有料老人ホームの創業計画書、「事業の見通し」に書く数字。

有料老人ホームの創業計画書、「事業の見通し」に書く数字。 介護




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有料老人ホームの開業資金を日本政策金融公庫(公庫)から借り入れる際は、創業計画書の提出が求められます。公庫の「創業の手引き」に示された「事業の見通し(月平均)」には、収入・費用・利益の見込みを根拠のある数字で記載する必要があります。入居率の想定と介護報酬(介護付きの場合)の計算が審査のポイントです。

日本政策金融公庫の創業計画書に「事業の見通し」が必要

日本政策金融公庫(公庫)は、国民生活事業・中小企業事業などの融資メニューを通じて、創業間もない事業者への資金提供を行っています。有料老人ホームの開業に使える融資メニューとして「新規開業資金」があり、長期・固定金利での借り入れが可能です。融資申込に必要な書類の一つが創業計画書で、公庫のウェブサイトに様式が公開されています(日本政策金融公庫「創業の手引き」)。

創業計画書の中の「事業の見通し(月平均)」欄には、開業後に安定した状態になったときの月平均の収入・費用・利益を記載します。「楽観的すぎない根拠のある見通し」を示せるかどうかが、審査担当者の判断に影響します。

「事業の見通し」に記載する収入の項目

有料老人ホームの月平均収入は、種別(介護付き・住宅型)によって構成が変わります。

介護付き(特定施設)の場合:

収入の種類 計算の根拠
介護報酬収入(介護保険給付分) 基本報酬単位 × 地域単価 × 入居者数 × 日数 × (1 − 自己負担割合)の概算
介護保険自己負担(入居者から徴収) 基本報酬単位 × 地域単価 × 入居者数 × 日数 × 自己負担割合(1〜3割)
居住費収入 1室あたりの設定月額 × 入居者数
食費収入 1食あたりの設定額 × 3食 × 入居者数 × 月日数
その他サービス費 選択的サービスの見込み利用額(少額なら一括で記載しても可)

住宅型の場合:介護報酬収入は発生しないため、居住費・食費・その他サービス費の合計が収入になります。

介護報酬の計算には、入居者の要介護度の構成比率の仮定が必要です。新規開業の場合は地域の高齢者介護の実態(地域包括支援センターや行政の情報)を参考に、合理的な仮定を設定します。

入居率の仮定が審査のポイント

「事業の見通し」で最も重要な前提が入居率です。開業直後は入居率が低く、徐々に増えていくのが一般的です。安定稼働時の入居率をどう設定するかが、収入の見込みに直結します。

入居率を高く設定しすぎると「楽観的すぎる計画」と判断されるリスクがあります。一方で、地域の高齢者人口・競合施設の状況・自施設の立地や特徴などを踏まえた根拠を示せれば、合理的な仮定として認められやすくなります。

審査に備えて、楽観シナリオ(入居率80〜85%程度)と保守的シナリオ(入居率60〜70%程度)の両方で月次収支を計算しておくことをおすすめします。保守的シナリオでも資金繰りが維持できることを示せると、融資の説得力が増します。

「事業の見通し」に記載する主な費用の項目

費用の種類 計算の根拠・注意点
人件費 職種別の月給 × 人数 × (1 + 法定福利費率:約15%)。介護付きは人員基準に基づく人数が下限
建物賃料(または減価償却費・ローン返済) 賃借の場合は月額賃料、自己所有の場合は元利返済額または減価償却費
食材費 1食あたりの食材費 × 3食 × 入居者数 × 月日数
光熱費(電気・ガス・水道) 建物規模・設備から概算(類似施設の実績値が参考になる)
介護用品・消耗品費 おむつ代等(施設負担とする場合)、清掃用品、消耗備品
外注費(清掃・リネン・厨房委託等) 委託する業務の契約額
保険料(施設賠償責任保険等) 加入する保険の年払い保険料÷12か月
借入金返済(利息分) 融資元本の返済は費用に含めないが、利息は費用に計上する

創業計画書では「月平均」の費用を記載しますが、開業直後は入居者が少ない分だけ変動費(食材費・介護用品費等)は少なく、固定費(人件費・賃料)は満額発生します。「安定稼働時」の月平均費用を記載する場合は、その旨を添えて記載すると伝わりやすくなります。

運転資金の必要額の示し方

融資申込の際は、設備資金(建物・設備・改修費)と運転資金(開業後の赤字期間をまかなう資金)を分けて記載します。

運転資金の目安は「損益分岐点の入居率に達するまでの月次赤字の累計額」です。たとえば、開業から黒字転換まで12か月かかり、その間の月次赤字が平均100万円であれば、運転資金の目安は1,200万円になります。

加えて、介護付きの場合は介護報酬の2か月後払いによる資金繰りのタイムラグがあります。最初の2か月分は介護報酬の入金がないため、その分も運転資金に含めておく必要があります。

月次の資金繰りを試算するには、有料老人ホーム開業 収支シミュレーターが便利です。36か月分の月次収支と資金繰りグラフが出力でき、損益分岐点の入居率も確認できます。公庫の面談に持参する資料として活用していただけます。

開業前の費用は設備資金として整理する

創業計画書の「必要な資金と調達方法」欄では、設備資金と運転資金を別に記載します。

  • 設備資金:土地・建物の取得費(または敷金・礼金・改修費)、設備・備品の購入費、開業前の人件費(職員の採用・研修期間中の給与)
  • 運転資金:開業後に損益分岐点に達するまでの間の毎月の赤字額×月数、2か月分の介護報酬の前受け不足分

開業前の職員採用・研修期間中の人件費を見落として「運転資金が足りない」という事態になるケースがあります。施設が完成してから入居者を受け入れるまでの間も人件費は発生するため、この期間のコストを設備資金(または運転資金)に含めておくことが重要です。

公庫への相談は物件探しの段階から始める

公庫への融資申込は、物件・建物が確定してからでも間に合いますが、事前相談は早い段階から行うことをおすすめします。公庫の担当者に相談することで、計画書に必要な情報・記載のポイントを把握でき、申込書類の準備がスムーズになります。また、都道府県や市区町村の福祉・産業振興部門が実施している創業支援窓口を活用すると、公庫の紹介や計画書作成のアドバイスを受けられる場合があります。

公庫の融資は審査から実行まで通常1か月以上かかります。開業スケジュールを踏まえた上で、余裕を持って申込を進めることが重要です。

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出典:日本政策金融公庫「創業の手引き」(公庫公式ウェブサイト)。融資条件・書類の詳細は必ず公庫公式ページまたは窓口でご確認ください。当サイトは資格者ではなく、融資の審査結果を保証しません。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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