消火器の設置計画書は、消防法施行令第10条・消防法施行規則第6条の設置基準に基づいて消火器の設置場所・本数・種類を計画した文書です。新築・増改築時の消防署への設置届(消防法第17条の3の2)に添付して提出します。この記事では設置計画書の記載内容・能力単位の計算方法・歩行距離20m以内の配置計画・付加設置が必要な場所の判定方法を整理します。
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消火器の設置義務が発生する防火対象物(施行令第10条第1項)
消火器(簡易消火用具を含む「消火器具」)の設置義務は、消防法施行令第10条第1項に規定されています。設置義務の有無は建物の用途・延べ面積・設置場所によって異なります。
| 区分 | 対象の防火対象物 | 面積要件 |
|---|---|---|
| 第1号イ | 劇場・映画館・キャバレー・遊技場((一)項イ・(二)項)・病院・老人福祉施設・障害者施設・幼稚園等((六)項イ(1)〜(3)・ロ)・地下街((十六の二)項)・準地下街((十六の三)項)・文化財((十七)項)・重要文化財等((二十)項) | 延べ面積にかかわらず設置義務 |
| 第1号ロ | 飲食店・居酒屋等((三)項)で火を使用する設備を設けたもの | 延べ面積にかかわらず設置義務 |
| 第2号 | 公会堂・集会場((一)項ロ)・百貨店((四)項)・旅館・ホテル((五)項)・クリニック等((六)項イ(4)・ハ・ニ)・公衆浴場((九)項)・工場((十二)項)・車庫((十三)項)・倉庫((十四)項)等で、延べ面積150㎡以上のもの | 延べ面積150㎡以上 |
| 第3号 | 学校・図書館・博物館・事務所・駐車場・複合用途・共同住宅等((七)(八)(十)(十一)(十五)項) | 延べ面積300㎡以上 |
| 第4号 | 全用途の建築物で、少量危険物(指定数量の1/5以上・指定数量未満)または指定可燃物を貯蔵・取り扱うもの | 延べ面積にかかわらず設置義務 |
| 第5号 | 第1〜4号以外の全用途の建築物の地階・無窓階・3階以上の階 | 床面積50㎡以上 |
設置計画書の作成に先立ち、まず建物の用途・延べ面積・該当する号を確認して設置義務の有無を判定します。判定後、必要な能力単位の数を計算します。
能力単位の計算方法(施行規則第6条第1項)
消火器の設置に必要な能力単位は「延べ面積(または床面積)÷ 用途ごとの基準面積 = 必要能力単位数」で求めます。端数は切り上げます。
用途ごとの基準面積は消防法施行規則第6条第1項の表に定められています。
| 令別表第一の用途区分 | 主な施設の例 | 基準面積(1単位あたり) |
|---|---|---|
| (一)項イ・(二)項・(十六の二)項・(十六の三)項・(十七)項 | 劇場・映画館・ナイトクラブ・遊技場・パチンコ店・地下街・重要文化財 | 50㎡ |
| (一)項ロ・(三)〜(六)項・(九)項・(十二)〜(十四)項 | 公会堂・飲食店・百貨店・旅館・ホテル・病院・老人ホーム・共同住宅・倉庫・工場・自動車車庫 | 100㎡ |
| (七)項・(八)項・(十)項・(十一)項・(十五)項 | 学校・図書館・神社仏閣・駐車場・一般事務所ビル | 200㎡ |
計算例:延べ面積400㎡の飲食店((三)項・基準面積100㎡)の場合、400 ÷ 100 = 4単位が必要です。能力単位A3の消火器(粉末消火器など)を1本設置すると3単位なので、最低2本で6単位(4単位以上を満たす)となります。
耐火構造・難燃材料仕上げによる緩和規定(施行規則第6条第2項)
建物の主要構造部が耐火構造で、かつ壁・天井の室内面仕上げが難燃材料(建築基準法施行令第1条第6号)である場合は、第6条第1項の基準面積の数値が2倍になります。つまり同じ床面積でも必要能力単位数が半分に緩和されます。
| 建物の構造・仕上げ | 飲食店の基準面積 | 延べ面積400㎡の必要能力単位 |
|---|---|---|
| 通常の建物 | 100㎡ | 400 ÷ 100 = 4単位 |
| 耐火構造+難燃材料仕上げ | 200㎡(2倍に緩和) | 400 ÷ 200 = 2単位 |
「耐火構造」の条件だけでは緩和されません。「耐火構造かつ難燃材料仕上げ」の両方を満たした場合に緩和が適用されます。設置計画書に緩和適用の根拠(構造・仕上げの概要)を明記します。
付加設置が必要な特殊な場所(施行規則第6条第3〜5項)
通常の能力単位計算とは別に、次の場所には追加で消火器の設置が必要です。設置計画書では通常の設置分と付加設置分を分けて記載します。
電気設備のある場所(第4項):変圧器・配電盤・その他これらに類する電気設備がある場所には、床面積100㎡以下ごとに電気設備の消火に適応する消火器を1個設置します。対象は「変圧器・配電盤に類する」設備であり、一般のコンセントやブレーカーボックスは通常含まれません。
多量の火気を使用する場所(第5項):鍛造場・ボイラー室・乾燥室その他多量の火気を使用する場所には、床面積25㎡以下ごとに建築物の消火に適応する消火器具を1単位以上設置します。
少量危険物・指定可燃物を扱う場所(第3項):少量危険物(指定数量の1/5以上・指定数量未満)または指定可燃物を貯蔵・取り扱う場所には、その種類に適応した消火器具を追加設置します。能力単位の計算は「貯蔵量 ÷ 指定数量(少量危険物の場合)または指定数量の50倍(指定可燃物の場合)」で求めます。
歩行距離20m以内の配置計画(施行規則第6条第6項)
消火器の設置場所は、防火対象物の各部分から一の消火器具までの歩行距離が20m以下になるように配置しなければなりません(施行規則第6条第6項)。
歩行距離は直線距離ではなく、廊下・通路を通って実際に歩く経路での距離です。設置計画書の配置図では建物の平面図に20mの歩行距離の範囲を記入し、建物の全エリアが少なくとも1本の消火器から20m以内に収まっていることを確認します。
確認のポイントは次のとおりです。
- 廊下が折れ曲がっている場合は折れ曲がった経路での歩行距離を測る
- 防火扉・シャッターで区画されている部分は通過できる開口部を経由した距離で測る
- 階段は歩行距離に含まない(階ごとに別に計算する)
- 屋外の設置箇所は屋外を歩く経路での歩行距離で測る
全エリアが20m以内に収まらない場合は消火器を追加設置します。追加設置後の配置図を再確認して全エリアのカバーを確かめます。
設置高さと標識の条件(施行規則第9条)
設置計画書には設置場所だけでなく設置方法の条件も確認します。
設置高さ(施行規則第9条第2項):消火器の操作部(ハンドル等)の位置が床面から1.5m以下になるよう設置します。高い棚の上や手の届かない位置は不可です。
標識(施行規則第9条第1項):消火器の設置場所には「消火器」と記載した標識を設置します。標識は床面から1.5m以上の高さに掲げます(消火器の設置高さ1.5m以下とは矛盾しませんが、標識は視認性を確保するために1.5m以上に掲げる)。
設置環境:消火器は直射日光・雨水・腐食性ガスを避けた場所に設置します。屋外設置の場合は保護箱・ボックスへの収納が必要です。
設置計画書の記載内容
設置計画書には次の事項を記載します。消防署によって指定の様式がある場合はそれに従います。
| 記載事項 | 内容 |
|---|---|
| 建物情報 | 建物名・所在地・用途(令別表第一の号)・延べ面積・階数・主要構造部の種別・内装仕上げ材 |
| 設置義務の根拠 | 施行令第10条第1項の何号に該当するか |
| 緩和規定の適用有無 | 施行規則第6条第2項(耐火構造+難燃材料仕上げ)の適用の有無と根拠 |
| 必要能力単位の計算 | 用途・床面積・基準面積から算出した必要能力単位数(階ごと) |
| 付加設置の計算 | 電気設備・多量の火気を使用する場所・少量危険物等の付加設置本数 |
| 選定消火器の情報 | 消火器の種類・型番・薬剤量・能力単位・設置本数 |
| 設置場所の一覧 | 各消火器の設置フロア・場所(室名・廊下等)・管理番号 |
| 配置図 | 建物の平面図に消火器の設置位置・番号をプロットした図(歩行距離20mの確認も可視化) |
設置届と着工届の違い
消防署への届出には、工事着手前の「着工届」と工事完了後の「設置届」の2種類があります。設置計画書は「設置届」に添付します。
| 届出の種類 | 根拠条文 | 提出タイミング | 添付書類 |
|---|---|---|---|
| 着工届(消防設備設置計画の届出) | 消防法第17条の14 | 工事着手の10日前まで | 設置計画書(施工前の計画)・設計図書等 |
| 設置届 | 消防法第17条の3の2 | 工事完了後4日以内 | 設置計画書(完成時の実態)・検査書類等 |
着工届は消防設備士が工事に着手する前に提出し、設置計画の事前確認を受けます。設置届は工事完了後に提出し、消防署の竣工検査(消防検査)の根拠となります。設置計画書は両方の届出書に添付しますが、着工届時点では施工前の計画内容、設置届時点では実際に設置した内容を記載します。
試験での出題ポイント整理
| 問われ方 | 正しい答え | 根拠 |
|---|---|---|
| 一般事務所ビル((十五)項)の能力単位計算の基準面積は | 200㎡で1単位 | 施行規則第6条第1項の表 |
| 飲食店((三)項)の能力単位計算の基準面積は | 100㎡で1単位 | 施行規則第6条第1項の表 |
| 劇場・地下街の能力単位計算の基準面積は | 50㎡で1単位 | 施行規則第6条第1項の表 |
| 耐火構造+難燃材料仕上げの緩和は基準面積を何倍にするか | 2倍(必要能力単位数が半分になる) | 施行規則第6条第2項 |
| 電気設備(変圧器・配電盤等)の付加設置の基準は | 床面積100㎡以下ごとに1個 | 施行規則第6条第4項 |
| 多量の火気使用場所(鍛造場・ボイラー室等)の付加設置の基準は | 床面積25㎡で1単位 | 施行規則第6条第5項 |
| 消火器の歩行距離の基準は | 各部分から1の消火器具まで20m以下 | 施行規則第6条第6項 |
| 設置届の提出タイミングは | 工事完了後4日以内 | 消防法第17条の3の2 |
まとめ
消火器の設置計画書は施行令第10条(設置義務の有無)と施行規則第6条(能力単位計算・配置基準)に基づいて作成します。能力単位の計算は用途ごとの基準面積(50㎡・100㎡・200㎡)を使い、耐火構造+難燃材料仕上げの建物では基準面積が2倍に緩和されます。電気設備がある場所は100㎡ごとに1個、ボイラー室等の多量の火気を使用する場所は25㎡で1単位の付加設置が必要です。配置は各部分から歩行距離20m以内となるよう平面図で確認します。設置計画書は工事前の着工届(第17条の14)と工事完了後の設置届(第17条の3の2)の両方に添付します。
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