整骨院・接骨院で保険診療(柔道整復療養費)を行うと、患者の自己負担分(3割)はその月のうちに入金されますが、保険者負担分(7割)は施術月の翌々月に入金されます。1月に施術した分の保険7割は、3月20日前後に入金される仕組みです。
この「翌々月入金」を知らずに開業資金を組むと、開業後の2ヶ月間は売上が立っているにもかかわらず、家賃・人件費・材料費を手元の現金だけで払い続けることになります。
この記事では、保険収入が翌々月になる仕組みと、その影響を月ごとに整理します。
なぜ翌々月になるのか
柔道整復療養費の支払いは、患者が保険証を出して施術を受けた場合に適用されます。院が患者の代わりに保険者(健康保険組合・協会けんぽ・国民健康保険など)に費用を請求し、後から保険者負担分(7割)が振り込まれる仕組みです。これを「受領委任払い」と言います。
請求から入金までの流れは次のとおりです。
- 翌月10日までに前月の施術分をまとめてレセプト(診療報酬明細書)を作成・提出する
- 保険者が審査・確認を行う(通常1ヶ月程度かかる)
- 審査を通過した分が翌月(施術月の翌々月)の20日前後に振り込まれる
たとえば、1月の施術分は2月末にレセプト提出し、3月20日前後に入金されます。これが「翌々月入金」と呼ばれる理由です。
開業後3ヶ月の資金の動きを月ごとに見る
下の表は、月の売上が保険診療(7割)70万円+自己負担(3割)30万円=合計100万円と仮定した場合の、月ごとの入金状況です。
| 月 | 施術分の売上(発生) | 実際に入金される金額 | 不足する金額 |
|---|---|---|---|
| 1月(開業) | 100万円 | 30万円(自己負担3割のみ) | ▲70万円 |
| 2月 | 100万円 | 30万円(自己負担3割のみ) | ▲70万円 |
| 3月 | 100万円 | 100万円(3割+1月分の7割) | 0円 |
| 4月以降 | 100万円 | 100万円(3割+前々月の7割) | 0円(安定) |
※上記は説明のための試算です。実際の入金額は患者数・保険者の審査状況・返戻(差し戻し)の有無によって変わります。
開業1ヶ月目・2ヶ月目は、売上の7割に相当する保険収入がゼロの状態です。月の売上が100万円あっても、手元に入ってくるのは30万円のみ。この間に家賃・スタッフへの給与・材料費を支払うための現金が別に必要になります。
2ヶ月分の保険7割が「丸ごと不足する」と理解する
開業資金を考えるとき、多くの人は「月の固定費×3〜6ヶ月分の運転資金」を用意します。しかし整骨院の場合、それに加えて「開業後2ヶ月分の保険売上の7割」が手元から出ていく計算になります。
たとえば月の保険売上(7割分)が50万円の院の場合、開業後2ヶ月でこの50万円×2ヶ月=100万円が後から入ってくる状態になります。裏を返せば、この100万円が手元になければ2ヶ月間の資金繰りが詰まります。
この金額を「追加の運転資金」として開業資金に上乗せしておくことが重要です。
日本政策金融公庫の創業融資で問われること
日本政策金融公庫に創業融資を相談すると、担当者から必ず「月次の資金繰り計画」を求められます。そのとき「売上=入金」と仮定した計画では通りません。整骨院の場合、保険収入の入金タイミングを月ごとに正確に反映した資金繰り表が必要です。
具体的には、次の3点を資金繰り表に落とし込むことが求められます。
- 毎月の売上のうち、当月入金される金額(自己負担3割)と翌々月に入金される金額(保険7割)を分けて記載する
- 開業初月から3ヶ月目までの実際の入金額を月ごとに示す
- その間の固定費支出と照らし合わせて、現金残高が底をつかないことを確認する
この計画を手で作ると時間がかかります。患者数・保険診療比率・固定費を入力するだけで翌々月入金を反映した月次資金繰りを自動計算できるシミュレーターを使うと、計画の作成と確認がスムーズになります。
返戻と減点の影響も知っておく
翌々月に入金される保険収入は、審査の結果によって「返戻」(差し戻し)や「減点」(減額査定)が発生することがあります。
返戻とは、レセプトの記載に不備や疑義がある場合に審査機関から差し戻されることです。返戻されたレセプトは修正して再提出できますが、入金がさらに1ヶ月遅れます。減点は、審査機関が一部の請求を認めずに減額する処理です。
開業初期はレセプト作成に慣れておらず、返戻が発生しやすい時期でもあります。余裕を持った運転資金の確保と、レセコン業者や先輩柔整師へのアドバイスを積極的に求めることをおすすめします。
開業前に入金ラグを含めた資金繰りを試算する
「翌々月入金」の仕組みを頭で理解していても、実際の月次資金繰りへの影響を試算するのは手間がかかります。患者数の見込みや保険診療比率を変えながら複数のシナリオを確認したい場合は、シミュレーターで試算することをおすすめします。
整骨院・接骨院 開業収支シミュレーター
保険入金のタイムラグ(翌々月入金)を月次資金繰りに反映して試算できます。患者数・保険診療比率・固定費を入力するだけで、開業後3年分の収支と資金繰りを確認できます。
→ 無料で試算する
出典:厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準」(保発0529第4号・令和6年6月1日施術分から適用)

コメント