緩降機は、使用者が調速機(ガバナー)付きのロープを使って建物の外壁を伝いながら降下する避難器具です。調速機によって降下速度が一定に保たれるため、特別な訓練を受けていない人でも使用できます。避難器具の中でマンション・ホテルなど多くの建物に設置されており、第5類の試験でも出題頻度が高い器具です。
この記事では、緩降機の各部品の仕組みと点検のポイントを整理します。
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緩降機の各部品の名称
緩降機は主に次の部品で構成されます。
| 部品名 | 役割 |
|---|---|
| 取付け金具(壁取付け・窓枠取付け等) | 建物に緩降機を固定するための金具 |
| 調速機(ガバナー) | ロープの繰り出し速度を自動制御して降下速度を一定に保つ装置 |
| ロープ(2本1組) | 使用者が装着した着用具をつないで降下させるロープ。2本あるため交互に使用できる |
| 着用具(安全帯・胸部バンドまたは腹部バンド) | 使用者の胴体に装着し、ロープに連結する帯状の器具 |
| 収納ケース(袋) | ロープ・着用具を格納するケース。設置場所に固定される |
調速機の仕組み。使用者の体重でロープの速度を制御する
調速機(ガバナー)は、使用者の体重によるロープの引き出し力を利用して降下速度を自動制御する装置です。ロープを速く引き出そうとすると内部の制動機構(遠心力を利用したクラッチ等)が働いて抵抗が増し、降下速度を一定以下に保ちます。
調速機によって保たれる降下速度は概ね毎秒1.5m以下です。この速度基準は消防庁長官が定める緩降機の型式試験基準に規定されています。
| 項目 | 数値・内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 降下速度 | 概ね毎秒1.5m以下 | 消防庁長官が定める型式試験基準 |
| 調速機の仕組み | 遠心力を利用した制動機構(詳細は型式による) | 型式試験基準 |
出典:消防庁長官が定める緩降機の型式試験基準・消防法施行規則第27条(e-Gov法令検索)
ロープ2本1組の仕組み。交互使用で連続降下できる
緩降機のロープは2本1組で構成されています。一人が1本目のロープを装着して降下している間に、2本目のロープは地上側で次の使用者が装着できる状態になります。
降下中の一人が地面に着くと、今度は2本目のロープを使って次の人が降下します。このように2本のロープが交互に使われるため、連続して降下が可能な設計になっています。
ロープの主な種類は次のとおりです。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 繊維ロープ(ナイロン等) | 軽量・柔軟。擦り傷・芯の損傷が主な劣化形態 |
| 金属ロープ(ワイヤーロープ) | 強度が高い。腐食・素線の断線が主な劣化形態 |
着用具の種類と装着方法
着用具(安全帯)はロープと使用者をつなぐ重要な部品です。型式によって形状が異なりますが、主に次の2種類があります。
| 種類 | 装着位置 | 特徴 |
|---|---|---|
| 胸部バンド型 | 胸部(わきの下)に装着 | 装着が比較的簡単・一般的な形状 |
| 腹部バンド型 | 腹部(腰周り)に装着 | 安定性が高い |
着用具を正しく装着しないと降下中に外れる危険があります。使用訓練と点検が重要です。
設置要件。降下空間と操作面積の確保
緩降機を設置する際は、施行規則第27条に基づき降下空間と操作面積を確保する必要があります。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 降下空間 | 緩降機の前方・後方・側方の一定距離以内に障害物がないこと。距離の基準は型式試験基準による |
| 操作面積 | 着用具を装着して器具を操作するための踊り場・バルコニー等の床面積 |
| 取り付け金具の強度 | 最大許容荷重の2倍以上に耐えること(型式試験基準) |
点検のポイント。外観点検・機能点検・作動点検で確認する
緩降機の定期点検(機器点検:6ヶ月ごと・総合点検:1年ごと)では次の項目を確認します。
調速機の点検
- 外観:腐食・変形・損傷がないこと
- 機能:ロープをゆっくり引き出したとき・速く引き出したとき、適切に制動が働くこと
- 動作:制動機構の作動が正常であること
ロープの点検
- 繊維ロープ:擦り傷・芯の損傷・汚損・端末処理の状態を確認
- 金属ロープ(ワイヤーロープ):腐食・素線の断線・変形・端末処理の状態を確認
- ロープの長さが床から地上(または安全な降着位置)まで届くこと
着用具の点検
- バンド・ベルト:破損・縫製のほつれ・変形がないこと
- バックル・連結金具:作動確認・腐食・変形がないこと
取り付け金具の点検
- 腐食・ゆるみ・変形がないこと
- 壁・床・窓枠への固定状態が正常であること
- JIS規格(G3101等)に適合した材質であること(設置時の確認)
収納ケース・表示の確認
- 収納ケースが破損・腐食していないこと
- 使用方法・警告表示が劣化・消色していないこと
- 標識(「避難器具」と記載した蓄光式等)が設置されていること
点検で発見した不具合の対応
点検でロープに擦り傷・断線・芯の損傷が確認された場合は、使用不可として交換が必要です。調速機の制動機能に異常がある場合は、製造者または専門業者による修理・交換が必要です。
取り付け金具に腐食・ゆるみがある場合は、増し締めまたは交換を行います。ただし取り付け金具の交換・再取り付け工事は甲種第5類の業務範囲です。
緩降機の使用手順(操作方法)
緩降機の基本的な使用手順は次のとおりです。鑑別問題では操作手順の順序が問われることがあります。
- 収納ケースを開け、ロープを外部に出す(ロープを投下する)
- 着用具(安全帯)を装着する(バンドを脇の下または腰に通してバックルを固定)
- 着用具のフックをロープの輪(カラビナ等)に連結する
- 手すり・窓枠等に乗り越えて体を建物外側に出す
- ゆっくりと降下する(調速機が速度を制御)
- 地上に降着したら着用具を外し、ロープを引き上げる(次の人が装着できるよう)
取り付け金具の種類と材質
緩降機の取り付け方法には複数の形式があります。設置する建物の構造・窓の形式に応じて適切な取り付け金具を選定します。
| 取り付け形式 | 特徴 | 主な使用場所 |
|---|---|---|
| 壁固定型 | 外壁にアンカーボルト等で固定する。荷重は壁が受ける | RC造・鉄骨造の外壁 |
| 窓枠固定型 | 窓枠や手すりに取り付ける。コンパクトに収納できる | マンション・ビルの窓際 |
| バルコニー取り付け型 | バルコニーの手すりや梁に固定する | バルコニー付きの建物 |
取り付け金具の材質は日本産業規格(JIS規格)G3101(一般構造用圧延鋼材)等に適合するものが使われます(施行規則第27条による)。ステンレス鋼を使用することで耐食性を高めた製品もあります。
設置工事の手順(甲種第5類の業務)
緩降機の設置工事は甲種第5類の業務範囲です。設置工事の一般的な手順は次のとおりです。
- 着工届を工事開始10日前までに消防署に提出する(消防法第17条の14)
- 設置位置で降下空間・操作面積を確認する
- 取り付け金具を外壁・窓枠等に固定する(強度確認:最大許容荷重の2倍以上)
- 調速機・ロープ・着用具を取り付ける
- 設置届を工事完了後4日以内に提出する(消防法第17条の3の2)
- 消防検査を受ける
型式試験基準と施行規則の関係
緩降機に関する基準は施行規則と型式試験基準の2つに分かれています。両者を混同しないようにすることが試験対策上重要です。
| 基準の種類 | 内容の例 | 根拠 |
|---|---|---|
| 消防法施行規則第27条 | 設置位置の要件(降下空間・操作面積・取り付け金具の材質等) | e-Gov法令検索 |
| 消防庁長官が定める型式試験基準 | 降下速度(毎秒1.5m以下)・取り付け金具の強度(最大許容荷重の2倍以上)・ロープの寸法基準等 | 消防庁告示 |
型式試験基準に規定されている数値(降下速度・強度)は、施行規則の条文には直接書かれていません。試験で「何cm以上」「何m以下」という数値の出典を問われたときに「施行規則第27条」か「型式試験基準」かを区別して答えることが求められます。
鑑別問題での識別ポイント
鑑別問題では緩降機の写真・図を見て部品名を答えるパターンが出ます。覚えておくべき部品と特徴は次のとおりです。
| 部品名 | 見た目・特徴 |
|---|---|
| 調速機(ガバナー) | 金属製の箱状・円筒形の装置。ロープが通っている |
| 着用具(安全帯) | ベルト・バンド状の帯。バックル・フックが付いている |
| 収納ケース(袋) | 箱型または袋型。壁や窓枠に固定されている |
| ロープ | 2本のロープが調速機に接続されている |
試験で覚えるポイント
| 問われるポイント | 正解となる知識 |
|---|---|
| 調速機の役割 | 使用者の体重によるロープ引き出し力を利用して降下速度を一定に保つ装置 |
| 降下速度の基準 | 概ね毎秒1.5m以下(型式試験基準による) |
| ロープの本数 | 2本1組(交互使用で連続降下が可能) |
| ロープ点検の主な確認事項 | 擦り傷・芯の損傷(繊維)・腐食・断線(金属)・端末処理 |
| 取り付け金具の強度基準 | 最大許容荷重の2倍以上(型式試験基準) |
緩降機の整備で交換が必要な部品
定期点検で劣化・損傷が確認された場合の対応をまとめます。整備(消耗品交換・調整)は乙種第5類でも行えます。工事(取り付け金具の取り外し・再取り付け)は甲種第5類が必要です。
| 部品 | 交換の目安 | 業務区分 |
|---|---|---|
| ロープ(繊維製) | 擦り傷・芯の損傷が確認された場合・交換推奨期限到来時 | 整備(乙5・甲5) |
| ロープ(金属製) | 腐食・素線の断線が確認された場合 | 整備(乙5・甲5) |
| 着用具(安全帯) | バンドの破損・縫製のほつれ・バックルの不良時 | 整備(乙5・甲5) |
| 取り付け金具 | 腐食・変形・ゆるみが確認された場合 | 工事(甲5のみ) |
| 調速機 | 制動機能の異常・製造者指定の交換周期 | 製造者または専門業者 |
緩降機の設置状況と使用実績
緩降機はマンション・ビル・ホテルなど多くの用途の建物に設置されており、避難器具の中でも設置件数の多い器具です。設置スペースが比較的小さく、収納状態がコンパクトであることから、窓際・バルコニー等に設置しやすい利点があります。
実際の火災時に使用されることもありますが、使用訓練を受けていない人が一人で操作するには難しい面もあります。建物の消防訓練では緩降機の操作手順を確認しておくことが重要です。
緩降機と救助袋・避難はしごの選定基準
設置する避難器具の種類(緩降機・救助袋・避難はしご等)の選定は、次の条件を考慮して行います。
| 選定条件 | 向いている器具 |
|---|---|
| 設置スペースが狭い | 緩降機(コンパクトに収納できる)・垂直式救助袋 |
| 多人数を短時間で避難させたい | 斜降式救助袋 |
| 高齢者・体の不自由な人への配慮 | すべり台(操作が簡単)・救助袋 |
| 設置コストを抑えたい | 避難はしご(比較的安価) |
緩降機の廃棄基準の目安
緩降機には製造者が定める使用推奨期限があります。推奨期限を超えた製品は外観に問題がなくても交換を検討する必要があります。消防法上の明確な廃棄義務期限は定められていませんが、製造者の推奨期限を参考に定期的な更新計画を立てることが実務上の対応です。
緩降機の点検周期と報告義務
緩降機を含む避難器具の点検周期と報告義務は、消防法施行規則第31条の6で定められています。
| 点検の種類 | 実施周期 |
|---|---|
| 機器点検 | 6か月ごと |
| 総合点検 | 1年ごと |
点検結果の報告義務は防火対象物の用途によって異なります。特定防火対象物(病院・ホテル・百貨店等)は1年ごと、非特定防火対象物(事務所・工場等)は3年ごとに消防署長へ報告します(消防法第17条の3の3)。
点検は消防設備士または消防設備点検資格者が実施します。乙種第5類・甲種第5類の免状を持つ消防設備士は、緩降機を含む避難器具の点検・整備を業として行えます。機器点検では外観・格納状態・調速機の動作・ロープの状態・標識の確認が主な項目です。総合点検では実際に器具を展開・操作して動作を確認します。ロープの繰り出し・調速機の制動確認・着用具の装着確認が主な内容です。点検で不具合が確認された場合は、速やかに整備または交換を実施します。試験では「6か月ごとに機器点検・1年ごとに総合点検を実施する(消防法施行規則第31条の6)」という点検周期の組み合わせを覚えておくと解答に役立ちます。消防設備士第5類(乙5・甲5)の免状を持つ消防設備士は緩降機の点検・整備を業として行うことができます。乙5・甲5のいずれも点検・整備が可能で、取り付け金具の工事(取り外し・再取り付け)は甲5のみ行えます。
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問題をすぐに解いてみたい方は、こちらのアプリをご利用ください。
▶ 消防設備士 第5類(乙5・甲5)AI問題集
作成日:2026年11月5日 作成者:fufumumu_design
出典:消防庁長官が定める緩降機の型式試験基準・消防法施行規則第27条(e-Gov法令検索)・消防法施行規則第31条の6(同)

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