小規模多機能型居宅介護の看取り連携体制加算。算定要件と1日64単位の仕組み。

小規模多機能型居宅介護の看取り連携体制加算。算定要件と1日64単位の仕組み。 介護

小規模多機能型居宅介護の看取り連携体制加算は、事業所で看取りのケアを行った月に算定できる加算です。1日64単位を最長30日分算定でき、看護職員配置加算(Ⅰ)の算定が算定要件の前提となります。要件・記録の実務・収支への影響を整理します。

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 小規模多機能型居宅介護 収支シミュレーター

看取り連携体制加算とは、人生の最終段階のケアに対する加算

看取り連携体制加算は、医師が「回復の見込みがない」と診断した登録者に対して、本人・家族の理解と同意を得た上で看取りのサービスを提供した場合に算定できます。月単位で算定し、登録者が死亡した月のみ算定できます(前月には遡れません)。

加算の単位数は1日につき64単位です。死亡日以前30日以内の、通い・訪問・宿泊のいずれかのサービスを提供した日に算定します。死亡月にまとめて算定する仕組みです。

算定の前提:看護職員配置加算(Ⅰ)を算定していること

看取り連携体制加算は、看護職員配置加算(Ⅰ)を算定していることが前提です。看護職員配置加算(Ⅰ)を算定していない事業所は算定できません。

小規模多機能型居宅介護の人員基準では看護職員は常勤換算1人以上ですが、看護職員配置加算(Ⅰ)は常勤換算2.5人以上の看護職員を配置する場合に算定できます。看取り対応を事業所の方針にするには、通常の基準を超える看護職員の確保が必要です。

算定要件の4つのポイント

以下の要件をすべて満たしている必要があります。

看取り連携体制加算の算定要件
要件 内容
医師の診断 当該利用者が回復の見込みがない旨を医師が診断していること
本人・家族への説明と同意 看取りの方針について書面で説明し、本人または家族の同意を得ていること
医師・医療機関との連携 24時間連絡・対応できる医師または医療機関との体制があること
サービス計画への記載 看取りに関するケアの方針を個別サービス計画に記載していること

実地指導では、同意書の書式と個別サービス計画への記載が必ず確認されます。同意書のひな形を事前に用意しておくことが実務上のポイントです。

記録・書類:何を残すか

加算を算定した根拠として、以下の記録を残す必要があります。

  • 医師の診断に関する記録:診断内容または医師との連絡記録(診断の事実を記録に残す)
  • 説明・同意書:本人・家族への説明内容と同意の署名
  • 個別サービス計画:看取りの方針と具体的なケア内容を記載
  • 日々のサービス記録:加算算定の対象となる日のサービス提供記録(通い・訪問・宿泊の別)

保管期間は他の書類と同様、事業所の廃止後2年間(条例で延長されている自治体は5年間)です。

収入への影響:最大30日で1,920単位

64単位/日で最長30日分を算定した場合、1人あたり1,920単位です。地域区分(その他・1単位10円)で計算すると19,200円になります。

看取り連携体制加算の試算例(地域区分「その他」・処遇改善加算なし)
算定日数 単位数合計 報酬額(1単位10円)
30日(最長) 1,920単位 19,200円
14日 896単位 8,960円
7日 448単位 4,480円

処遇改善加算(Ⅰ:14.9%)を算定している場合、加算分が上乗せされます。30日算定の場合、処遇改善加算込みの目安は約22,000円です(概算・地域区分「その他」)。

開業時の収支計画では人件費とのバランスを見る

看取り連携体制加算の算定には看護職員配置加算(Ⅰ)が前提のため、常勤換算2.5人以上の看護職員を確保する必要があります。開業初期から手厚い看護体制をとることで看取りの受入れが可能になる一方、看護職員の人件費は固定費として増加します。

加算収入は登録者が亡くなった月にのみ発生するため、毎月安定した収入源ではありません。事業所の方針として看取り対応を前面に打ち出す場合と、求められれば対応する場合では、必要な体制と収支への影響が変わります。開業前に自事業所の方針を決めた上で収支計画を立てることが大切です。

看護職員配置加算(Ⅰ)の要件と単位数

看取り連携体制加算の前提となる看護職員配置加算(Ⅰ)は、常勤換算で2.5人以上の看護職員を配置した場合に算定できます。単位数は月額12,000単位(要介護1〜5共通)です。通常の人員基準(常勤換算1人以上)を超える配置が必要なため、看護職員の採用が先行費用として発生します。

看護職員の確保が難しい地域では、訪問看護事業所や医療機関との協定により看護サービスを補う方法をとる事業所もあります。ただし、加算算定のための「看護職員の常勤換算2.5人以上」は自事業所の雇用が基本であり、外部連携で代替できるかどうかは運営基準の解釈を自治体に確認することが必要です。

看護職員配置加算の区分と単位数(小規模多機能型居宅介護)
加算区分 要件(常勤換算) 月額単位数(要介護1〜5共通)
看護職員配置加算(Ⅰ) 2.5人以上 12,000単位
看護職員配置加算(Ⅱ) 2.0人以上2.5人未満 6,000単位

看護職員配置加算(Ⅱ)(常勤換算2.0人以上2.5人未満)は看取り連携体制加算の前提にはなりません。看取り対応を予定しているなら、開業から(Ⅰ)を算定できる体制を整えるかどうかの判断が重要です。

協力医療機関との連携体制の作り方

算定要件の一つに「24時間連絡・対応できる医師または医療機関との体制」があります。これを満たすために、多くの事業所では近隣の在宅療養支援診療所(在支診)または在宅療養支援病院(在支病)と協力医療機関契約を締結します。

協力医療機関との契約は、看取り連携体制加算の算定だけでなく、事業所全体の医療連携の基盤になります。契約内容には「24時間の電話対応」「往診対応の可否と目安時間」「看取りの方針の共有」などを含めておくことが実務上のポイントです。

  • 在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院の一覧:厚生労働省の施設・事業所検索または各都道府県・市区町村の地域医療情報から探せます
  • 地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当窓口に相談すると、地域の在支診・在支病を紹介してもらえる場合があります

同意書と個別サービス計画の作り方

看取り連携体制加算を算定するには、本人・家族への説明と書面による同意が必要です。同意書には以下の内容を含めることが一般的です。

  • 回復の見込みがない旨の医師の診断(診断した医師名・日付)
  • 看取りの方針(どのような状態になったらどのように対応するか)
  • 入院への対応(本人・家族が望んだ場合の入院先の方針)
  • 疼痛管理・症状緩和への対応方針
  • 事業所の看護・介護体制(24時間対応できる範囲とできない範囲)
  • 説明を受けた本人・家族の署名・日付

厚生労働省が公表している看取り介護に関するガイドライン(「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」)も参考にし、本人の意思を尊重した説明・同意のプロセスを記録することが重要です。

個別サービス計画には、看取りの方針として「〇〇の状態になったら緊急対応する」「入院は本人の意思に従う」といった具体的な記載を入れます。計画作成担当者(介護支援専門員)が記載します。

看取り対応の実際の流れ

看取りに至る実際の流れを整理すると、次のステップになります。

  1. 医師による診断と事業所への情報共有:協力医療機関の医師が「回復の見込みがない」と診断し、その内容を事業所の計画作成担当者・看護職員と共有します
  2. 本人・家族への説明と同意取得:計画作成担当者・看護職員が本人・家族と面談し、同意書への署名を得ます
  3. 個別サービス計画の更新:看取りの方針・対応内容を計画に反映します
  4. 日々のサービス提供と記録:通い・訪問・宿泊のサービスを提供し、その都度記録します
  5. 医師・家族への随時連絡:状態変化のたびに医師・家族に連絡し、方針を確認します
  6. 看取り後の書類整理:死亡後、算定した日数・記録を整理し、介護給付費請求で加算算定します

算定しない選択肢もある

看取り連携体制加算を算定するには看護職員配置加算(Ⅰ)の算定が前提です。開業初期に看護職員が1人(常勤換算1人以上)の体制でスタートする場合、看取り連携体制加算は算定できません。利用者の状態に応じて医療機関や訪問看護事業所と連携する形での看取り対応は可能ですが、加算の算定には一定の体制が必要です。

加算の算定よりも、利用者・家族からの信頼を得ることを優先する運営方針をとる事業所もあります。看取り加算の有無だけでなく、事業所全体の看護体制と方針を合わせて検討することをお勧めします。

実地指導で確認されるポイント

看取り連携体制加算を算定している事業所への実地指導では、以下の点が確認されます。

実地指導で確認される書類と内容
確認書類 確認内容
看護職員配置加算(Ⅰ)の算定根拠 看護職員の常勤換算2.5人以上を証明する勤務表・タイムカード等
同意書 本人・家族の署名・日付・医師の診断内容の記載
個別サービス計画 看取りの方針の記載・計画作成担当者の署名
医師・医療機関との連携記録 協力医療機関との契約書または連絡記録
サービス提供記録 算定日ごとの通い・訪問・宿泊のサービス提供記録

書類の一部でも欠けていると加算の算定取り消しや返還を求められることがあります。算定した利用者ごとに書類をひとまとめに保管しておくと、実地指導時に速やかに提示できます。

よくある疑問:他の看取り加算との違い

介護保険サービスの中には、看取り連携体制加算以外にも「看取り」に関連した加算があります。混同しやすい加算との違いを整理します。

看取り関連加算の比較
加算名 対象サービス 算定条件の概要
看取り連携体制加算 小規模多機能型居宅介護 看護職員配置加算(Ⅰ)の算定が前提・64単位/日
看取り介護加算 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設等の施設系 施設内での看取り介護を提供した場合に算定・単位数は施設種別により異なる
ターミナルケア加算 訪問看護・訪問介護等 死亡日・死亡前14日以内のサービス提供を算定根拠にする加算。訪問看護は2,000単位程度(死亡日)

小規模多機能の登録者が看取りを希望する場合、小規模多機能が看取り連携体制加算を算定する一方で、外部の訪問看護がターミナルケア加算を算定するケースもあります。ただし、小規模多機能の訪問機能で訪問看護に近い看護サービスを提供する体制がある場合は、外部の訪問看護との調整が必要です。

処遇改善加算との関係

看取り連携体制加算は、処遇改善加算(介護職員等処遇改善加算・旧処遇改善加算)の算定基礎には含まれません。処遇改善加算の計算では、看取り連携体制加算の単位数を除いた介護報酬総額に加算率を乗じます。

一方、看護職員配置加算(Ⅰ)の月額12,000単位は処遇改善加算の算定基礎に含まれます。看護職員配置加算(Ⅰ)を算定することで処遇改善加算の総額も増加するため、事業所全体の収入増加効果があります。

収支計画に看取り加算を組み込む場合の注意点

開業前の収支計画で「看取り加算で月次収入を増加させる」という見込みを立てる場合は、現実的な算定頻度を考慮することが必要です。

  • 登録定員29人の事業所で、年間に看取りを経験するのは平均1〜3件程度の場合が多いです
  • 看取り1件あたりの最大加算収入は19,200円(30日・1単位10円)と、収入全体に占める割合は小さくなります
  • 開業初年度から毎月算定できるものではなく、登録者数が増えてから数年後に発生するケースが多いです

収支計画に看取り加算を組み込む際は、保守的な見積もり(年2〜3件・平均15日算定など)で計画を立てることをお勧めします。

参考・出典

  • 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)
  • 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)

この記事は2026年11月時点の告示・通知に基づいています。報酬は改定されることがありますので、最新の告示を確認してください。

福祉事業の開業・運営に関するツールと記事の一覧は福祉事業の開業と運営(入口ページ)にまとめています。収支シミュレーター・経営診断・法定研修キットを無料で試せます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
介護
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました