「採用代行にお願いした方がいいのか、それとも採用LPを作った方がいいのか」。介護施設の採用担当者の方から、こういう相談を受けることがあります。名前だけ聞くと、どちらも「採用を助けてくれるサービス」に見えるので、比較の対象にしたくなる気持ちはよくわかります。実はこの2つ、そもそも役割が違うものです。今日は、採用する側の視点も交えながら、何がどう違うのかを見ていきます。
採用代行(RPO)とは、そもそも何をしてくれるサービスか
採用代行は、英語で「RPO(Recruitment Process Outsourcing)」と呼ばれることもあります。人材紹介のように「人を1人紹介してもらう」のではなく、採用活動そのものの業務を、施設に代わって代行会社が行うサービスです。
具体的には、求人票の作成や求人媒体の選定・運用、応募者からの問い合わせ対応、面接の日程調整、一次面接そのものの代行、内定者への定期的なフォロー連絡など、採用活動の一連の業務を任せることができます。「採用担当を、外部に増員する」というイメージに近いサービスです。
依頼の仕方にも幅があり、母集団形成から内定者フォローまで丸ごと任せることもできますし、「面接の日程調整だけ」「求人票の作成だけ」といった形で、手が回らない部分だけを切り出して依頼することもできます。
なぜ、介護業界でこのサービスが増えてきたのか
介護施設の多くは、専任の採用担当者を置く余裕がありません。施設長やサービス提供責任者が、現場の仕事と兼務で採用活動を担っているケースも珍しくないはずです。求人票を作り、複数の求人媒体を運用し、応募者から連絡が来れば日程を調整し、面接をして、内定を出したら入職まで気にかけ続ける。これを兼務でこなすのは、正直かなりの負担です。
採用代行は、こうした「採用専任者を置けない施設」のニーズに応える形で広がってきたサービスだと考えられます。人手不足そのものが深刻な業界だからこそ、「採用活動にかける人手すら足りない」という、少しねじれた状況が生まれやすく、そこに外部の力を借りるという発想が出てくるのは自然な流れです。
料金は、依頼する範囲によって大きく変わります
採用代行の料金体系は、主に3つのパターンに分かれます。1つ目は月額固定型で、依頼する業務範囲によって月額10万円台から100万円近くまで幅があります。2つ目は成功報酬型で、採用者1人につき年収の20〜35%程度が目安とされることが多いようです。3つ目は従量課金型で、面接の日程調整1件につき数千円〜数万円といった形で、業務単位で課金される仕組みです。
いずれの料金体系も、代行会社や依頼する業務範囲によって金額の幅がかなり大きいというのが実際のところです。検討する際は、複数社に見積もりを取り、「どこまでの業務が含まれているのか」を具体的に確認することをおすすめします。同じ「月額20万円」という見積もりでも、求人媒体の運用費まで含んだ金額なのか、代行会社の作業費だけなのかによって、実質的な負担はまったく変わってきます。
契約前に、確認しておきたいこと
採用代行を検討する際、料金以外にも確認しておいた方がいい点がいくつかあります。
1つ目は、最低契約期間です。採用活動は成果が出るまでに数ヶ月かかることも多いため、多くのサービスが最低契約期間を設けています。「思っていたより効果が出ないので、来月でやめたい」と思っても、契約期間中は解約できない、あるいは違約金が発生する場合があるため、契約前に条件を確認しておく必要があります。
2つ目は、介護業界での実績です。採用代行サービスは業界を問わず存在しますが、介護のように資格要件やシフト制の勤務形態など、業界特有の事情がある職種では、その業界に慣れた代行会社の方が、求人票の作り込みや応募者対応のスムーズさに違いが出やすいと考えられます。
3つ目は、求人媒体の掲載費用が料金に含まれているかどうかです。代行会社への報酬とは別に、求人媒体への出稿費が実費でかかる場合があります。総額でいくらかかるのかを、契約前にきちんと確認しておくことをおすすめします。
4つ目は、効果が出るまでの見通しです。求人媒体の運用は、出稿してすぐに応募が集まるとは限らず、掲載内容の調整を重ねながら徐々に成果が見えてくるものです。「何ヶ月目までに、どれくらいの応募数を見込めるのか」という目安を、契約前に代行会社とすり合わせておくと、後から「思っていたのと違う」というすれ違いを防ぎやすくなります。
採用LP制作とは、決定的に何が違うのか
ここが一番大事なところです。採用代行は「採用活動という業務を、継続的に代行してもらうサービス」です。依頼している間は費用が発生し続けますし、依頼をやめれば、その分の採用活動力もなくなります。
一方で採用LP制作は、「求人媒体やホームページから来た応募希望者が、最終的にたどり着く1枚のページ」を作る仕事です。一度作れば、そのページは施設の資産として残り続けます。求人媒体を変えても、SNSで発信しても、このページに誘導すれば、同じように機能してくれます。
つまり、採用代行は「業務を代わりにやってもらう」サービスで、採用LPは「一度作れば残り続ける受け皿」を作る仕事です。この2つは競合するものではなく、そもそも解決している課題が違います。人材紹介・求人広告・採用LPの費用比較については、以前の記事(下部にリンクを掲載しています)で詳しく扱っていますが、採用代行はさらにそこに「運用そのものの手間」を含めて任せられるサービスだと考えると、位置づけが整理しやすいと思います。
受け皿となるページの中身は、結局は施設にしかわかりません
採用代行に母集団形成から任せた場合でも、応募者が最終的に目にする求人票やページの中身は、施設側の情報をもとに作られます。代行会社がどれだけ運用に長けていても、「この施設で働くとどんな1日になるのか」「どんな職員が、どんな雰囲気で働いているのか」といった、施設の空気感そのものは、施設の外から作ることが難しい部分です。
私がこれまで、求人票や履歴書に関わってきた経験から思うのは、応募者が最終的に「ここで働きたい」と思う決め手になるのは、条件面の情報よりも、その施設で働く自分の姿を具体的に想像できるかどうかだということです。手書きの履歴書に、書いた人の姿が透けて見えるのと同じように、求人ページにも、その施設らしさが透けて見えるかどうかで、応募者の受け止め方は変わってきます。この部分は、業務を代行してもらっていても、施設側が言葉にして渡さなければ、代行会社にも作りようがない情報です。
自分の施設に何が足りていないかで、選ぶべきものは変わります
採用担当の方が今抱えている課題によって、向いている選択肢は変わってきます。
「求人を出しても、そもそも応募自体が全然来ない」という場合、課題は母集団形成にあります。この場合は、求人媒体の運用や求人票の作り込みそのものに手をかける必要があり、採用代行のような専門的な運用支援が力を発揮しやすい場面です。
一方で、「求人媒体からのアクセスはそれなりにあるはずなのに、応募や問い合わせにつながらない」という場合、課題は母集団形成ではなく、応募希望者が最初に目にするページの説得力にあります。この場合は、いくら求人の露出を増やしても、受け皿となるページが弱ければ、そこで離脱されてしまいます。
「日程調整や応募者対応そのものに手が回らない」という場合は、業務量そのものが課題なので、採用代行の一部業務切り出し(応募者対応・日程調整のみ依頼するなど)が合っている可能性があります。
「両方使う」という選択肢も、実はあります
採用代行と採用LPは役割が違うので、両方を組み合わせて使うことも可能です。採用代行に母集団形成や応募者対応を任せつつ、その受け皿となるページの質を上げておく、という考え方です。
実際、採用代行に業務を依頼しても、最終的に応募希望者が見るのが、テンプレートのままの求人サイトのページだったり、施設の情報が最低限しか載っていないページだったりすると、そこで離脱されてしまい、代行にかけた費用がもったいないことになります。母集団を増やす努力と、その母集団を取りこぼさない受け皿の両方が揃って、初めて採用活動として機能します。
丸ごと任せることの、もう一つの側面
ここから先は、採用する側に長く携わってきた立場からの、正直な話です。私はこれまで、約70名の組織で採用や見送りに関わってきましたが、面接というのは、応募者を見極める場であると同時に、施設側が応募者を「選ぶ目」を養う場でもあります。
採用の業務を丸ごと外部に任せると、業務としては楽になりますが、「どういう人がこの施設に合うのか」を見極める経験そのものが、施設の中に蓄積しにくくなるという側面もあります。特に一次面接まで代行してもらう場合、施設のスタッフが直接応募者と会うタイミングは、後ろの方の選考まで来てからになります。
これ自体が悪いということではありません。人手が本当に足りていない施設にとって、業務を巻き取ってもらえることの価値は大きいはずです。ただ、「見極める力そのものを施設の中に育てていきたいのか」「今はとにかく業務量を減らしたいのか」によって、どこまで任せるかの線引きは変わってくると思います。全部を代行に任せるのではなく、一次面接だけは施設側が行い、日程調整や応募者対応の部分だけを代行に任せる、という組み合わせを選ぶ施設もあります。
よくある質問
Q. 小規模な施設でも、採用代行は使えますか。
業務単位で切り出して依頼できるサービスも多いため、規模の小さい施設でも利用自体は可能です。ただし、月額固定型は依頼する業務範囲によっては割高に感じる場合もあるため、まずは従量課金型や、業務を絞った小さい依頼から始めて、効果を見ながら範囲を広げる、という進め方をしている施設もあるようです。
Q. 人材紹介と何が違うのですか。
人材紹介は「合う人を1人紹介してもらい、入職が決まった時点で成功報酬を払う」仕組みです。一方の採用代行は、紹介そのものではなく、求人票の作成から応募者対応まで、採用活動という業務プロセスを代行してもらう仕組みです。人材紹介・求人広告・採用LPそれぞれの費用比較は、別記事で詳しく整理しています。
Q. 採用代行と採用LPを両方頼むと、費用がかさみませんか。
採用LPは基本的に制作時の一括費用で、その後は保守費用程度で運用できる「資産型」の費用構造です。一方の採用代行は依頼している間、継続的に費用が発生する「運用型」の費用構造です。両方を組み合わせる場合も、採用LP自体の費用は一度作れば増減しないため、月々の負担が際限なく膨らんでいくわけではありません。
Q. 採用代行を一度契約したら、採用LPは後からでも作れますか。
順番はどちらが先でも問題ありません。すでに採用代行を利用している施設が、受け皿となるページの弱さに気づいて後から採用LPを作るケースもあれば、まず採用LPで受け皿を整えてから、母集団形成の部分を採用代行に任せるケースもあります。どちらの場合も、それぞれのサービスが独立して機能する形なので、後から組み合わせても支障はありません。
「とりあえず採用」を防ぐには、という視点
採用活動を急いで進めなければならない施設ほど、「とりあえず応募が来たから採用しよう」という判断に流れやすくなります。これは採用代行を使う場合も、自分たちだけで採用活動をする場合も、同じように起こり得ることです。
採用代行を使う場合は、代行会社に「量」を求めるだけでなく、最終的な見極めの部分は施設側でしっかり行う、という役割分担を意識しておくことをおすすめします。母集団を増やすことと、その中から本当に合う人を見極めることは、別の力だからです。
これは、代行会社の姿勢の問題というより、成果指標の作り方の問題です。「何人応募が集まったか」「何人紹介できたか」という数字で評価される仕組みの中では、量を増やす力が強くなるのは自然なことです。だからこそ、施設側は「量」を代行に任せつつ、「質」の最終判断は自分たちで持っておく、という意識を忘れないようにしたいところです。トップクラスの採用実績を持つ代行会社であっても、その実績がそのまま自分の施設に当てはまるとは限りません。施設の規模、地域、募集している職種によって、条件はまったく変わってくるからです。
2つのケースで、具体的に考えてみます
たとえば、慢性的に応募自体が来ない施設があるとします。求人媒体には出稿しているものの、閲覧数もクリック数も少なく、そもそも応募者の目に触れていない状態です。このケースでは、求人媒体の選定や運用のノウハウ自体が不足している可能性が高く、採用代行の母集団形成支援を受けることで、状況が変わる見込みがあります。
一方で、求人媒体からのアクセス自体はそれなりにあるのに、応募や問い合わせにつながらない施設もあります。このケースで採用代行を使い、母集団を増やす方向に力を入れても、受け皿となるページの説得力が変わらなければ、離脱率も変わらない可能性があります。この場合は、まず応募希望者が最初に見るページを見直すことの方が、優先度が高いかもしれません。同じ「応募が来ない」という悩みでも、原因がどちらにあるかによって、有効な打ち手はまったく違ってきます。
まとめ
採用代行は、採用活動という業務そのものを継続的に代行してもらうサービスで、月額固定・成功報酬・従量課金といった料金体系があります。採用LPは、一度作れば資産として残り続ける、応募希望者の受け皿となるページです。どちらが優れているという話ではなく、「応募が来ないこと」が課題なのか、「応募は来ているのに離脱されること」が課題なのか、「業務量そのもの」が課題なのかによって、選ぶべきものは変わってきます。
採用活動は、どうしても「人手が足りないから、とにかく早く埋めたい」という焦りが先に立ちがちです。ですが、焦っている時ほど、自分の施設の課題がどこにあるのかを一度立ち止まって切り分けてみることが、遠回りに見えて一番の近道になることが多いというのが、これまで採用に関わってきた実感です。まずは自分の施設が今どこでつまずいているのか、そこから一度洗い出してみてください。
参考:介護業界向け採用代行(RPO)サービスの料金体系・業務範囲については、複数の採用支援会社の公開情報をもとに、一般的な相場観として整理しました。

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