認知症で生命保険が請求できない|時効3年・指定代理請求人の手続き

認知症が進んで本人が生命保険の請求手続きをできない状態になった。受け取り損ねたまま月日が過ぎ、気づいたら時効になっていた——というケースは実際に起きている。受取人が指定されている死亡保険金と、本人が受取人の医療保険・介護保険の請求は仕組みが異なる。請求できる人・請求方法・時効の対処を整理した。

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認知症で請求できなくなる保険金・給付金の種類

認知症が進んで本人が手続きできなくなると問題になる主な保険金・給付金は次の通りだ。

  • 医療保険・入院給付金:入院した際に「入院給付金」が受け取れる。受取人は本人(被保険者)が多い。本人が請求できない場合に指定代理請求人の登録がなければ家族が手続きできない
  • 介護保険金(民間保険):公的介護保険ではなく民間の「介護保険(民間)」の保険金。要介護認定が出た後に給付が受けられるが、本人が請求できなければ指定代理請求人が必要
  • 死亡保険金:受取人に指定された人が請求するため、被保険者(本人)が認知症であっても受取人が手続きできる。ただし受取人が本人または受取人が未指定の場合は相続手続きが必要
  • 生存給付金・祝い金:一定年齢に達した場合や満期時に支払われる給付金。本人が受取人の場合は本人の請求が必要で、認知症が進んでいると手続きができなくなる

指定代理請求人の制度と登録方法

生命保険・医療保険各社は「指定代理請求人」制度を設けており、本人が手続きできない状態になった場合に代わりに保険金を請求できる人を事前に指定しておける(生命保険協会「指定代理請求制度について」)。

指定代理請求人として登録できるのは、本人の「配偶者・3親等以内の親族」が一般的だ(保険会社によって条件が異なる)。

登録方法は次の通りだ。

  1. 各保険会社のカスタマーセンターに「指定代理請求人の登録をしたい」と連絡する
  2. 保険会社から「指定代理請求人指定(変更)申請書」が届く
  3. 本人(被保険者)が申請書に署名・捺印して保険会社に返送する

本人が認知症で署名できない状態になってからでは手続きができない。意思能力が残っているうちに、今すぐ登録することが最優先だ。

指定代理請求人が登録されていない場合の対処

指定代理請求人の登録がない場合、本人が手続きできない状態での保険金請求は次の方法で対応する。

  1. 成年後見人が代理で請求する:成年後見人は本人の財産管理権限を持つため、保険金(本人が受取人のもの)を代理で請求できる。後見登記事項証明書(法務局発行)と身分証を保険会社に提出して手続きする
  2. 各保険会社の「後見人等専用窓口」に相談する:多くの大手保険会社は後見人・任意後見人のための専用窓口を設けている。後見登記事項証明書を持参して手続き方法を確認する
  3. 保険会社の例外対応を確認する:指定代理請求人の登録がなく後見人もいない場合でも、保険会社によっては「家族からの申請」に柔軟に対応するケースがある。まず保険会社に「認知症で本人が手続きできない」という状況を伝えて相談する

生命保険の請求時効は3年

生命保険・医療保険の保険金・給付金には時効がある。保険法(2010年施行)では「保険給付請求権の時効は3年」と定められている(保険法第95条)。

時効の起算点は「請求権者が請求できることを知った時」だ。入院給付金の場合は「退院した日」が起算点になるケースが多い(保険会社・約款による)。

3年を過ぎると原則として請求権が消滅する。ただし実務では、時効が過ぎていても「相当な事情があった場合」には保険会社の判断で支払いに応じることもある。まずは時効が過ぎていても保険会社に相談することが大切だ。

時効が迫っている場合の「催告」

時効が迫っている(3年に近い)場合は、「催告」(民法第150条)を行うことで6か月間時効の完成を猶予できる。催告は書面(内容証明郵便が望ましい)で保険会社に「保険金を支払ってほしい」と通知することで行える。

催告による猶予期間(6か月)の間に後見人の選任手続き等を進め、後見人が正式に請求する流れで対応できる。

死亡保険金で受取人が認知症の場合

死亡保険金の受取人が認知症で手続きできない場合は、受取人の成年後見人が代理で請求する。受取人に後見人がいない場合は、後見申立てを行ってから請求手続きをとることになる。

死亡保険金は相続財産ではなく「受取人の固有財産」とされているため(最高裁判例)、相続放棄をしても受け取れる。ただし保険金額が遺産に比べて著しく高額な場合は「特別受益」として遺産分割の問題になることもある。

加入中の保険を把握しておくための準備

認知症が進んでから困るのは「どの保険に入っているかわからない」という状況だ。保険証券を探せない・保険会社名もわからない——という場合の確認方法を整理した。

  • 生命保険協会の「生命保険契約照会制度」:死亡・認知症・入院等の事由で本人が確認できない場合、家族からの申請で加入している生命保険会社を照会できる制度(2021年に開始)。申請手数料は3,000円(税込)。生命保険協会のウェブサイトから申請できる
  • 郵便物・通帳の引き落とし記録の確認:保険会社からの案内・口座の引き落とし明細で保険会社を特定できる場合がある
  • 保険証券の保管場所を家族と共有しておく:本人が元気なうちに、保険証券の保管場所を家族に共有しておくことが最も確実な方法だ

この記事のまとめ

  • 医療保険・介護保険金(民間)は本人が受取人のため、認知症が進むと指定代理請求人なしでは請求困難
  • 成年後見人が選任されれば後見人が代理で保険金請求できる
  • 保険金の時効は3年(保険法第95条)。時効が迫っている場合は「催告」(民法第150条)で6か月猶予できる
  • まだ意思確認ができる段階に「指定代理請求人の登録」を今すぐ行う
  • 加入している保険がわからない場合は生命保険協会の「生命保険契約照会制度」(3,000円)で照会できる

出典:保険法第95条(保険給付請求権の時効)、民法第150条(催告による時効完成猶予)、生命保険協会「指定代理請求制度について」「生命保険契約照会制度」

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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