- 就労継続支援B型の身体拘束廃止未実施減算は、委員会・指針・研修の3点で判定される。
- 就労継続支援B型で身体拘束が起きやすい場面には、作業中という特徴がある。
- 身体拘束の「やむを得ない3要件」は、切迫性・非代替性・一時性である。
- 就労継続支援B型での身体拘束に当たる行為は、縛り上げだけではない。
- やむを得ず行った場合も、記録と家族への連絡が義務になる。
- 身体拘束廃止未実施減算の3要件は、委員会・指針・研修である。
- 強度行動障害のある利用者が在籍するB型では、行動支援計画との連動が重要になる。
- 研修でケーススタディを使うと、3要件の判断が現場に定着しやすくなる。
- B型の身体拘束最小化に向けた実際の取り組みは、環境の見直しから始まる。
- 運営指導では、記録の実在と委員会の実態が確認される。
- 就労継続支援B型の法定研修12テーマには、身体拘束が義務の5テーマのひとつとして入る。
- 3要件を満たさない身体拘束は、障害者虐待防止法上の虐待にあたる可能性がある。
- 就労継続支援B型の身体拘束適正化と法定研修まとめ。
就労継続支援B型の身体拘束廃止未実施減算は、委員会・指針・研修の3点で判定される。
就労継続支援B型は通所系のサービスである。身体拘束廃止未実施減算の対象になる。
減算を受けないための条件は3つある。定期的な委員会の開催、指針の整備、年1回以上の研修の実施、この3点がそろっていなければ、基本報酬の1%が毎月差し引かれる。
この記事では、B型で身体拘束が問題になる場面の特徴、3要件(切迫性・非代替性・一時性)の考え方、委員会・指針・研修それぞれで何を決めておけばよいかを整理する。
根拠としているのは、指定障害福祉サービス等基準省令(以下「基準省令」)の就労継続支援B型に関する運営基準と、令和4年3月31日付の解釈通知(障発0330第12号)である。
就労継続支援B型で身体拘束が起きやすい場面には、作業中という特徴がある。
就労継続支援B型は、雇用契約のない障害のある方が、生産活動(農作業・食品加工・軽作業・清掃など)を通じて就労に向けたスキルを身につける通所サービスである。
身体拘束の問題が起きやすい場面として、作業中の行動障害への対応がある。強度行動障害のある利用者が、突然立ち上がって他の利用者に危害を加えようとする場面、または自傷行為が始まった場面で、スタッフが身体を押さえるという対応が起きることがある。
この「押さえる」行為が身体拘束に当たるかどうかは、状況によって判断が変わる。しかし、繰り返し同じ場面で同じ対応をしているなら、それは「やむを得ない緊急対応」ではなく「ルーティン化した拘束」になっている。
訪問系サービスと違い、通所系では複数の利用者が同じ空間にいる。一人の利用者への対応が他の利用者の目に入る。だからこそ、「どういう場合に身体拘束があり得るか」を事前に職員間で共有しておくことが特に重要になる。
身体拘束の「やむを得ない3要件」は、切迫性・非代替性・一時性である。
基準省令第44条第1項は、身体拘束その他の行動制限を禁止している。ただし、「緊急やむを得ない場合」は例外として認められる。解釈通知(障発0330第12号)では、この「緊急やむを得ない場合」として以下の3要件を示している。
- 切迫性:利用者本人または他の利用者等の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
- 非代替性:身体的拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がない
- 一時性:身体的拘束その他の行動制限が一時的なものである
この3要件はすべて同時に満たしている必要がある。1つでも欠けていれば、緊急やむを得ない対応とは認められない。
B型の実務でよくある誤解が、「利用者が危険なことをしそうだから」という予防的な理由での拘束である。これは「切迫性」の要件を満たさない。現に生命・身体が危険にさらされている状況でなければ、緊急やむを得ないとは言えない。
また、「ほかに方法がないから」という言い方が職員間でされることがある。しかし「非代替性」の判断には、環境を変える、別の職員が声かけをする、一時的に別室に移るなど、別の方法を実際に試みた上で、それでも他の方法ではどうにもならない状況だと確認できていることが求められる。
就労継続支援B型での身体拘束に当たる行為は、縛り上げだけではない。
「身体拘束」というと、ベルトや布で体を固定するイメージがある。しかしB型の現場で問題になりやすいのは、より日常的に見える行為である。
解釈通知では、身体拘束その他の行動制限として以下のような行為が例示されている。
- 椅子やベルト等を使い、体幹や四肢をベッド・車椅子・椅子に縛りつける
- 手指の機能を制限するためにミトン型の手袋等をつける
- 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる(化学的拘束)
- 自分で開けることのできない居室等に隔離する
- 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する
B型の実務で起きやすいのは、作業エリアから出られないようにする「隔離」と、感情的に高ぶった利用者に向精神薬を「落ち着かせるため」に使う「化学的拘束」の2種類である。特に後者は、薬の処方権限は医師にあり、スタッフが独自に判断して服用を勧めることは禁止されている。
やむを得ず行った場合も、記録と家族への連絡が義務になる。
3要件を満たしてやむを得ず身体拘束を行った場合であっても、対応は終わらない。基準省令第44条第2項は、やむを得ず身体拘束を行った場合の義務として次の3点を定めている。
- その態様と時間を記録する
- 利用者の心身の状況を記録する
- その後の経過を記録する
また、家族等への説明・報告を行うことも求められる。B型は利用者本人との契約であるが、同時に家族・後見人等と連携しているケースが多い。「緊急対応をしたこと」「なぜそうせざるを得なかったか」「次に同じ状況になったときにどうするか」を、可能な限り早期に家族に伝えることが求められる。
記録がなければ、運営指導での指摘を受ける。「やむを得なかった」と説明するためには、その場の状況、3要件の判断プロセス、その後の対応が書面で残っていることが前提になる。
身体拘束廃止未実施減算の3要件は、委員会・指針・研修である。
就労継続支援B型は通所系サービスのため、身体拘束廃止未実施減算の対象になる(令和3年度報酬改定で通所系に適用)。
減算の条件は次の3点である。
委員会の設置と定期的な開催
身体拘束等の適正化を図るための委員会を設置し、定期的(少なくとも年1回以上)に開催することが求められる。委員会には、管理者、サービス管理責任者、現場の担当職員が参加する。
委員会で扱う内容は、①過去の事例の振り返りと改善策の共有、②身体拘束ゼロに向けた取り組みの確認、③やむを得ず行った事例があった場合はその検証、である。「委員会をやりました」という形式だけでは不十分で、実際に身体拘束の適正化に向けた議論が行われていることが求められる。
指針の整備
身体拘束等の適正化のための指針を整備することが義務になる。指針には次の内容を含める。
- 身体拘束等の禁止に関する基本方針
- 身体拘束等の適正化のための検討委員会に関する事項
- 身体拘束等に関する職員研修に関する事項
- 身体拘束等やむを得ない場合の対応手順
指針はホームページや施設内の掲示による公表が求められる。利用者・家族への周知も指針の中に方法を定めておく。
年1回以上の研修の実施
身体拘束等の適正化のための研修を、年1回以上実施することが求められる。研修の対象は全ての職員である。新規採用職員への研修も義務になる。
研修記録(実施日時・内容・参加者名)を残しておく必要がある。記録がなければ研修を実施したことの証明にならない。
強度行動障害のある利用者が在籍するB型では、行動支援計画との連動が重要になる。
就労継続支援B型には、強度行動障害のある利用者が在籍していることがある。強度行動障害は、自傷・他害・器物破損・異食・著しい多動などの行動が高頻度で現れる状態であり、支援者が一人では対応が難しい場面が生じる。
このような利用者の支援において、身体拘束の問題は特に複雑になる。「危険な状況が繰り返し起きる」「他の利用者への影響を防ぐ必要がある」という現実がある一方で、繰り返し拘束することは虐待になりえる。
この問題への対応で重要なのが、行動支援計画(強度行動障害のある利用者に対して作成が求められる支援計画)との連動である。行動支援計画では、行動が起きる前のきっかけ(先行事象)、行動そのもの、行動の後に何が起きているかを分析し、「どうすれば起きにくくなるか」「起きた場合にどう対応するか」を職員全員が共通理解として持つことを目指す。
身体拘束の適正化を議論する委員会に、強度行動障害のある利用者の行動記録とその支援計画の内容を持ち込むことで、「なぜ拘束が起きているか」を構造的に把握できるようになる。拘束を減らすための取り組みは、この構造の理解から始まる。
研修でケーススタディを使うと、3要件の判断が現場に定着しやすくなる。
身体拘束の研修を「禁止されています・3要件があります」という説明だけで終わらせると、職員が実際の場面で判断できるようにならないことが多い。
例えば、以下のような場面を研修の題材にして、グループで判断を話し合う形にすると、3要件の理解が現場に定着しやすくなる。
「利用者Aさんが、作業中に突然立ち上がり、隣の利用者Bさんを叩こうとした。スタッフが間に入って両腕を押さえた。Aさんはしばらくすると落ち着き、3分後には離した。この対応は身体拘束に当たるか。3要件のどれを満たしてどれが問題になるか。」
この場面を題材にすると、「切迫性はあったか(Bさんへの危害が現に起きようとしていた)」「非代替性はどうか(声かけや距離を置く等の手段を先に試みたか)」「一時性はあったか(3分後に解除している)」という3要件の検討を具体的に行える。
ケーススタディを研修記録に残す際は、「題材とした場面の概要」「3要件それぞれについての職員の議論」「事業所としての方針の確認」という3段階で記録すると、委員会記録との整合性も取りやすくなる。
新規採用職員への研修でも、「こういう場面があったときにどう判断するか」を先輩職員と一緒に検討する形式にすることで、テキストを読むだけより現場での実践につながりやすい。
B型の身体拘束最小化に向けた実際の取り組みは、環境の見直しから始まる。
委員会・指針・研修を整備することは、あくまでも「減算を受けないための最低限」である。本来の目的は、身体拘束がゼロになる状態をつくることである。
B型での身体拘束を減らすための具体的な取り組みとして、まず環境の見直しがある。
作業エリアの動線を見直し、利用者が突然立ち上がっても危険につながらない配置にする。作業台の高さや椅子の安定性を確認する。危険な道具(刃物・工具など)の管理場所を見直す。こうした環境の整備が、身体拘束を「やむを得なく」なる状況そのものを減らす。
次に、個別支援計画との整合性を確認する。その利用者がどういう状況でパニックや自傷につながりやすいかは、個別支援計画の中に情報として持っているはずである。計画に書かれている対応方法と、実際に職員がしている対応の間にギャップがないかを確認する。
さらに、行動記録の活用がある。拘束が起きやすい時間帯、場面、きっかけのパターンが見えてくれば、その前段階での対応(声かけのタイミング・作業内容の切り替えなど)で防げる可能性がある。「また同じことが起きた」ではなく「前回の記録から学んで対応した」に変えることが、研修の目標になる。
運営指導では、記録の実在と委員会の実態が確認される。
行政による運営指導では、身体拘束に関して次の書類が確認対象になる。
- 身体拘束適正化のための指針(書面として整備されているか)
- 委員会の開催記録(開催日時・出席者・議題・内容)
- 職員研修の実施記録(実施日時・内容・参加者)
- やむを得ず実施した身体拘束の記録(態様・時間・理由・その後の経過)
よくある運営指導での指摘は「委員会を開催した記録がない」と「指針はあるが職員に周知されていない」の2点である。前者は開催記録を必ず書面で残すことで防げる。後者は、研修の中で指針の内容を全員に説明し、その記録を残すことで対応する。
もう一つ注意が必要なのは、「過去1年以内に身体拘束の実施事例がある場合、その記録が適切か」という確認である。3要件の判断プロセスが記録に書かれているか、家族への説明をいつ行ったかが明確か、この2点が主な確認ポイントになる。
就労継続支援B型の法定研修12テーマには、身体拘束が義務の5テーマのひとつとして入る。
法定研修として義務になっているテーマは、身体拘束を含めて5種類ある。
- 虐待の防止
- 身体拘束等の適正化
- 感染症及び食中毒の予防及び蔓延の防止
- 業務継続計画(BCP)
- 非常災害時の対応
これらに加えて、障害特性・発達支援・ハラスメント・個人情報保護・事故と苦情・家族支援・生産活動の安全と工賃の7テーマが研修として整備しておくべき内容として挙げられる。B型固有のテーマとして「生産活動の安全と工賃」が入るのは、B型では作業中の安全管理と工賃支払いの適正化が他のサービスにはない独自の課題になるためである。
身体拘束の研修は、「禁止されている」「やむを得ない場合は3要件が必要」「記録と家族への連絡が義務」という基本を全員が理解した上で、B型の具体的な場面(作業中の行動障害への対応・化学的拘束の禁止)まで落とし込む内容にする必要がある。
3要件を満たさない身体拘束は、障害者虐待防止法上の虐待にあたる可能性がある。
身体拘束の問題は、報酬の減算だけにとどまらない。障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法)第2条第8項は、施設従事者等による障害者への虐待の類型として「身体的虐待」を定義している。
身体的虐待の中には「正当な理由なく障害者の身体を拘束すること」が含まれる。つまり、3要件を満たさない身体拘束は、虐待防止法上の虐待に当たる可能性がある。
施設従事者等による虐待が疑われる場合、都道府県への通報義務が生じる(障害者虐待防止法第22条)。事業所が自ら確認・対応するだけでなく、外部への通報も要件として定められている。
この点は、委員会や研修の中で職員に正確に伝えておく必要がある。「やむを得ないと思った」では法律上の正当な理由にはなれない。正当な理由として認められるのは、3要件をすべて満たしていた場合であり、その判断と記録が後から確認できる状態になっていることが条件になる。
研修の中で「これは身体拘束か・虐待か」という判断基準を繰り返し確認することが、職員の不安を減らし、不適切な対応を防ぐことにつながる。
就労継続支援B型の身体拘束適正化と法定研修まとめ。
就労継続支援B型での身体拘束廃止未実施減算は、委員会・指針・研修の3点で判定される。いずれも「やっている」だけでは不十分で、記録と実態が伴っていることが求められる。
やむを得ず行う場合は3要件(切迫性・非代替性・一時性)をすべて満たす必要があり、実施後の記録と家族への説明が義務になる。
B型での研修は、禁止の原則と3要件の理解に加えて、作業中の場面に具体化した内容にすることが現場への定着を高める。
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