通所介護(デイサービス)の開業資金はいくら必要か。初期費用の内訳と運転資金の考え方。

通所介護(デイサービス)の開業資金はいくら必要か。初期費用の内訳と運転資金の考え方。 福祉事業の開業と運営

通所介護(デイサービス)の開業には、物件取得から設備・備品・車両・採用広告まで、おおよそ500万〜1,000万円程度の初期資金が必要です。定員・物件の状態・送迎車両の台数・改装の規模によって金額は大きく変わります。

この記事では、通所介護の開業にかかる費用の内訳を項目別に整理し、開業資金を準備する際に確認しておくべき点をまとめます。費用の目安はシミュレーターの初期値をもとにした参考値であり、実際の費用は立地や物件・設備の仕様によって異なります。事業計画を作成する際は、個別の見積もりを取ったうえで検討してください。

通所介護の開業資金は物件・車両・改装の3つが大きい

通所介護の初期費用のうち、金額が大きいのは物件の敷金・礼金、改装工事費、送迎車両の購入費の3つです。それぞれ数十万円から数百万円の幅があり、これらの組み合わせで開業資金の規模感が決まります。

通所介護の開業初期費用の目安(定員20名程度の場合)
費用項目 目安金額 備考
設立・登記費用(会社設立など) 30万円程度 法人設立登記・各種申請費用。個人では別途費用が変わります
物件の敷金・礼金 80万円程度 家賃の2〜4か月分が目安。物件によって異なります
内装・改装工事費 200万円程度 バリアフリー化・消防設備・手すり等。既存の状態によって大きく変わります
備品・福祉用具 80万円程度 テーブル・椅子・入浴設備・機能訓練器具など
介護ソフト・通信機器 50万円程度 介護記録システム・請求ソフト・PC・タブレット
送迎車両 100万円程度 福祉車両1台の目安。台数・新古車によって変わります
開業広告・チラシ 15万円程度 近隣への案内・居宅介護支援事業所への営業
採用広告費 15万円程度 介護職員・運転手の採用
その他(予備費) 20万円程度 備品追加・許認可申請の実費など
合計目安 590万円程度 —

当方が設定したシミュレーターの初期値をもとにした参考値です。実際の費用は物件の状態・地域・設備仕様によって大きく異なります。

上記に加えて、開業後しばらくは利用者が少なく赤字になる期間が続きます。最低でも3〜6か月分の運転資金を別に確保しておくことが必要です。

改装工事費は物件の状態次第で大きく変わる

通所介護の事業所として使うためには、省令で定められた設備基準を満たす必要があります。指定通所介護の設備基準は「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)に定められており、主に次の設備が必要です。

  • 食堂兼機能訓練室:利用者1人あたり3m²以上(食堂と機能訓練室は兼用可)
  • 相談室:遮へい物を設けるなどプライバシーを確保できること
  • 静養室
  • 事務室
  • 消火設備その他の非常災害に際して必要な設備

定員20名の場合、食堂兼機能訓練室だけで最低60m²が必要です。バリアフリーが整っていない建物では手すりの設置・段差の解消・車いす対応トイレへの改修が必要になり、費用が大きくなります。一方で、もともと老人福祉施設・保育施設として使われていた物件であれば、改装費用を抑えられる場合があります。

設備基準の出典:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第96条〜第98条。

車両費は定員と送迎範囲で必要台数が変わる

送迎を行う場合、送迎車両の費用が初期費用に加わります。通所介護の送迎には普通乗用車・ハイエース・福祉車両(リフト付き)などが使われます。定員が20名で複数便に分けて送迎する場合、1〜2台が目安になります。

  • 軽福祉車両(スロープ付き):100〜200万円程度
  • ハイエース(スロープ付き・6〜9人乗り):200〜300万円程度(中古の場合は50〜150万円程度)
  • リフト付き福祉車両:200〜400万円程度

中古車両を活用することで車両費を抑えられますが、整備・車検の費用も考慮が必要です。また、送迎を行わず自力来所・家族送迎のみとする事業所もあります。

月ごとの固定費は運営費として毎月かかり続ける

開業後は毎月、利用者数に関係なくかかる固定費があります。定員20名程度の通所介護の月次固定費(人件費を除く)の目安は次のとおりです。

通所介護の月次固定費(人件費を除く)の目安
費用項目 月額目安
家賃 20万円程度
光熱費(水道・電気・ガス) 4万円程度
損害保険料 0.8万円程度
介護システム利用料 2万円程度
広告・営業費 1.5万円程度
採用費 2万円程度
研修費 0.8万円程度
消耗品費 3万円程度
顧問税理士費用 3万円程度
車両費(燃料・整備・保険) 3万円程度
食材費 5万円程度
その他 3万円程度
合計目安 48万円程度

当方が設定したシミュレーターの初期値をもとにした参考値です。人件費は含みません。実際の費用は立地・規模・サービス内容によって異なります。

人件費は別途、職員構成によって大きく変わります。管理者・生活相談員・看護職員・機能訓練指導員・介護職員の配置が必要です(人員基準の詳細は別の記事で整理します)。

運転資金として3〜6か月分の費用を確保する

通所介護の介護報酬は、サービス提供月の翌々月に入金されるのが一般的です。たとえば4月に提供したサービスの報酬が入るのは6月になります。つまり、開業から2か月間は収入がゼロの状態が続きます。

さらに、開業直後は利用者が少なく、定員に対して稼働率が低い状態が数か月続くことが多いです。日本政策金融公庫の調査では、開業から黒字化までの期間は業種にもよりますが、数か月〜1年以上かかることがあります。

このため、運転資金として少なくとも3か月分、できれば6か月分の費用を確保することが望ましいです。月固定費が48万円(人件費別)・人件費が150万円程度の場合、月約200万円の支出があるとすると、6か月分で1,200万円程度の資金が必要になります。

日本政策金融公庫の融資は介護事業の開業で活用できる

開業資金の調達には、日本政策金融公庫(以下「公庫」)の「新創業融資制度」または「創業融資」が活用できます。介護事業は福祉・医療分野に該当し、公庫の融資対象事業です。

公庫の融資のポイントをまとめると次のとおりです。

  • 自己資金の要件:新創業融資制度は創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要(2024年度時点)
  • 融資限度額:新創業融資制度は3,000万円(うち運転資金1,500万円)
  • 金利:融資条件によって異なります。公庫のWebサイトで最新情報を確認してください
  • 担保・保証人:新創業融資制度は原則不要(ただし、融資額や事業内容によって異なります)

出典:日本政策金融公庫ウェブサイト(参照:制度の概要は定期的に更新されます。最新情報は公庫のウェブサイトで確認してください)。

公庫への申請には事業計画書(創業計画書)の提出が必要です。収支の見通しを数字で示す際に、シミュレーターの結果が参考になります。

指定申請は開業予定日の2〜3か月前から準備する

通所介護の事業者として指定を受けるには、都道府県(または市区町村)への指定申請が必要です。申請から指定まで通常1〜2か月かかります。指定申請の際に必要な主な書類は次のとおりです。

  • 指定申請書
  • 付表(通所介護用)
  • 法人の定款または寄附行為(法人の場合)
  • 登記事項証明書
  • 従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表
  • 管理者・生活相談員・看護師等の資格証の写し
  • 平面図(設備基準を満たすことの確認)
  • 損害賠償保険の加入を証する書類

必要書類は都道府県・市区町村によって異なります。事前に自治体の担当窓口で確認することをお勧めします。


開業資金の合計・運転資金・資金繰りを数字で確認したい場合は、当サイトの収支シミュレーターをお使いください。初期費用の各項目を変えながら、実際の規模感を確認できます。

→ 通所介護(デイサービス)の開業 収支シミュレーター

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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