児童発達支援(以下、児発)では、食物アレルギーを持つ乳幼児への対応が施設運営上の重要な課題です。食物アレルギーの誤提供はじんましんから命に関わるアナフィラキシーショックまで引き起こす可能性があり、事故発生防止の観点から施設として体制を整えておくことが求められます。
保育所向けには「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」(厚生労働省・文部科学省、2019年改訂版)があります。児発は保育所とは根拠法が異なる(障害者総合支援法・児童福祉法)ため法的な適用はありませんが、実務上の参考として広く活用されています。
なお、通常の保育所とは異なり、児発には障害のある子どもが在籍します。感覚過敏がある子どもはアレルギー反応に似た症状(皮膚への刺激による赤みなど)を示すことがあり、保護者から取得したアレルギー情報と日常の様子を照らし合わせながら対応することが実務上重要です。
食物アレルギー対応で施設に求められること
食物アレルギー対応は、指定通所支援基準の安全管理・事故発生防止に関する規定の一環として位置づけられます。主な取り組みを整理します。
| 取り組みの内容 | 実施時期・頻度 |
|---|---|
| 生活管理指導表(医師の診断に基づく書類)による保護者からの情報収集 | 利用開始前・年度更新時 |
| アレルギー情報の職員全員への共有 | 新規情報が入るたびに |
| 除去食・代替食の提供ルールの文書化 | 利用開始前に整備 |
| エピペン処方児への対応手順の確認 | 定期的に・担当者が変わるたびに |
| 食物アレルギー対応に関する職員研修 | 年1回以上 |
主な食物アレルゲンと特定原材料
食品表示法に基づき、以下の8品目は「特定原材料」として食品への表示が義務づけられています。市販のおやつや加工食品を提供する際は、原材料表示の確認が必須です。
| 特定原材料(表示義務) | 特定原材料に準ずるもの(表示推奨)の例 |
|---|---|
| 卵・乳・小麦・そば・落花生(ピーナッツ)・えび・かに・くるみ | いか・いくら・オレンジ・キウイフルーツ・牛肉・豚肉・鶏肉・大豆・ゼラチン など |
(出典:食品表示法・消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」)
重症度は個人によって大きく異なります。微量の摂取でアナフィラキシーを起こす子どももいるため、保護者から取得した生活管理指導表の内容を職員全員が理解し、誤提供を防ぐ手順を徹底します。
アナフィラキシーとは何か
アナフィラキシーは、アレルゲンが体内に入ることで全身に急激なアレルギー反応が起きる状態です。じんましん・嘔吐・下痢にとどまらず、呼吸困難・血圧低下・意識消失など命に関わる症状が数分〜数十分で起こることがあります。
乳幼児は症状を言葉で伝えられません。また、知的障害や自閉スペクトラム症のある子どもは痛みや不快感の表現が異なることがあり、「いつもと違う様子」から職員が早期に気づくことが重要です。研修では「アナフィラキシーが疑われるサインを職員全員が知っている状態」を目標とします。
アナフィラキシーが疑われる場合の対応手順は以下の通りです。
- 誘因(食べたもの・触れたもの)を取り除く
- エピペンが処方されている子どもの場合は速やかに使用を検討する
- 119番通報する(エピペン使用の有無にかかわらず)
- 保護者に連絡する
- 症状が悪化した場合に備え、仰臥位(横になった状態)で安静を保つ
エピペン(アドレナリン自己注射薬)の取り扱い
エピペンはアナフィラキシーの緊急処置として使用するアドレナリン自己注射薬です。医師から処方を受けた子どもが施設に通所している場合、職員が本人に代わって使用する立場になります。
厚生労働省の通知(「保育所等におけるアドレナリン自己注射薬(エピペン)の使用について」)では、保育士等が緊急時にエピペンを使用することは医師法上の医行為に該当しないと整理されています。ただし使用にあたっては、保護者からの事前同意と施設内での対応手順の整備が必要です。
研修で確認するポイントは以下の通りです。
- エピペンの保管場所(持ち出しやすい場所・職員全員が場所を知っているか)
- 使用の判断基準(どの症状が出たら使うか・判断できる職員は誰か)
- 注射の手順(太ももの外側に押し当てて使用する・練習用トレーナーで動きを確認する)
- 使用後の対応(119番通報・保護者連絡・医療機関での受診)
エピペンを処方されている子どもが在籍している間は、担当職員が変わるたびに引き継ぎを行い、施設全体で対応できる状態を維持します。
除去食・代替食の提供管理
おやつや食事を提供する施設では、食物アレルギーを持つ子どもへの誤提供を防ぐ手順が必要です。
情報収集:利用開始前に保護者から生活管理指導表を受け取ります。医師の診断に基づくアレルゲンの種類・重症度・除去の方法を文書で確認します。
調理・提供時のチェック:アレルゲンが含まれる食材の混入を防ぐため、調理器具の分離・配膳時の確認・提供前の職員ダブルチェックの手順を文書で定めます。
代替食の準備:市販品を使用する際も原材料表示を都度確認します。「前回と同じ商品」でもリニューアルで原材料が変わることがあるため、毎回確認する習慣をつけます。
情報更新のタイミング:食物アレルギーは成長に伴って変化することがあります。年度更新時に生活管理指導表を再提出してもらうことで情報が古くなるリスクを減らします。
研修で扱う内容のまとめ
- 食物アレルギーの基礎知識(特定原材料8品目・アナフィラキシーの見分け方)
- 在籍中のアレルギー対応が必要な子どもの情報共有(担当者だけでなく全員が把握)
- エピペンの保管場所・使用手順の確認(練習用トレーナーを使った実習)
- 除去食・代替食の提供手順と誤提供防止のチェック方法
- 障害のある子ども固有の観点(感覚過敏・症状表現の違い・行動特性とアレルゲン接触のリスク)
- アナフィラキシー発生時の対応フロー(119番・保護者連絡・記録)
研修の記録として残すもの
- 研修の実施日・テーマ・参加職員名・受講確認サイン
- 在籍中の食物アレルギー対応者の一覧(保護者の同意を得た上で管理)
- 生活管理指導表(医師の診断に基づくもの・年度ごとに更新)
- エピペン保管・使用手順のマニュアル(施設内で整備・更新)
- アレルギー発作発生時の対応記録(発生日時・症状・処置内容・報告先)
記録の保存期間は一般的に5年間が目安です。指定権者(市区町村または都道府県)の指示に従って管理します。
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出典:指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準・食品表示法・消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」・厚生労働省「保育所等におけるアドレナリン自己注射薬(エピペン)の使用について」・厚生労働省・文部科学省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)」(参考)。


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