美容院の開業資金はいくら必要か。公庫の記入例1,030万円を、設備資金と運転資金に分けて読む。

美容院の開業資金はいくら必要か。公庫の記入例1,030万円を、設備資金と運転資金に分けて読む。 美容院の開業

美容院の開業にかかる費用は、日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」(2026年公表)によると平均975万円、中央値600万円です。平均より中央値が大きく低いのは、資金が多い事業者が平均を引き上げているためで、2人に1人は600万円以内で開業しています。

公庫の創業計画書の記入例(美容業・2025年4月版)は設備資金870万円+運転資金160万円=1,030万円を例示しており、資金の調達先は自己資金330万円・日本公庫融資500万円・銀行融資200万円の計1,030万円です。この記事では、記入例の数字を使って美容院の開業資金の内訳と調達の考え方を説明します。

開業費用の平均975万円・中央値600万円(公庫の2025年度調査)

公庫が毎年実施している「新規開業実態調査」は、公庫の融資を受けた開業者を対象に、開業時にかかった費用の実態を調べています。2025年度調査(2026年公表)の美容業を含む業種別の数値として、サービス業全体の参考値として活用できます。

開業費用の分布(公庫「2025年度新規開業実態調査」・美容業を含む対象)
費用の範囲 割合
250万円未満 20.1%
250万〜500万円未満 21.7%
500万〜1,000万円未満 29.7%
1,000万〜2,000万円未満 18.5%
2,000万円以上 10.0%
平均(当方の計算) 約975万円
中央値(当方の計算) 約600万円

開業費用の分布は広く、250万円未満の人が約20%いる一方、2,000万円以上の人も10%います。テナントで居抜き物件を使えば内装費を大きく抑えられますが、スケルトン(何もない)の物件を一から仕上げると1,000万円を超えることも珍しくありません。

出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2026年公表)。調査対象は公庫国民生活事業の融資先(開業から1〜3年)。割合・平均・中央値は当方が計算したものです。

記入例の設備資金870万円の内訳:内装工事が69%を占める

公庫の記入例(美容業)の設備資金870万円の内訳は次のとおりです。

公庫の記入例(美容業)の設備資金の内訳
項目 金額 設備資金全体に占める割合
内装工事(電気・給排水工事含む) 600万円 69%
セット面・シャンプー台 70万円 8%
家具・什器(ドレッサー・鏡など) 100万円 11%
保証金(敷金) 100万円 11%
合計 870万円 100%

内装工事が全体の69%を占め、設備資金の大半は「壁・床・天井・水回り・電気」に使われます。美容院の内装は、シャンプー台の配管・電気容量・換気設備など一般の店舗と異なる設備が必要なため、坪単価が高くなる傾向があります。

セット面・シャンプー台が70万円というのは記入例(セット面3台の規模)の場合で、セット面の数が増えるとこの費用も比例して増えます。保証金は家賃の数か月分が一般的で、記入例では家賃10万円×10か月分相当の100万円が計上されています。

出典:日本政策金融公庫「創業計画書 記入例(美容業)」(2025年4月版)「7 必要な資金と調達方法」欄。割合は当方が計算したものです。

運転資金160万円の内訳:開業前3か月分の費用と仕入れ

記入例の運転資金160万円の内訳は次のとおりです。

公庫の記入例(美容業)の運転資金の内訳
項目 金額
開業前の仕入れ(カラー剤・消耗品等の初回在庫) 30万円
開業前の宣伝・広告費(チラシ・SNS広告・ポータルサイト掲載等) 100万円
開業前家賃(内装工事中の3か月分相当) 30万円
合計 160万円

宣伝費が100万円と大きいのは、開業直後に集客するためのホットペッパービューティー掲載費・チラシ・SNS広告などをまとめて計上しているためです。開業後は毎月の費用になりますが、最初の3か月は売上が安定しないうちに広告費がかかるため、この期間分を運転資金として準備しておく必要があります。

合計1,030万円のうち32%は自己資金・68%は融資(記入例の調達構成)

記入例の資金調達の内訳は次のとおりです。

公庫の記入例(美容業)の資金調達の内訳
調達先 金額 全体に占める割合
自己資金 330万円 32%
日本政策金融公庫(融資) 500万円 49%
銀行・信用金庫(融資) 200万円 19%
合計 1,030万円 100%

自己資金330万円(32%)を用意した上で、公庫500万円と銀行200万円の合計700万円を融資で賄う構成です。全体の68%が融資ですが、これは創業期の美容院では珍しくない割合です。

公庫の新規開業向け融資(新創業融資制度等)は、担保・保証人なしで利用できる制度があり、記入例のような美容業の創業でも活用されています。銀行・信用金庫の融資は、公庫で先に実績をつくってから申込む流れが一般的です。

融資の返済:月々の返済額は借入総額と年数から計算できる

記入例では700万円の融資を合計7年(84か月)で返す計画を示しています。元金均等返済(毎月の元金返済額が一定)で計算すると、700万円÷84か月=約83,333円が毎月の元金返済額です。これに利息が加わります。

ただし公庫の融資では、据置期間(最初の数か月は元金返済を猶予する期間)を設けることができます。据置期間中は利息のみの支払いで元金返済が始まらないため、開業直後の資金繰りを楽にする効果があります。

記入例の軌道後(月商142.4万円・利益53万円)から毎月の返済額(元金+利息)を引くと、実際に手元に残る金額が変わります。詳しくは収支シミュレーターで確認できます。

美容所の設備基準:保健所の検査を通れる設計が必要

美容院の内装は、デザインだけでなく美容師法が定める設備基準を満たす必要があります。都道府県知事(保健所)が定める設備基準の主な項目は次のとおりです(美容師法第9条・都道府県の条例)。

  • 採光・照明:施術の場所で適切な照度を確保すること
  • 換気:自然換気または機械換気で換気を確保すること
  • 消毒設備:器具の消毒設備(沸騰水・蒸気・紫外線・薬液のいずれか)を設置すること
  • 待合室と施術室を区別すること(条例によって異なる)
  • 床・壁を清掃しやすい構造・材料にすること

内装工事の設計段階で保健所に確認し、基準を満たした設計にしておくことが重要です。竣工後に設備基準を満たしていないと指摘されると、工事のやり直しが発生する場合があります。保健所への開設届は営業開始前に提出し、検査に合格してから営業を開始します(美容師法第11条)。

出典:美容師法第9条(美容所の設備の基準)・第11条(開設の届出)。設備の具体的な基準は都道府県の条例で定められており、自治体によって内容が異なります。

開業費用を抑えるための主な方法

開業費用を下げるために使われる主な方法は次のとおりです。

開業費用を抑える主な方法と注意点
方法 効果 注意点
居抜き物件(前テナントの内装を引き継ぐ) 内装費を大幅に削減(100万円以下も可) 前テナントの設備が美容所基準を満たすか確認が必要
中古のセット面・機器を使う 機器費用を3〜5割削減できる場合がある 保証がない・修理費が発生するリスクあり
開業台数を1〜2台から始める 設備費・内装費を台数に比例して削減 売上の上限も台数に比例して小さくなる
自宅の一部を美容所として開設する 家賃・保証金の削減 自宅の構造が美容所設備基準を満たすか保健所に確認が必要

居抜き物件は、前テナントの内装設備を引き継げるため内装費を大きく抑えられますが、美容師法の設備基準(消毒設備・換気・照明など)を満たしているかどうかを保健所に確認してから契約する必要があります。

開業費用の試算は収支シミュレーターで確認できる

設備資金・運転資金・借入額・自己資金の数字を入力すると、開業後36か月の資金繰りを確認できます。公庫の記入例の数字が既定値として入っているため、そのまま計算してみてから、自分の条件(借入額・台数・客単価など)に合わせて変えていくことができます。

美容院の開業 収支シミュレーター(無料)

設備資金・運転資金・借入額・月の客数・客単価など、自分の条件で開業後の資金繰りを確認できます。公庫の創業計画書「7 必要な資金と調達方法」「9 事業の見通し」の形で結果が出ます。

無料で試算する

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
美容院の開業
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました