避難はしごの種類。固定はしご・吊り下げはしご・ハッチ型の違い。




避難はしごは避難器具の中で最も広く使われている器具です。構造によって「固定はしご」「立てかけはしご」「吊り下げはしご(ハッチ型含む)」に分かれており、設置場所や使い方が異なります。消防設備士第5類の試験では、各種はしごの構造・特徴と設置基準が出題されます。

この記事では、避難はしごの種類と設置基準・点検のポイントを整理します。

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避難はしごの種類一覧

種類 設置・使用の形態 主な設置場所
固定はしご 建物外壁に常時固定された金属製はしご。最上部に手がかり棒を設ける 高層建物の外壁・工場・倉庫等
立てかけはしご 収納しておき、使用時に外壁に立てかける 主に低層建物
吊り下げはしご 窓枠・手すり等に引っ掛けて吊り下げる。平常時は収納 マンション・ビル等の窓際
ハッチ用はしご 床に設けた開口部(ハッチ)に収納し、使用時に引き下ろす マンションのバルコニー・廊下等

固定はしご。建物に常時固定された常設型

固定はしごは建物の外壁に常時固定された金属製のはしごです。常設型のため平常時からいつでも使用できますが、外部から容易にアクセスできるため不審者侵入のリスクへの配慮が必要な場合もあります。

固定はしごの構造上の特徴は次のとおりです。

  • 金属製(鋼製またはアルミ製)
  • 最上部に手がかり棒(手をかけて体を引き上げるための棒)を設ける
  • 壁面から一定距離を保って設置する(後述の施行規則の規定)
  • 防錆処理が必要(溶融亜鉛めっき等)

立てかけはしご。使用時に外壁に立てかけるタイプ

立てかけはしごは平常時は収納・保管しておき、緊急時に外壁に立てかけて使用します。設置スペースが少なく済む反面、使用時に立てかける作業が必要なため、使用訓練が重要です。

立てかけて使用する際は、はしごが滑らないように下端を固定(またはぴったり壁の基部に当てて)して使います。

吊り下げはしご。窓枠や手すりに引っ掛けるタイプ

吊り下げはしごは、使用時に窓枠・手すり等に引っ掛けて外壁側に下ろすタイプです。マンションの窓際・バルコニー等に設置されることが多く、収納状態は比較的コンパクトです。

吊り下げはしごの主な種類は次のとおりです。

種類 特徴
金属製吊り下げはしご 折りたたみ式または連結式の金属製。強度が高い
チェーン式吊り下げはしご 金属チェーンを横桟として使用。比較的軽量
ロープ式吊り下げはしご ロープと横桟を組み合わせた形式

ハッチ用はしご。床の開口部(ハッチ)から引き下ろすタイプ

ハッチ用はしごは、バルコニー・廊下等の床に設けられた開口部(ハッチ)に収納されており、使用時にハッチを開けてはしごを引き下ろします。マンションのバルコニーに設置されることが多く、上下階間の避難を想定した器具です。

ハッチ(上蓋)・はしご・格納部が一体になった製品が主流です。ハッチの開閉が正常に機能するかどうかが点検の重点項目です。

施行規則第27条の設置基準。横桟の距離と降下空間

消防法施行規則第27条は、避難はしごの設置に関する具体的な基準を定めています。

項目 数値・内容 出典
固定はしごの横さんと壁の距離 10cm以上(壁面からの隙間を確保) 消防法施行規則第27条
横桟(踏み桟)の間隔 約25cm(おおむね) 消防庁長官が定める型式試験基準
降下空間 前方・後方・側方の一定距離以内に障害物がない空間(はしごの種類による) 施行規則第27条・型式試験基準

出典:消防法施行規則第27条(e-Gov法令検索)・消防庁長官が定める型式試験基準

横桟の壁からの距離(10cm以上)は施行規則に直接規定されており、横桟の間隔(約25cm)は型式試験基準に規定されています。試験では「10cmは施行規則」「25cmは型式試験基準」という区別が問われることがあります。

降下空間の確保

避難はしごの前方・後方・側方には障害物がない「降下空間」を確保する必要があります。施行規則第27条および型式試験基準で、器具の種類ごとに前方・後方・側方の離隔距離が定められています。

固定はしごの場合、設置時から障害物がないかどうかが確認されますが、後から建物改修等で障害物が生じた場合は再確認が必要です。

点検のポイント

外観点検(全種類共通)

  • 腐食・変形・損傷がないこと
  • 防錆処理(塗装・めっき)の状態を確認
  • 収納状態が正常であること(吊り下げ型・ハッチ型)

横桟(踏み桟)の確認

  • 横桟の変形・腐食がないこと
  • 壁からの距離(固定はしご:10cm以上)が保たれていること
  • 横桟間隔が約25cmであること(型式試験基準による)

取り付け金具・固定部の確認

  • 腐食・ゆるみ・変形がないこと
  • 壁・床・窓枠への固定状態が正常であること

手がかり棒(固定はしごのみ)

  • 変形・腐食がないこと
  • はしごの最上部に設置されていること

ハッチの開閉(ハッチ型のみ)

  • ハッチの開閉が正常に動作すること
  • 蓋と枠のシール・パッキンの状態
  • ロック機構の作動確認

材質の特徴と防錆処理

避難はしごに使用される主な材質とその特徴は次のとおりです。

材質 特徴 防錆処理
鋼製(炭素鋼) 強度が高い。重量は重め 溶融亜鉛めっき・塗装が必要
アルミニウム合金 軽量。腐食しにくい 陽極酸化処理(アルマイト)等
ステンレス鋼 耐食性が高い。クロムの不動態皮膜で腐食を防ぐ 特別な防錆処理が不要な場合が多い

屋外に設置される固定はしごや避難用タラップは常時雨・塩害・紫外線にさらされるため、防錆処理の状態が点検の重要チェックポイントです。腐食(さび)が発生すると強度が低下し、降下中に破断するリスクが生じます。

設置のための基本計算

固定はしごを設置する場合、次の事項を確認します。

確認事項 内容
はしごの長さ 設置階の床から降着地点(地面等)まで十分な長さがあること
横桟の数 長さと横桟間隔(約25cm)から必要な横桟の数を計算
壁からの距離 横桟と壁の間に10cm以上の隙間があること(施行規則第27条)
降下空間 前方・後方・側方の一定距離以内に障害物がないこと

設置工事の手順(甲種第5類の業務)

避難はしごの設置工事は甲種第5類の業務範囲です。固定はしごの設置工事の一般的な手順は次のとおりです。

  1. 着工届を工事開始10日前までに提出する(消防法第17条の14)
  2. 設置位置・降下空間・操作面積を確認する
  3. 壁面にアンカーボルト等で取り付け金具を固定する
  4. はしごを取り付ける(横桟と壁の距離10cm以上を確認)
  5. 手がかり棒を最上部に取り付ける
  6. 設置届を工事完了後4日以内に提出する(消防法第17条の3の2)
  7. 消防検査を受ける

鑑別問題での識別ポイント

鑑別問題では避難はしごの写真から種類を判断する問題が出ます。

識別ポイント 固定はしご 吊り下げはしご ハッチ用はしご
設置状態 外壁に常時固定されている 収納されており、使用時に吊り下げる 床の開口部(ハッチ)に収納されている
手がかり棒 最上部にある 通常なし なし(ハッチ開口部が上端)
壁との関係 壁面から一定距離を保って固定 窓枠・手すりに引っ掛ける 床開口部から下に伸びる

各種はしごの比較まとめ

種類 常設か収納か 主な設置位置 特記事項
固定はしご 常設 外壁 最上部に手がかり棒。横さんは壁から10cm以上
立てかけはしご 収納・使用時設置 倉庫等(収納)→外壁(使用時) 使用訓練が重要
吊り下げはしご 収納・使用時展開 窓枠・手すり マンション・ビル等に多い
ハッチ用はしご 収納・使用時引き下ろし 床の開口部(ハッチ)内 バルコニー設置が多い。ハッチ開閉の確認が重点

試験で覚えるポイント

問われるポイント 正解となる知識
固定はしごに手がかり棒が必要か 必要。最上部に設ける
横さんと壁の距離 固定はしごは10cm以上(施行規則第27条)
横桟の間隔 約25cm(型式試験基準による)
吊り下げはしごの使い方 窓枠・手すり等に引っ掛けて吊り下げる
ハッチ用はしごの設置場所 床の開口部(ハッチ)に収納。バルコニー等に多い

はしごの整備で確認すべき事項

避難はしごの整備・点検では次の事項を確認します。整備(消耗品の交換・調整)は乙種第5類でも行えます。固定はしごの取り外し・再取り付け工事は甲種第5類が必要です。

部品・箇所 確認・整備の内容 業務区分
横桟(踏み桟) 腐食・変形・ゆるみ確認。変形した横桟は交換 整備(乙5・甲5)
縦桟(側板) 腐食・亀裂・変形確認 整備(乙5・甲5)
防錆処理(塗装・めっき) 塗装の剥がれ・めっきの腐食確認。タッチアップ塗装の実施 整備(乙5・甲5)
取り付け金具・アンカーボルト 腐食・ゆるみ確認。再固定・取り付け工事は甲5 工事(甲5のみ)
手がかり棒(固定はしご) 腐食・変形・ゆるみ確認 整備(乙5・甲5)

はしごの設計・製作基準

避難はしごは型式試験基準(消防庁長官が定める基準)に適合した製品でなければ消防用設備として使用できません。型式試験基準では次の事項が定められています。

  • 横桟の間隔:約25cm(歩幅に合わせた間隔)
  • 横桟の断面形状:円形または楕円形(滑り防止の要件)
  • 使用荷重:器具に乗る人の体重を考慮した強度
  • 防錆処理:材質に応じた防錆・防腐処理

型式試験は日本消防検定協会が実施し、合格した製品には検定合格マークが付けられます。

設置できる場所の制限

避難はしごは施行規則第27条および型式試験基準で、設置できる場所の条件が定められています。次の条件を満たす場所にのみ設置できます。

  • 降下空間(前方・後方・側方の一定距離以内に障害物がない空間)が確保できること
  • 操作面積(着用具を装着し操作するための踊り場・バルコニー等の床面積)が確保できること
  • 取り付け金具を固定できる構造(壁・床・窓枠の強度が十分)であること

設置前に現地調査を行い、降下空間に障害物がないか・操作面積が確保できるかを確認することが重要です。

各型式の特性を活かした選定

設置する避難はしごの種類を選ぶ場合は、次の条件を参考にします。

選定の観点 適した種類
常時使用可能にしたい(収納・展開の手間をなくしたい) 固定はしご
バルコニーの床に器具を収納したい ハッチ用はしご
窓際にコンパクトに収納したい 吊り下げはしご
低層建物で複数の出入口候補がある場合 立てかけはしご(使用時に場所を選べる)

実際の設置では、建物の構造・用途・収容人員・設置スペースの条件を総合的に判断します。消防署への事前相談を通じて適切な器具の選定・設置を行います。

避難はしごと救助袋・緩降機の違い

避難はしごは「はしごをつたって降下する」器具のため、自力でのはしご昇降が難しい高齢者・障害者への対応は限定的です。一方、救助袋・緩降機は袋の中に入る・安全帯を装着するという点で避難者自身の操作が必要ですが、降下の安定性は高くなります。

用途によっては「避難が困難な人が多い施設(病院・福祉施設等)にははしご以外の器具を推奨する」という観点も設計・選定の際に考慮されます。

使用訓練の重要性

避難はしごは、実際の火災時に使用経験のない人が初めて使用するケースが想定されます。特に立てかけはしごや吊り下げはしごは展開・設置の手順があるため、防火対象物の自衛消防訓練での使用訓練が重要です。

消防設備士第5類の業務には「整備・点検」が含まれており、器具の使用方法の説明・訓練指導も業務の一環として行われます。

はしごの点検周期と報告義務

避難はしごの点検周期と報告義務は消防法施行規則第31条の6に基づきます。機器点検は6か月ごと、総合点検は1年ごとに実施します。点検結果の報告は特定防火対象物が1年ごと、非特定防火対象物が3年ごとです(消防法第17条の3の3)。

機器点検では外観(腐食・変形・ゆるみ)・格納状態・標識の確認が主な項目です。取り付け金具のゆるみ・腐食が確認された場合は整備の対象となります。固定はしごの取り付け金具の再固定・取り外し工事は甲種第5類の業務範囲です。点検は消防設備士または消防設備点検資格者が実施します。試験では「6か月ごとに機器点検・1年ごとに総合点検」という点検周期の組み合わせを覚えておくと解答に役立ちます。

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問題をすぐに解いてみたい方は、こちらのアプリをご利用ください。
▶ 消防設備士 第5類(乙5・甲5)AI問題集

作成日:2026年11月5日 作成者:fufumumu_design
出典:消防法施行規則第27条(e-Gov法令検索)・消防庁長官が定める型式試験基準

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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