消防法では危険物を第1類〜第6類の6種類に分類しています。乙4の試験では第4類(引火性液体)が主要テーマですが、法令科目では全6類の性質・区別・混載禁止の組み合わせが問われます。各類の特性を一度まとめて理解しておくと、法令問題全体が解きやすくなります。
危険物の6分類と各類の性質
消防法別表第1に規定されている危険物の6分類を次の表に整理します。
| 類 | 名称 | 状態 | 危険性の特徴 |
|---|---|---|---|
| 第1類 | 酸化性固体 | 固体 | それ自体は燃えないが、加熱・衝撃・摩擦で酸素を放出し、他の可燃物の燃焼を促進する |
| 第2類 | 可燃性固体 | 固体 | 低温で着火しやすい固体。燃焼速度が速い。一部は水と反応して有毒ガスを発生する |
| 第3類 | 自然発火性物質・禁水性物質 | 固体または液体 | 空気中で自然発火するもの(自然発火性)、または水と激しく反応するもの(禁水性)。両方の性質を持つものも多い |
| 第4類 | 引火性液体 | 液体 | 引火点以上の温度で引火性蒸気を発生する。蒸気は空気より重い(比重が1以上)ものが多く、低所に滞留しやすい |
| 第5類 | 自己反応性物質 | 固体または液体 | 加熱・衝撃・摩擦で自己分解が始まり、爆発的に燃焼する。酸素を含有しているため外部から酸素が不要 |
| 第6類 | 酸化性液体 | 液体 | それ自体は燃えないが、強い酸化力で他の可燃物の燃焼を促進する。第1類の液体版という位置づけ |
「第1類と第6類は燃えない」という共通点が混載可能な組み合わせになっている理由です(後述)。
第4類(引火性液体)が試験の中心テーマである理由
乙4の試験は法令・物理化学・性質消火の3科目で構成されますが、性質消火の10問はほぼ第4類の内容です。法令科目でも第4類の施設(ガソリンスタンド・製油所など)を前提にした問題が多く出題されます。
第4類が試験で重視される実務的な背景として、次の点があります。ガソリンスタンドや石油化学工場など、第4類の危険物を扱う施設は国内に広く分布しています。危険物取扱者の有資格者が最も求められる現場が第4類の施設であり、乙4は最も受験者数の多い試験種別です(消防試験研究センターの公表データによる)。
第4類の区分と引火点の範囲
第4類(引火性液体)はさらに次の8区分に分けられます。区分の境界となる引火点の数値は試験で頻繁に問われます。
| 区分 | 引火点の範囲 | 代表的な品目 | 指定数量(非水溶性) |
|---|---|---|---|
| 特殊引火物 | −20℃以下かつ沸点40℃以下(または発火点100℃以下) | ジエチルエーテル・二硫化炭素 | 50L |
| 第1石油類 | 21℃未満 | ガソリン・酢酸エチル・アセトン(水溶性) | 200L(水溶性400L) |
| アルコール類 | 炭素数1〜3の飽和一価アルコール(引火点で区分されない) | メタノール・エタノール | 400L |
| 第2石油類 | 21℃以上70℃未満 | 灯油・軽油・クロロベンゼン | 1,000L(水溶性2,000L) |
| 第3石油類 | 70℃以上200℃未満 | 重油・クレオソート油・ニトロベンゼン | 2,000L(水溶性4,000L) |
| 第4石油類 | 200℃以上250℃未満 | ギヤー油・シリンダー油 | 6,000L |
| 動植物油類 | 250℃未満 | ヤシ油・アマニ油(乾性油) | 10,000L |
アルコール類は引火点の範囲ではなく「炭素数1〜3の飽和一価アルコール」という化学的な定義で区分される点が特徴です。指定数量は400Lで、水溶性・非水溶性の区別がありません。
各類で出る代表的な危険物
乙4の法令問題では第4類以外の類が選択肢に登場することがあります。各類の代表的な品目を把握しておきます。
第1類(酸化性固体)の代表品目
塩素酸塩類(塩素酸カリウム)・過塩素酸塩類・硝酸塩類(硝酸カリウム)・過マンガン酸塩類・重クロム酸塩類などが該当します。すべて固体で、それ自体は燃えませんが熱・衝撃・摩擦で分解して酸素を放出します。可燃物と混合した状態で加熱・衝撃を与えると爆発する危険があります。
第2類(可燃性固体)の代表品目
硫黄・赤りん・マグネシウム・鉄粉・アルミニウム粉・引火性固体(固形アルコール等)が該当します。硫黄と赤りんは水または泡で消火できますが、マグネシウムやアルミニウム粉は水と反応して水素を発生するため棒状注水は禁止です。
第3類(自然発火性・禁水性物質)の代表品目
カリウム・ナトリウム(禁水性)・黄りん(自然発火性・水中保存)・炭化カルシウム(禁水性)・アルキルアルミニウム(禁水性・自然発火性)が該当します。黄りんは空気中で自然発火するため水中に保存します。
第5類(自己反応性物質)の代表品目
有機過酸化物・硝酸エステル類(ニトロセルロース・ニトログリセリン)・ニトロ化合物(ピクリン酸・TNT)・アゾ化合物が該当します。外部から酸素が不要なため、窒息消火が効きません。大量の水で冷却することが基本的な消火法です。
第6類(酸化性液体)の代表品目
過塩素酸・過酸化水素・硝酸(比重1.49以上のもの)・発煙硝酸・ハロゲン間化合物(三フッ化臭素等)が該当します。強い酸化力を持ち、可燃物と接触すると燃焼を促進します。
混載禁止の組み合わせと覚え方
危険物を車両で運搬する際、異なる類を同一車両に積載することを「混載」といいます。消防法施行規則別表第2に混載禁止の組み合わせが定められています。
| 組み合わせ | 可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 第1類(酸化性固体)+ 第6類(酸化性液体) | 可 | 両方とも酸化剤で可燃物なし |
| 第4類(引火性液体)+ 第1類(酸化性固体) | 禁止 | 可燃物+酸化剤で火災・爆発リスク |
| 第4類(引火性液体)+ 第6類(酸化性液体) | 禁止 | 可燃物+酸化剤で火災・爆発リスク |
| 第4類(引火性液体)+ 第5類(自己反応性物質) | 禁止 | 両方とも可燃性で爆発・火災リスクが高い |
| 第4類(引火性液体)+ 第3類(自然発火性等) | 禁止 | 自然発火の危険性がある物質との接触リスク |
| 第2類(可燃性固体)+ 第1類(酸化性固体) | 禁止 | 可燃物+酸化剤で危険 |
混載禁止の基本原則は「可燃物と酸化剤を同じ車に載せない」です。第1類と第6類は同士なので一緒に載せられます。第4類(可燃物)は酸化性の第1・6類、自己反応性の第5類、自然発火・禁水性の第3類との混載が禁止されます。
乙種の種類と受験できる類の範囲
乙種の試験は第1類〜第6類で別々に設定されています。乙4は第4類(引火性液体)の取扱者として認定される試験です。乙4に合格しても他の類を取り扱えるわけではありません。
他の類を取り扱いたい場合は、その類の乙種試験に合格するか、甲種の試験に合格して全類を取り扱えるようにする必要があります。
乙種4種類以上を取得することで甲種の受験資格が生まれます。ただし、組み合わせに条件があります。第1・2・3・4類を含む4種類、または第1・5・6類を含む4種類以上が必要です(消防法第13条の5参照)。
試験対策の視点から各類を整理する
乙4の試験で他の類が問われる場面は主に次の3つです。
1つ目は法令の「混載禁止」の問題です。第4類と他の類の組み合わせが問われます。第4類が禁止される組み合わせを丸ごと覚えることが最も確実です。
2つ目は法令の「性質・状態の説明文から類を選ぶ」問題です。「空気中に放置すると自然発火する」→第3類、「外部から酸素がなくても爆発する」→第5類、という対応関係を把握します。
3つ目は性質消火の「第4類以外との対比」問題です。たとえば「水溶性の消火に耐アルコール型泡を使う理由」は、第4類の水溶性品目に限定した話ですが、第3類の禁水性との対比で出題されることがあります。
まとめ
危険物は消防法別表第1で第1類〜第6類に分類されます。乙4は第4類(引火性液体)の試験ですが、法令科目では全6類の性質・混載禁止の知識が必要です。第4類は引火点以上で蒸気が発生して点火源に引火するという特性を持ち、指定数量は区分ごとに50L〜10,000Lの範囲で設定されています。各類の基本的な性質(酸化性・可燃性・引火性・自己反応性など)を対比させて覚えると、法令の選択問題に対応しやすくなります。
各類を識別するための判断の手順
試験の選択問題で「この説明文はどの類か」を判断するときは、次の手順が使いやすいです。
まず状態で絞ります。固体なら第1類・第2類・第3類(一部)・第5類(一部)が候補です。液体なら第3類(一部)・第4類・第5類(一部)・第6類が候補になります。
次に性質の特徴で絞ります。「それ自体は燃えないが他の可燃物の燃焼を促進する」とあれば酸化性なので第1類(固体)または第6類(液体)です。「引火する」とあれば第4類。「空気中で自然発火する」または「水と激しく反応する」とあれば第3類。「加熱・衝撃・摩擦で爆発的に分解する」とあれば第5類です。
この判断フローを使うと、記述の「キーワード」から類を特定できます。乙4の試験では第4類を中心に他の類との違いが選択肢に組み込まれるため、各類の特徴を対比させた表を繰り返し確認することが効果的です。
試験でよく出る誤りの選択肢パターン
各類に関する問題で出やすい誤りのパターンを整理します。
| 誤りの選択肢(例) | 正しい知識 |
|---|---|
| 「第4類は燃えない」 | 第4類(引火性液体)は可燃物そのものです。燃えないのは第1類・第6類です |
| 「第5類は外から酸素を供給すれば消火できる」 | 第5類は物質自体が酸素を含むため窒息消火が効きません。大量の水による冷却が基本です |
| 「第3類は水で消火できる」 | 第3類の禁水性物質(カリウム・ナトリウム等)は水と反応して水素を発生します。乾燥砂・膨張ひる石を使います |
| 「第1類と第4類を同じ車両に積んで良い」 | 第1類(酸化性固体)と第4類(引火性液体・可燃物)の混載は禁止です |
| 「黄りんは空気に触れても安全」 | 黄りん(第3類)は空気中で自然発火するため水中に保存します |
各類の免状と取得できる範囲
乙種の免状は類ごとに設定されており、乙4は第4類だけを取り扱えます。各類を取り扱うためには対応する乙種免状が必要です。
| 免状の種類 | 取り扱える危険物 |
|---|---|
| 甲種 | 全類(第1〜第6類すべて) |
| 乙種第1類 | 第1類(酸化性固体)のみ |
| 乙種第2類 | 第2類(可燃性固体)のみ |
| 乙種第3類 | 第3類(自然発火性・禁水性物質)のみ |
| 乙種第4類 | 第4類(引火性液体)のみ |
| 乙種第5類 | 第5類(自己反応性物質)のみ |
| 乙種第6類 | 第6類(酸化性液体)のみ |
| 丙種 | 第4類の一部(ガソリン・灯油・軽油・重油等の指定品目) |
乙4を取得後に他の乙種を受験する場合は「物理化学」と「法令」の科目が免除されます(同一試験日に異なる類を受験する場合を除く)。甲種の受験資格は乙種4種類以上の取得が一つの経路ですが、組み合わせに条件があります(消防法第13条の5参照)。
出典:消防法別表第1・消防法第13条の5(消防庁)、危険物の規制に関する政令別表第3・危険物の規制に関する規則別表第2(総務省)


コメント