建設業の石綿(アスベスト)事前調査、工事前に作業員への周知が義務になった

建設業の石綿(アスベスト)事前調査、工事前に作業員への周知が義務になった 建設業(安全衛生教育)

建物の解体・改修工事を行う前には、石綿障害予防規則第3条に基づく事前調査が義務付けられています。2022年4月の規則改正により、それまで吹き付け石綿のある建物に限られていた調査義務が、すべての解体・改修工事に拡大されました。さらに2023年10月からは、書面・目視で石綿含有の有無が確認できない建材がある場合に、分析調査が義務化されています。事前調査の結果は書面で保存するとともに、作業員に周知することが石綿則の関連規定に基づいて求められています。工事着手前に調査を怠った場合は、石綿則違反として罰則の対象となります。

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石綿則第3条が定める事前調査の義務

石綿障害予防規則(以下「石綿則」)第3条は、建築物等の解体・改修工事を行う場合の事前調査について次のように定めています。

事業者は、次に掲げる作業(以下「石綿等が使用されている建築物等の解体等の作業」という。)を行うときは、当該作業に係る建築物等について、石綿等の使用の有無を目視、設計図書等により調査しなければならない。(石綿障害予防規則第3条第1項 e-Gov法令検索より)

2022年4月1日の改正前は、この事前調査の対象は吹き付け石綿が使用されていることが明らかな建築物等に関する工事に実質限られていましたが、改正後は「解体・改修工事を行うときは必ず調査する」という形に明確化されました。すなわち、建物の用途・築年・規模を問わず、解体・改修工事に着手する前に事前調査の実施が原則として必要です。

調査の方法は「目視、設計図書等により」とされています。図面・仕様書・材料リスト等の書面と、現地での目視確認の組み合わせが基本です。また、書面や目視だけでは石綿含有の有無が判断できない場合には、後述する分析調査が必要となります。

出典:石綿障害予防規則第3条(e-Gov法令検索で原文を確認)

2022年4月改正の主な変更点

2022年4月1日施行の石綿則改正では、事前調査に関して以下の主な変更が行われました。

まず、調査を行う者の資格要件が設けられました。建築物の解体・改修工事の事前調査については、一定の講習を修了した「建築物石綿含有建材調査者」が調査を実施することが義務化されました(一定規模以上の建築物の場合)。それ以前は資格の要件がなかったため、この変更によって調査の質と責任の所在が明確化されました。

次に、調査結果の記録と保存が義務化されました。改正前から調査は行われていましたが、調査結果の記録保存について明確な規定がなかったため、改正後は石綿則第3条第4項・第5項で記録の作成と保存(3年間)が明記されました。

さらに、石綿則第3条第3項により、事前調査の結果を発注者へ書面で説明することが義務付けられました。施工業者が調査を行い、その結果を工事の発注者に説明して確認を得るという流れが法的に求められるようになりました。

調査結果は、以下の内容を記録として残す必要があります。

  • 調査を実施した建築物等の概要(所在地・建築年・構造等)
  • 調査の実施日・実施者の氏名・資格の種類
  • 調査の方法(目視・設計図書・分析等)
  • 石綿等の使用の有無と使用箇所・使用材料の種類
  • 分析調査を行った場合はその結果

2023年10月からの分析調査義務化

2023年10月1日からは、建築物の解体等の工事において、目視や設計図書による調査だけでは石綿含有の有無が確認できない建材(石綿含有の有無が不明な建材)について、分析調査が義務化されました。

分析調査とは、建材の試料を採取し、専門機関の分析によって石綿含有の有無を確認することです。目視では石綿を含んでいないように見えても、実際には含有していることがあります。1970〜80年代に施工された建物では、当時は安全とされていた建材が後に石綿含有と判明した事例が多数あり、分析なしには判断できないケースが少なくありません。

分析調査が必要なタイミングと範囲は次のとおりです。

  • 書面調査や目視調査で石綿含有の有無が確認できない建材がある場合
  • 石綿含有なしと書面に記載されていても、書面の信頼性に疑義がある場合

分析調査を実施した場合は、その結果についても記録を残す必要があります。分析を外部機関に委託した場合は、分析報告書を保存します。

義務化前の2023年9月までは、書面や目視で確認できなかった場合に「石綿が含有しているものとして扱う(みなし規定)」という選択肢がありました。2023年10月以降はみなしによる対応の範囲が変わりましたので、法改正後の石綿則の最新規定を必ず確認してください。

事前調査結果の届出義務

石綿則第3条の2は、一定規模以上の工事について、事前調査の結果を電子システム(環境省・厚生労働省が運営する「石綿事前調査結果報告システム」)に届け出ることを義務付けています。

届出が必要な工事の要件は次のとおりです。

  • 建築物の解体工事であって、当該建築物の床面積の合計が80平方メートル以上の工事
  • 建築物の改修工事であって、当該工事の請負代金の合計額が100万円以上の工事
  • その他一定規模以上の特定粉じん排出等作業を伴う工事

これらに該当する工事については、工事着手前に事前調査の結果をシステムに入力して届け出る必要があります。また、大気汚染防止法に基づく届出(都道府県知事・政令市長への届出)が別途必要な工事もあります。届出先・届出時期・記載事項は工事規模や石綿含有の有無によって異なるため、工事ごとに確認が必要です。

石綿則第3条の2の届出義務(厚生労働省所管)と、大気汚染防止法に基づく届出(環境省所管)は別の制度であり、両方の届出が求められる場合があります。

出典:石綿障害予防規則第3条の2(e-Gov法令検索で原文を確認)

作業員への周知が求められる理由と方法

事前調査で石綿含有建材の使用が確認された場合(または含有の疑いがある場合)、当該工事に従事する作業員に対してその情報を周知することが石綿則の関連規定に基づいて求められています。

なぜ周知が必要かというと、作業員が現場のどの部分に石綿含有建材があるかを知っていなければ、適切な防護措置をとることができないからです。調査結果を施工管理者だけが把握し、現場の作業員には知らせないという状況では、作業員が誤って石綿含有建材を処理してしまい、石綿繊維を吸い込む危険性があります。

周知の方法については、次のような手段が実務上用いられています。

  • 朝礼・安全衛生教育の場での口頭説明(石綿含有建材の場所・作業時の注意点を説明)
  • 作業計画書・施工図面への石綿含有建材の位置の明記(図面に色分けで示す等)
  • 現場掲示(石綿含有建材の存在場所・立入禁止区域等の掲示)
  • 書面による個別の確認・署名(周知を受けたことの確認)

石綿則第7条では、解体等の作業を行う場合に作業計画を定め、その内容を関係作業員に周知することを義務付けています。作業計画には石綿含有建材の場所・使用量・処理方法を記載する必要があります。周知は計画書の配布と説明の場をセットで行うことが望ましいです。

出典:石綿障害予防規則第7条(e-Gov法令検索で原文を確認)

石綿作業の特別教育(安衛則第36条第28号)

石綿含有建材の除去・封じ込め・囲い込みを行う作業員には、労働安全衛生規則第36条第28号に基づく特別教育が必要です。

石綿障害予防規則(中略)に規定する石綿等の粉じんが発散する屋内作業場における業務(同規則第27条各号に掲げる業務を除く。)(労働安全衛生規則第36条第28号 e-Gov法令検索より)

この特別教育の対象は、石綿を含む材料を実際に取り扱う作業(除去・解体・封じ込め等)に従事する者です。単に調査を行うだけの者や、石綿含有建材がない区域のみで作業する者については対象とならない場合がありますが、疑義がある場合は石綿含有があるものとして対応するのが安全です。

特別教育の科目は「石綿障害予防規則第27条の特別教育規程」(厚生労働省告示)が定めており、主な科目は以下のとおりです。

  • 石綿等の有害性に関する知識
  • 石綿等の使用状況の調査に関する知識
  • 石綿等に係る保護具の使用方法
  • 石綿等の作業において注意すべき事項
  • 関係法令

事前調査だけでなく、石綿除去作業そのものに従事する予定の作業員については、工事着手前にこの特別教育を修了させておくことが必要です。特別教育の記録は、安衛則第38条に基づき3年間保存します。

出典:労働安全衛生規則第36条第28号(e-Gov法令検索で原文を確認)

石綿作業主任者の選任義務

石綿則第10条は、石綿を含む建材の除去・封じ込め・囲い込みの作業(石綿等の粉じんが発散する屋内作業場における作業)を行う事業者は、石綿作業主任者技能講習を修了した者のうちから、「石綿作業主任者」を選任することを義務付けています。

石綿作業主任者は、当該作業の指揮・監督の責任者です。特別教育の修了者とは異なり、技能講習の修了が必要です。石綿作業主任者の主な職務は次のとおりです。

  • 石綿等の粉じんが発散しないよう、当該作業の方法を決定し、作業を直接指揮する
  • 保護具の使用状況を監視する
  • 石綿等の取扱い設備の設置・取り外し等の業務を行う場合の指揮

事前調査で石綿含有が確認され、実際に石綿含有建材を処理する工事となった場合には、石綿作業主任者の選任が必要です。選任記録も書面で管理し、労働基準監督署の調査に対応できるよう保存します。

出典:石綿障害予防規則第10条(e-Gov法令検索で原文を確認)

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建設業 法定研修キット(https://fufumumu-design.com/kenshu-kit-kensetsu/)では、石綿事前調査のテーマを含む12テーマの研修を実施できます。石綿則第3条の事前調査の手順・2022年改正の内容・分析調査が必要な場合の判断基準・作業員への周知の方法・石綿作業の特別教育の内容を、現場の実務に沿った形で学べます。

確認テストを設けており、学習した内容の定着を確認できます。受講記録もブラウザ上で管理でき、安衛則第38条が求める記録事項(氏名・実施日・科目・時間)をカバーした記録票を出力できます。

まとめ

建設業の解体・改修工事における石綿(アスベスト)対策は、2022年4月の石綿則改正により大きく強化されました。事前調査の義務がすべての解体・改修工事に拡大され、一定規模以上の建築物については「建築物石綿含有建材調査者」による調査が義務付けられています。2023年10月からは分析調査の義務化が加わりました。

事前調査の結果は3年間保存するとともに、一定規模以上の工事については環境省・厚生労働省のシステムへの届出が必要です。さらに、大気汚染防止法に基づく届出が別途必要な場合もあります。

石綿含有が確認された工事では、作業員への周知(石綿則第7条の作業計画への記載・説明)が求められます。石綿含有建材の実際の除去等に従事する作業員は安衛則第36条第28号の特別教育が必要で、作業の指揮・監督には石綿作業主任者(石綿則第10条)の選任も必要です。

事前調査を工事着手前に確実に実施し、その結果を適切に記録・周知・届出することが、法令遵守と作業員の健康保護の両面から求められています。

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業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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