先の想定人数・過去の類似経験など)

数字の根拠を説明できる準備が、審査で信頼を得るための基本です。

収支の数字を事前にシミュレーションする

創業計画書を書く前に、売上・経費・利益の数字を自分のケースでシミュレーションしたい場合は、キッチンカー開業 収支シミュレーターが使えます。計画書に使える月次・年次の収支・資金繰りを計算できます。無料で使えます。

開業資金の内訳については「キッチンカーの開業資金はいくら必要か。」で解説しています。


この記事は創業計画書の書き方の一般的な解説であり、公庫の審査基準を保証するものではありません。審査の詳細・書式の最新版は日本政策金融公庫(jfc.go.jp)で確認してください。融資の可否・条件は個人の信用状況・事業内容・審査時期によって異なります。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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