訪問看護の身体拘束廃止研修、何が禁止行為で記録は何を書くか。

訪問看護の身体拘束廃止研修、何が禁止行為で記録は何を書くか。 介護

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訪問看護ステーションには、身体拘束の廃止に向けた取り組みと、それに関する研修の実施が求められています。根拠は指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第34条の2(訪問看護については第67条で準用)です。

「訪問看護で身体拘束?」と思われるかもしれません。しかし、在宅での訪問場面においても、広義の「身体的拘束に相当する行為」が問題になることがあります。研修でどんな内容を扱えばよいかを整理します。

身体拘束廃止研修の法的根拠

指定居宅サービス等基準第34条の2は、サービス提供にあたって次の措置を求めています(訪問看護は第67条準用)。

  • 身体的拘束等の適正化を図るための対策を検討する委員会を定期的に開催し、結果を従業者に周知すること
  • 身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること
  • 従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること

「身体的拘束等」の定義は同省令第20条(訪問介護)に規定されており、「身体的拘束その他入所者の行動を制限する行為(以下、身体的拘束等)」とされています。訪問看護の場面では「身体的拘束」という表現が使われますが、実質的には同じ内容を指します。

訪問場面での「身体的拘束に相当する行為」とは

病院や施設と違い、訪問看護では医療器具やベッド柵を直接操作する場面は限られています。しかし、次のような行為が広義の「身体的拘束に相当するもの」として問題になりうることを研修で理解しておく必要があります。

処置中に体を押さえる行為。採血・点滴・カテーテル交換などの医療処置中に、利用者が動いてしまうことを防ぐために体を押さえることがあります。これが必要最小限の範囲内であれば問題ありませんが、「毎回強引に押さえている」「利用者が嫌がっているのに繰り返している」という状況は問題になる可能性があります。

家族・同居人による拘束への対応。訪問看護師自身が拘束行為を行わなくても、家族が安全のために利用者を拘束している場面に遭遇することがあります。「ベッドから転落するから縛っている」「夜中に歩き回るから体を縛っている」という状況です。このような場合、看護師はどう対応すべきかを研修で確認しておく必要があります。

投薬による行動制限(スピーチロック・ドラッグロック)。利用者の行動を制限することを目的とした薬剤の使用(過剰な鎮静薬・睡眠薬の投与)は、「薬物による身体拘束」として問題になります。看護師は処方の適正を医師や薬剤師と連携して確認する責任があります。

スピーチロック。「動かないで」「じっとしていて」という言葉による行動制限も、広義の身体拘束として研修で取り上げることが推奨されています。

緊急やむを得ない場合の取り扱い

厚生労働省の「身体拘束ゼロへの手引き」(平成13年・現在も参照文書として有効)では、以下の3条件がすべて揃う場合に限り「緊急やむを得ない」として身体拘束を認めています。

  • 切迫性:利用者本人または他の者の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
  • 非代替性:身体的拘束以外の方法によっては危険を回避することが困難な状態である
  • 一時性:身体的拘束は一時的なものである

これらの条件を満たす場合でも、記録(本人・家族への説明・同意・実施日時・解除した日時)を残すことが必要です。また、「緊急やむを得ない」状態が継続するなら、拘束を続けるのではなく環境調整や他機関との連携によって解消する方向で検討することが求められます。

研修の内容と実施頻度

条文上は「定期的に研修を実施すること」とされており、具体的な頻度の規定はありません。ただし、年1回以上の実施が一般的な目安とされています(運営指導のチェックポイントに準拠)。

研修で扱う内容の例は次のとおりです。

  • 身体的拘束の定義と禁止される行為の具体例(「縛る」「ベッド柵で囲む」だけではない)
  • 3条件(切迫性・非代替性・一時性)の確認と事例演習
  • 家族が実施している拘束への対応方法(説明・相談・記録)
  • スピーチロック・ドラッグロックの概念
  • 「緊急やむを得ない」場合の記録方法
  • 身体拘束廃止に向けた代替手段の検討(センサーマット・離床アラーム・環境整備など)

委員会と指針の整備

研修と並んで求められているのが、委員会の定期開催と指針の整備です。小規模のステーションでは「身体的拘束適正化検討委員会」を独立して設けることが難しい場合がありますが、その場合は既存の「管理者会議」「スタッフ会議」の中で身体拘束廃止に関する議題を扱い、記録として残す形でも対応できます。

指針は文書として整備し、全スタッフがいつでも参照できる場所に置いておくことが必要です。主な記載事項は次のとおりです。

  • 身体的拘束の定義と禁止事項
  • 緊急やむを得ない場合の手続き(確認者・記録書式・解除の判断)
  • 不適切なケアを発見・報告する仕組み
  • 研修の実施計画と記録方法

まとめ

訪問看護の身体拘束廃止研修は、施設・病院ほど頻度は高くありませんが、在宅特有の課題(家族による拘束・医療処置中の身体保持・薬剤による行動制限)に対応した内容で実施することが重要です。条文上の義務(第34条の2・第67条準用)を満たすために、年1回以上の研修実施と記録保管、指針の整備を進めてください。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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