就労移行支援の個別支援計画。作成義務と記載のポイント。

就労移行支援の個別支援計画は、利用者一人ひとりの就労に向けた目標と支援内容を定めた文書です。指定障害福祉サービスの指定基準(平成18年厚生労働省令第171号 第181条・第182条)に基づいて作成が義務付けられており、就労アセスメントの結果を踏まえた「就労目標の設定」が他の福祉サービスの個別支援計画と異なる特徴です。

この記事では、就労移行支援の個別支援計画の作成義務・就労移行特有の記載ポイント・作成の流れを整理します。

個別支援計画の作成義務:省令171号 第181条

就労移行支援を提供する指定事業所のサービス管理責任者は、利用者ごとに個別支援計画を作成しなければなりません(省令171号 第181条)。

作成に先立ってアセスメントを行い(第181条第1項)、計画の原案を作成のうえ、利用者または家族への説明・文書同意・計画の交付を行います(第181条第4項・第5項)。作成後は定期的なモニタリングと少なくとも6か月に1回以上の見直しが義務です(第181条第7項)。

就労移行支援のアセスメント:就労能力の評価が中心

就労移行支援のアセスメントは、一般就労を目指すための情報収集です。他の障害福祉サービスと比べると、職業適性・就労能力の評価が中心になります。

アセスメントで把握する主な内容

区分 確認事項
就労意欲・希望 どのような仕事がしたいか、就職後の生活の見通し
職業適性・能力 過去の就労・訓練経験、作業能力、体力・持続力
コミュニケーション能力 職場での対人関係、指示の理解、報告・連絡ができるか
生活基盤・健康状態 通勤可能な範囲、体調管理の状況、医療的な支援の必要性
支援環境 家族のサポート状況、利用している他のサービス

アセスメントは利用開始前または利用開始直後に実施します。標準利用期間(最長2年、施行規則 第6条の8)を意識して、2年間で一般就労につながる目標設定を行うことが重要です。

個別支援計画の記載内容

就労移行支援計画に必要な記載項目

記載項目 就労移行支援における内容
総合的な支援の方針 「一般就労の実現」に向けた支援の基本方針
長期目標 「○○年○○月までに、○○業界で一般就労する」等の具体的な就職目標
短期目標(6か月単位) 「ビジネスマナー研修を修了する」「企業実習を1回経験する」等の段階目標
具体的な支援内容 就労準備訓練・職業訓練・ジョブコーチ支援・企業実習の内容と頻度
就職活動支援 ハローワーク同行・応募書類作成支援・面接練習の計画
サービス提供上の留意事項 体調管理の注意点・他機関との連携事項
計画期間 開始日〜見直し予定日(最長6か月)

長期目標には「いつまでに・どんな就職先へ」という具体性が求められます。「就労を目指す」だけでは目標として機能せず、モニタリングで達成状況を確認できません。

就労目標の設定:3年目の報酬変動を意識する

就労移行支援の基本報酬は、前年度と前々年度の「就労定着者の割合」によって7段階に変わります(告示523号 別表第12)。新規事業所の1・2年目は30%以上40%未満の区分(1年目はみなし適用)ですが、3年目以降は実際の定着実績で決まります。

個別支援計画の目標設定は、この就労定着者の割合に直結します。「利用者が一般就労し、6か月以上定着する」件数が多いほど翌年度以降の報酬区分が上がります。計画段階から「就職後の定着支援まで含めた支援の見通し」を持って目標を設定することが事業経営上も重要です。

計画の更新タイミング

就労移行支援の個別支援計画は、少なくとも6か月に1回以上見直します(省令171号 第181条第7項)。また次のタイミングでは計画期間中であっても見直しが必要です。

  • 就職活動を本格的に開始するとき(就職活動期の計画に更新)
  • 企業実習の結果を踏まえて目標を修正するとき
  • 利用者の状態(健康・生活面)が変化したとき
  • 就職が決まったとき(定着支援への引き継ぎ計画に変更)

特に就職が内定した段階では、就職後の生活リズムの準備・職場への引き継ぎ事項・就労定着支援との連携内容を計画に記載しておくことが、定着支援をスムーズにするポイントです。

利用者への説明・同意・交付

計画の原案を作成したら、利用者またはその家族に説明し、文書による同意を得ます(省令171号 第181条第4項)。同意は署名・捺印の形が基本です。

同意を得た後、計画の写しを利用者に交付します(第181条第5項)。計画書の控えは事業所で保管し、見直しのたびに更新します。

モニタリング:進捗確認の頻度と方法

就労移行支援のモニタリングは月1回程度が基本です。就職活動中や就職直後など節目となる時期は頻度を上げて実施します。

モニタリングでは次の点を確認・記録します。

  • 短期目標の達成状況(研修修了・実習完了・応募件数等)
  • 利用者の就労意欲・健康状態の変化
  • 課題となっている点と支援の修正方向
  • 就職活動の進捗(応募・面接の結果)

モニタリング記録は個別支援計画と合わせて、利用終了後5年間保存します(省令171号 第186条)。

サービス管理責任者の役割

就労移行支援のサービス管理責任者は、個別支援計画の作成統括のほか、就労支援員・職業指導員・生活支援員への指示・助言を行います。就労移行支援のサビ管の配置基準は利用者60人以下で1人(省令171号 第175条)です。

サビ管は、就労定着者の実績を把握し、翌年度以降の報酬区分の見通しを管理する役割も担います。担当者会議(利用者・家族・関係機関を交えた会議)を通じて、就職先の選定・企業との調整を進めます。

就労定着支援との連携

就職後に「就労定着支援」を利用する利用者については、就労移行支援の計画終了時に支援情報の引き継ぎが必要です。就職先での業務内容・配慮事項・緊急時の連絡先・家族との連絡方法などを記録し、就労定着支援担当者に伝えます。

就労移行支援利用期間中に計画に記載した支援内容と定着リスク(生活リズムの乱れ・通勤の課題等)の情報が、就職後6か月以上の定着につながります。

まとめ

就労移行支援の個別支援計画は、省令171号 第181条・第182条に基づき、サービス管理責任者が作成します。就労アセスメントと就労目標の設定が他サービスと異なる中心的な作業です。

  1. 就労アセスメント(職業適性・意欲・生活基盤の把握)
  2. 就労目標の設定(長期目標:就職先・期限、短期目標:6か月単位)
  3. 支援内容の計画(訓練・実習・就職活動支援)
  4. 利用者への説明・文書同意・計画書交付
  5. 月1回程度のモニタリング・記録
  6. 6か月に1回以上の計画見直し
  7. 就職決定時:定着支援への引き継ぎ計画の作成
  8. 記録の5年間保存

就労移行支援の開業後の収支試算(定員・稼働率・定着実績による報酬変動のシミュレーション)は、就労移行支援 収支シミュレーターでご確認いただけます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
就労移行支援福祉事業の開業と運営
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました