通所介護の運営規程。記載が義務づけられている項目。
通所介護の運営規程は、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第105条に基づき、事業所ごとに作成・備え付けが義務です。「事業の目的・種類」「提供するサービスの内容と手続き」「利用料」「苦情処理」「緊急時の対応」「虐待防止措置」など記載必須項目があります。記載が必要な項目の一覧・通所介護特有の記載ポイント・重要事項説明書との違い・変更時の届出義務・運営指導での確認ポイントを整理します。
運営規程の法的根拠と位置づけ
運営規程の根拠条文は「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号、以下「運営基準」)の第105条(通所介護の部分)です。同条は「指定通所介護事業者は、指定通所介護事業所ごとに、次に掲げる事業の運営についての重要事項に関する規程を定めておかなければならない」と規定しています。
運営規程は、介護保険の指定申請の際に都道府県・市区町村に提出する書類のひとつであり、指定後も事業所内に備え付けておく義務があります。利用者・家族に対して重要事項説明書と合わせて説明する際に参照します。
運営規程に記載が義務づけられている項目
運営基準第105条が定める記載必須項目は以下のとおりです。
| 記載必須項目 | 記載の内容例 |
|---|---|
| 事業の目的及び運営の方針 | 地域の高齢者に通所介護を提供し、自立した生活を支援する等 |
| 従業者の職種、員数及び職務の内容 | 管理者1名・生活相談員○名・介護職員○名・看護職員○名等 |
| 営業日及び営業時間 | 月〜土曜 9:00〜18:00(送迎あり)等 |
| 指定通所介護の内容及び利用料その他の費用の額 | 入浴介助・機能訓練・食事介助・送迎・食費の額等 |
| 通常の事業の実施地域 | ○○市内・隣接する△△市の一部等 |
| 緊急時等における対応方法 | 利用中に急変した場合の連絡先・手順等 |
| 非常災害対策 | 避難場所・避難経路・消防計画との関係等 |
| 虐待の防止のための措置に関する事項 | 虐待防止責任者・委員会・研修の方針等 |
| その他運営に関する重要事項 | 秘密保持・記録の管理・苦情受付・第三者評価等 |
「その他運営に関する重要事項」は包括的な項目で、苦情処理・プライバシー保護・記録の保存期間・サービス提供を拒否できる正当な理由などを盛り込むことが一般的です。
通所介護特有の記載ポイント
サービス提供時間の記載方法
通所介護の報酬は「提供時間数」に応じた区分(3時間以上4時間未満・4時間以上5時間未満・5時間以上6時間未満・6時間以上7時間未満・7時間以上8時間未満・8時間以上9時間未満)で算定します。運営規程には、実際に提供するサービスの時間帯と時間数を明記する必要があります。
例えば「9:00〜16:00(7時間サービス)のコースと10:00〜13:00(3時間サービス)のコースを提供」という事業所は、両コースを運営規程に記載しておく必要があります。実際に提供していないコースは記載しないことが原則です(記載と実態が乖離すると指摘されます)。
送迎の実施有無と実施地域
通所介護では送迎が収益の要となりますが、送迎を実施するかどうかと実施地域は運営規程に明記する必要があります。「通常の事業の実施地域」として記載する範囲と、送迎が可能なエリアを整合させる必要があります。送迎加算(片道)を算定している場合は、その旨も利用料の項目で明示しておくとよいです。
入浴介助の有無と加算算定方針
入浴介助加算(Ⅰ)(Ⅱ)を算定している事業所は、運営規程の「提供するサービスの内容」の欄に入浴介助の実施を明記します。算定している加算名と加算の内容を利用料の項目に含めることが望ましいです。「入浴介助を行うかどうか」は入居時の重要事項説明の内容にも影響するため、運営規程・重要事項説明書・利用契約書の記載を一致させてください。
機能訓練指導員の配置と個別機能訓練加算
機能訓練指導員(PT・OT・ST・看護師・准看護師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師)を配置している場合は、従業者の項目にその職種・員数を記載します。個別機能訓練加算(Ⅰ)(Ⅱ)を算定している場合は、加算の名称と金額を利用料の項目に記載してください。
重要事項説明書との違いと関係
運営規程と重要事項説明書は別の書類ですが、記載内容が重なる部分が多く混同されることがあります。両者の関係は以下のとおりです。
| 項目 | 運営規程 | 重要事項説明書 |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 平成11年厚生省令第37号第105条 | 介護保険法第74条(指定基準の準用) |
| 対象 | 行政・事業所内の規程文書 | 利用者・家族への説明文書 |
| 目的 | 事業運営の方針・内容を規定する | 契約前に利用者・家族に内容を説明する |
| 更新のタイミング | 変更時に都道府県等への変更届が必要 | サービス内容変更時に利用者へ説明・同意が必要 |
運営規程は行政の確認・備え付けのための文書、重要事項説明書は利用者への説明・同意のための文書という位置づけです。ただし内容は整合していなければならず、運営規程を変更した場合は重要事項説明書も見直すことが求められます。
虐待防止に関する記載(令和6年度義務化)
令和3年度の介護報酬改定で「虐待防止措置」が義務化され(一部は令和6年4月から完全義務化)、運営規程への記載も必要になりました。記載すべき内容は以下のとおりです。
- 虐待防止のための責任者の設置(管理者が兼任でも可)
- 虐待防止に関する委員会の定期開催(おおむね年1回以上)
- 従業者への虐待防止に関する研修の実施(年1回以上)
- 虐待が発生した場合の市区町村への通報手順
「虐待防止責任者は管理者が兼任する」という形が多いです。委員会開催・研修実施は記録を残す必要があります。運営規程に方針を書くだけでなく、実際に委員会を開いて記録・研修記録を整備しておかないと、運営指導で指摘対象になります。
BCP(業務継続計画)との関係
令和6年4月から通所介護事業所はBCP(業務継続計画)の作成・実施が義務化されました(平成11年厚生省令第37号の改正による)。BCP自体は運営規程とは別の文書ですが、運営規程の「非常災害対策」「緊急時の対応方法」の項目とBCPの内容を整合させておく必要があります。
運営規程に「感染症・自然災害に係る業務継続計画を別途作成する」などBCPの存在を明記し、BCPと運営規程の体系を紐付けておくことが望ましいです。
運営規程の変更時の手続き
運営規程の内容に変更が生じた場合は、指定権者(都道府県または市区町村)への変更届の提出が必要です。変更届の提出期限は原則「変更が生じた日から10日以内」とされていますが、自治体によって異なるため、指定権者の指示に従ってください。
変更届が必要な主な場面
- 営業日・営業時間の変更
- 提供するサービスの内容の変更(入浴介助の開始・終了等)
- 利用料の変更(実費徴収額の改定等)
- 通常の事業の実施地域の変更
- 管理者など従業者の職種・員数の変更(軽微な変動を除く)
「軽微な変更」(従業者の員数の小幅な変動など)については変更届不要の自治体が多いですが、基準の解釈は自治体によって異なります。変更の内容が軽微かどうか判断に迷う場合は、指定権者に事前確認することをお勧めします。
変更届を怠ると指定取消リスク
変更届を提出せずに実態と運営規程の内容が乖離した状態で運営していると、運営指導で「虚偽の記載」「運営基準違反」として指摘され、最悪の場合は指定取消の対象になります。変更があったときは都度変更届を出す習慣をつけることが重要です。
運営指導での確認ポイント
記載必須項目の網羅性
運営基準第105条が定める全項目が記載されているかを確認されます。特に「虐待防止措置に関する事項」は令和6年4月完全義務化の項目で、記載がない場合は改善勧告の対象になります。
運営規程と実態の一致
運営規程に記載された営業日時・提供サービスの内容・提供時間・利用料と、実際の運営の実態が一致しているかを確認されます。「運営規程には7時間サービスと書いてあるが実際は6時間で請求している」というケースは報酬返還の対象です。
備え付け状況
運営規程が事業所内に備え付けられているかを確認されます。「作成はしているが場所が分からない」「最新版がない」という状態は指摘対象です。変更のたびに版を更新し、変更履歴も残しておくことを勧めます。
重要事項説明書との整合性
運営規程と重要事項説明書の内容に食い違いがないかを確認されます。「利用料の金額が運営規程と重要事項説明書で違う」「提供時間の記載が違う」といったケースは指摘対象です。定期的に両書類を照合して整合性を確認してください。
運営規程の作成・見直しのポイント
指定申請時のひな型活用
都道府県・市区町村の多くは、指定申請時に運営規程のひな型(Word・PDF)を提供しています。ひな型をそのまま使いすぎると記載内容が実態と乖離するリスクがあります。ひな型を基に自事業所の実態(サービス提供時間・送迎実施地域・加算の種類等)を正確に反映させてください。
報酬改定のたびに見直す
介護報酬改定(3年ごと)の際に加算の種類・名称・金額が変わることがあります。改定のたびに運営規程の利用料の記載を確認し、必要があれば変更届とあわせて更新してください。「令和3年改定前の古い加算名が残ったまま」というケースは見落としやすいです。
従業者の員数変更時の注意
通所介護の人員基準(生活相談員・看護職員・介護職員・機能訓練指導員・管理者)の員数が変わる場合は、運営規程の記載と変更届の更新が必要です。採用・退職のたびに即座に対応する習慣が運営規程の実態との乖離を防ぎます。
まとめ:運営規程の整備で押さえる3つのポイント
- 記載必須項目をすべて網羅する:運営基準第105条の項目一覧を確認し、漏れがないか定期的に点検する。虐待防止措置の項目は令和6年度義務化のため特に確認。
- 実態と記載を一致させる:サービス提供時間・送迎実施地域・利用料・加算の種類は実態どおりに記載し、変更があれば速やかに変更届を提出する。
- 重要事項説明書と定期的に照合する:年1回以上、運営規程と重要事項説明書の内容を比較して食い違いがないかを確認する。
運営規程は「作ったら終わり」の書類ではありません。事業所の実態を正確に反映した最新版を常に備え付け、変更のたびに更新する習慣が、運営指導での指摘を防ぎます。
通所介護の開業収支シミュレーターで、加算算定の有無による収益の変化を試算できます。

コメント