救助袋 垂直式と斜降式の違い。設置スペースと降下の特徴。




救助袋は布製の袋状の器具で、袋の中に入って降下する避難器具です。降下の方式によって「垂直式」と「斜降式」の2種類に分かれます。最大の違いは降下の方向と設置に必要なスペースで、建物の形状・用途によってどちらが適するかが変わります。

この記事では、垂直式と斜降式の仕組み・設置条件・点検のポイントを整理します。

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垂直式と斜降式の一覧比較

項目 垂直式救助袋 斜降式救助袋
降下の方向 袋の中で垂直に降下する 斜め(前方)に向かって滑降する
袋の構造 螺旋状の内部構造で速度を調整しながら降下 斜降架(支持具)・ロープで袋を斜めに引っ張って使用
地上の必要スペース 建物の直下のみ(前方スペース不要) 建物前方に斜降距離分のスペースが必要
連続使用 一人ずつ(袋内に次の人が入るまで待機) 連続して多人数を短時間で降下させやすい
向いている建物 前方スペースがない高層建物・狭い場所 低中層建物・前方に広い空間がある場所

出典:消防法施行令第25条・消防庁長官が定める救助袋の型式試験基準

垂直式の仕組み。螺旋構造で速度を制御する

垂直式救助袋は、袋の内部が螺旋状(らせん状)になっており、使用者が袋の中に入ると螺旋状の内壁との摩擦によって降下速度が一定以下に保たれます。

構造的な特徴は次のとおりです。

  • 袋は建物の外壁に沿って垂直に吊り下げられる
  • 内部の螺旋構造が摩擦を生み出し、自由落下を防ぐ
  • 使用者は袋の入口から入り、体を縮めながら降下する
  • 袋の下端(出口)は地上(または安全な場所)の近くで開いている

設置に必要な地上スペースは建物の直下のみのため、建物の前面に障害物(道路・塀・隣接建物等)がある場合でも設置できる利点があります。

斜降式の仕組み。斜降架で袋を斜めに引っ張る

斜降式救助袋は、斜降架(支持具)とロープを使って袋を斜め45度前後の角度に引っ張り、使用者が袋の中を滑降する器具です。

構造的な特徴は次のとおりです。

  • 斜降架(金属製の骨組み)が袋を斜めに支持する
  • 斜降ロープが袋の下端を地上の固定点につないで角度を保つ
  • 使用者は袋の入口から入り、斜め方向に滑降する
  • 地上の固定点から袋の取り付け点まで、斜降距離分のスペースが必要

斜降式は一人ずつ袋の中を通過するため、袋から出た直後に次の人が入ることができます。垂直式より連続使用のスループットが高い特徴があります。

設置に必要なスペースの違い

垂直式と斜降式では、設置に必要な空間の形が大きく異なります。

垂直式の必要スペース

垂直式は建物の壁面に沿って垂直に降下するため、地上には建物の直下に人が着地できるスペースがあれば設置できます。前方に広いスペースは不要です。降下空間は袋の周囲(前方・後方・側方)の一定距離以内に障害物がないことが必要ですが、垂直方向の空間確保が主な条件となります。

斜降式の必要スペース

斜降式は袋が斜めに展開するため、建物から前方に向かって斜降距離分のスペースが必要です。設置階が高くなるほど前方に必要なスペースが広くなります。地上の固定点の設置場所も確保する必要があります。

点検のポイント。各部品ごとに確認する

救助袋の定期点検では次の項目を確認します。

外袋・内袋の点検

  • 破損・縫製のほつれがないこと
  • 難燃性の劣化がないこと(燃えやすくなっていないか)
  • 汚損(泥・油等の付着)がないこと
  • 収納状態が正常であること

入口金具・連結金具の点検

  • 腐食・変形がないこと
  • 作動(開閉・連結)が正常であること

斜降架(斜降式のみ)の点検

  • 腐食・変形がないこと
  • 収納・展開の作動が正常であること

斜降ロープ(斜降式のみ)の点検

  • 擦り傷・腐食・断線がないこと
  • 端末処理の状態が正常であること

取り付け金具・支持具の点検

  • 腐食・ゆるみ・変形がないこと
  • 建物への固定状態が正常であること

使用方法の違い

垂直式の使用手順

  1. 収納を解いて袋を建物外側に投下する
  2. 袋の入口から足から先に入る
  3. 体をまっすぐ保ちながら降下する(螺旋構造が速度を調整)
  4. 袋の下端から出て着地する

斜降式の使用手順

  1. 斜降架を展開して袋と斜降ロープを設置する
  2. 地上の固定点にロープを固定する
  3. 袋の入口から足から先に入る
  4. 斜め方向に滑降する
  5. 袋の下端から出て地上に降りる

各型式の設置角度と斜降距離の目安

斜降式救助袋は、袋が地面に対して一定の角度(斜降角度)で展開します。設置角度は器具の種類・型式によって異なり、型式試験基準に基づいて設定されています。

項目 内容 出典
斜降角度の目安 概ね30〜45度(器具の型式による) 型式試験基準(消防庁長官が定める基準)
垂直式の降下方向 建物外壁に沿って垂直方向に降下 型式試験基準

斜降距離(袋の取り付け点から地上の固定点までの水平距離)は設置階が高くなるほど長くなります。斜降式を設置できるかどうかの判断には、建物前方の空きスペースの確認が不可欠です。

連続使用の特性と避難計画への影響

垂直式と斜降式では、多人数が連続して使用する場合のスループット(時間あたりに降下できる人数)が異なります。

項目 垂直式 斜降式
連続使用 袋の内部を一人が通過する間は次の人が入れない 一人が通過した直後に次の人が入れる(待ち時間が短い)
多人数避難への適性 比較的不向き(時間がかかる) 多人数を短時間で降下させやすい
高齢者・障害者への対応 自力での袋内通過が必要 袋に入れば比較的スムーズに滑降できる

建物の収容人員が多く、自力避難が難しい人がいる施設((六)項の病院・福祉施設等)では、斜降式の方がより多くの人を短時間で避難させやすい場合があります。

設置と整備の手順(甲種第5類の業務)

救助袋の設置工事は甲種第5類の業務範囲です。設置の一般的な手順は次のとおりです。

  1. 着工届を工事開始10日前までに提出する
  2. 設置位置で降下空間・操作面積を確認する(垂直式:直下の空間、斜降式:前方の空間)
  3. 斜降架(斜降式)または取り付け金具(垂直式)を固定する
  4. 袋・ロープ・入口金具等を取り付ける
  5. 設置届を工事完了後4日以内に提出する
  6. 消防検査を受ける

整備(消耗品の交換・調整・分解)は乙種第5類でもできます。袋の修理・斜降架の再取り付けなど、工事に当たる作業は甲種が必要です。

鑑別問題での識別ポイント

鑑別問題では救助袋の写真・図から垂直式と斜降式を見分ける問題が出ます。

識別ポイント 垂直式 斜降式
袋の向き 垂直(建物外壁に沿って縦方向) 斜め(前方に向かって角度がある)
斜降架の有無 なし(袋が直接外壁から吊り下がる) あり(骨組み状の金具が袋を支える)
地上固定点の有無 なし(着地点は袋の下端のみ) あり(ロープが地上の固定点につながれている)

試験で覚えるポイント

問われるポイント 正解となる知識
垂直式の降下方向 袋の中で垂直に降下する。螺旋構造が速度を調整
斜降式の降下方向 斜め(前方)に向かって滑降する
連続使用のしやすさ 斜降式は連続して多人数を短時間で降下させやすい
前方スペースが必要な方 斜降式(地上の固定点まで斜降距離分のスペースが必要)
外袋の点検確認事項 破損・縫製のほつれ・難燃性の劣化・汚損

救助袋の整備で確認すべき事項

救助袋の整備(消耗品の交換・調整)は乙種第5類でも行えます。斜降架の再取り付けなど工事に当たる作業は甲種第5類が必要です。

対象部品 確認・整備の内容 業務区分
外袋・内袋 破損・縫製のほつれ・難燃性劣化の確認。修理は製造者対応が原則 整備(乙5・甲5)
斜降架(斜降式) 腐食・変形の確認。動作確認(展開・収納) 整備(乙5・甲5)
斜降ロープ(斜降式) 擦り傷・断線・端末処理確認。損傷があれば交換 整備(乙5・甲5)
入口金具・連結金具 腐食・変形・作動確認。不具合があれば交換 整備(乙5・甲5)
取り付け金具 腐食・ゆるみ・変形確認。再取り付け工事は甲5 工事(甲5のみ)

救助袋の法令上の位置づけ

救助袋は消防法施行令第25条の表に規定された避難器具8種類のうちの1つです。すべての防火対象物に設置できるわけではなく、設置できる用途・階の条件が施行令第25条の表で定められています。

救助袋の特性から、次のような建物に設置されることが多い器具です。

  • 施行令第25条が対象とする(六)項の病院・福祉施設(収容人員の基準が低く設置義務が生じやすい)
  • 高層建物(緩降機より設置スペースが柔軟な垂直式が選ばれることがある)
  • ホテル・旅館(斜降式で多人数の避難を想定)

救助袋の識別に使う試験対策

鑑別試験では「写真に写っている避難器具の名称と種類を答えなさい」という問題が出ます。救助袋の識別ポイントは次のとおりです。

  • 布製の袋状の形状(金属製の緩降機・はしごと区別できる)
  • 垂直式:外壁に沿って垂直方向に吊り下がった袋
  • 斜降式:斜降架(金属骨組み)があり、袋が斜め方向に展開している
  • 入口金具(袋の上端の金属リング・フレーム状の開口部)が特徴的

救助袋と緩降機の使い分け

救助袋と緩降機はどちらも「袋またはロープで体を吊り下げて降下する」点で共通していますが、仕組みが異なり、適した建物・状況も違います。

比較項目 救助袋 緩降機
降下の仕組み 袋の中に入って降下(袋が速度を制御) 調速機付きロープに装着して降下(調速機が速度を制御)
使用人数(1回) 1人ずつ(袋内に一人が入る) 1人ずつ(ロープ1本に1人装着)
連続使用 斜降式は連続使用しやすい ロープ2本1組で交互使用が可能
着用具の装着 不要(袋に入るだけ) 必要(安全帯を体に装着する)
操作の難易度 比較的容易(袋に入るだけ) 着用具の装着・装着方法を知る必要あり
設置スペース 垂直式は狭い場所でも可。斜降式は前方スペースが必要 比較的コンパクト

救助袋の格納と標識

救助袋は平常時、指定の収納スペース(格納袋・格納箱)に正しく格納されていることが求められます。点検では格納状態の確認も重要です。

設置場所には「避難器具」と記載した標識(蓄光式または照明付き)を直近に設置する義務があります(施行規則第27条)。標識が消色・破損している場合は交換が必要です。

救助袋の点検周期と報告義務

救助袋を含む避難器具の点検周期と報告は消防法施行規則第31条の6に定められています。

点検の種類 実施周期
機器点検 6か月ごと
総合点検 1年ごと

報告義務は防火対象物の用途によって異なります。特定防火対象物(病院・ホテル・百貨店等)は1年ごと、非特定防火対象物(事務所・工場等)は3年ごとに消防署長へ報告します(消防法第17条の3の3)。

救助袋の機器点検では外袋・内袋の破損・難燃性の劣化・縫製のほつれ・格納状態・標識の確認が主な項目です。総合点検では実際に展開して動作確認を行います。展開試験は器具の特性上、専門業者が担当する場合もあります。

整備(消耗品の交換・調整)は乙種第5類でも行えます。斜降架の再取り付けなど工事に当たる作業は甲種第5類が必要です。

救助袋の法令数値の整理

試験で問われる救助袋に関する数値・条文の整理をします。

問われる内容 答え 出典
救助袋の法令上の位置づけ 消防法施行令第25条の表に規定された避難器具の一種 消防法施行令第25条
設置免除・個数減少の根拠条文 消防法施行規則第26条 消防法施行規則第26条
設置位置・降下空間の要件の根拠 消防法施行規則第27条 消防法施行規則第27条
点検周期(機器点検) 6か月ごと 消防法施行規則第31条の6
点検周期(総合点検) 1年ごと 消防法施行規則第31条の6
甲5の着工届 工事開始10日前までに提出 消防法第17条の14
甲5の設置届 工事完了後4日以内に提出 消防法第17条の3の2

出典:消防法施行令第25条・施行規則第26条・第27条・第31条の6(e-Gov法令検索)

条文の位置づけ(設置義務は施行令第25条・免除は施行規則第26条・設置位置は施行規則第27条・点検は施行規則第31条の6)を整理しておくと、試験でどの条文に関する問題かを素早く判断することができます。

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作成日:2026年11月5日 作成者:fufumumu_design
出典:消防庁長官が定める救助袋の型式試験基準・消防法施行規則第27条(e-Gov法令検索)・消防法施行規則第31条の6(同)

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

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