整骨院・接骨院の開業には、物件探しから保健所への届出、保険医療機関としての登録まで、複数の手続きが必要です。開業を思い立ってから実際に施術を開始できるまで、最短でも3〜4ヶ月かかります。物件探しに時間がかかる場合は6ヶ月以上になることも珍しくありません。
この記事では、開業までの主な手続きを時系列で整理します。すべての手続きを「開業日から逆算」して動くことが、スムーズな開業のポイントです。
前提:柔道整復師の国家資格が必要
整骨院・接骨院(施術所)を開設できるのは、柔道整復師の国家資格を持つ人です。資格がなければ開業できません。資格を取得後、就職して数年間の実務経験を積んでから独立開業するのが一般的なルートです。
なお、「整体院」「カイロプラクティック」「リラクゼーションサロン」は国家資格が不要で開業できますが、保険診療(柔道整復療養費)は扱えません。
開業6ヶ月前からやること
事業計画と資金計画を立てる
最初にやるべきは「いくら必要か」「どこから調達するか」の整理です。日本政策金融公庫の創業融資を検討する場合は、この段階で公庫の担当者に相談を始めると、必要な書類や計画書の方向性を早めに確認できます。
整骨院固有の注意点として、保険収入の入金が翌々月になることを資金繰りに反映しておく必要があります。開業後2ヶ月間は保険収入がゼロの状態で固定費を払い続けることになるため、その分の運転資金を上乗せしておきます。
立地・物件の選定
集客の面では、人通りの多い場所・駐車場のある郊外・住宅街など、ターゲット患者層によって適した立地が異なります。家賃と集客力のバランスを見ながら物件を絞り込みます。内装工事が必要なため、物件契約から開業まで2〜3ヶ月かかることを想定して動きます。
開業3ヶ月前からやること
内装工事の手配
施術所は施術室・待合室・洗面設備が必要です。保健所の検査を通過するための基準(施術室の広さ・区切り・換気など)があるため、内装業者に「施術所の保健所検査に対応した工事」であることを伝えて施工してもらいます。
施術所の施術室の広さは、柔道整復師法施行規則に基づき、6.6平方メートル(2坪)以上が必要です。また、施術室と待合室は区切る必要があります。
レセプトコンピューター(レセコン)の選定・契約
保険請求には専用のレセコンが必要です。開業前に選定・導入し、操作を習得しておきます。レセコンのメーカーや代理店が導入サポートを提供しているため、早めに相談を始めると安心です。
日本政策金融公庫への融資申し込み
創業融資は申し込みから実行まで通常1〜2ヶ月かかります。物件を契約するタイミングで申し込みを進め、内装工事の費用が必要になる前に融資を実行してもらう段取りを組みます。
開業1ヶ月前からやること
保健所への施術所開設届の提出
施術所を開設するには、開設後10日以内に所在地の保健所(都道府県・政令指定都市・中核市)へ届け出る必要があります(柔道整復師法第19条)。届出には施術所の平面図や使用する設備の記載が必要です。
届出後、保健所の職員が施術所を訪問して検査を行います。施術室の広さ・設備・清潔状態などを確認します。検査に通過してはじめて施術所として認められます。
| 届出先 | 主な記載事項 |
|---|---|
| 所在地の保健所 | 開設者・施術者の氏名と資格証番号、施術所の名称・所在地、構造設備の概要(平面図含む) |
療養費の受領委任(保険請求)の登録
保険診療(柔道整復療養費)を行うには、都道府県との受領委任の協定を締結する必要があります。手続き先は都道府県の国民健康保険団体連合会または社会保険診療報酬支払基金です。
この登録なしに保険診療を行うことはできません。開業前に余裕を持って手続きを進めます。
開業時に確認すること
開業日に向けて、下記のチェックリストを確認します。
- 保健所の施術所開設届の提出・検査通過
- 受領委任の登録完了
- レセコンの動作確認・テスト請求
- 院内の掲示義務(施術者氏名・資格・診療時間)を満たしているか
- 事故・賠償責任保険への加入(任意だが加入が推奨される)
- Googleビジネスプロフィールの登録・地図への表示
開業後に続けること
開業してからも継続的な管理が必要な業務があります。
毎月のレセプト作成・提出
前月の施術分を翌月10日までにまとめてレセプト提出します。保険者からの問い合わせ(返戻)に対応する必要があるため、施術録(カルテ)の記録を正確に残しておくことが重要です。
施術者の変更・追加時の届出
施術者が増える・変わる場合は、保健所への変更届が必要です。スタッフを雇う予定がある場合は、手続きの流れを事前に確認しておきます。
資金繰りの月次確認
保険収入は翌々月入金のため、「売上は上がっているのに現金が足りない」という状態が開業後しばらく続くことがあります。月次の現金残高を定期的に確認し、問題が起きる前に対処できるようにしておきます。
開業前に収支のシミュレーションをしておく
手続きの流れを把握したうえで、開業前に「どのくらいの患者数で黒字になるか」「開業後の資金繰りに問題はないか」を試算しておくことが重要です。特に保険収入の翌々月入金を反映した月次資金繰りは、手で計算すると時間がかかります。
整骨院・接骨院 開業収支シミュレーター
患者数・固定費・保険診療比率を入力すると、保険入金のタイムラグ(翌々月入金)を反映した3年分の収支と月次資金繰りを試算できます。公庫融資の相談前に使うことで、月次の資金繰り計画の作成がスムーズになります。
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出典:柔道整復師法(昭和45年法律第19号)、柔道整復師法施行規則(昭和46年厚生省令第19号)、厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準」(保発0529第4号・令和6年6月)


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