就労継続支援B型の指定申請、何を・いつまでに準備するか。
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就労継続支援B型を開設するには、都道府県知事(政令市・中核市では市長)から「指定」を受けることが法律上の要件です。指定を受けずにサービスを提供することはできません。指定の手続きは書類の種類が多く、提出から指定通知書の受け取りまで2か月前後かかるのが一般的です。開所予定日から逆算して、いつ何をするかを計画しておく必要があります。
この記事では、指定申請の仕組み、必要な書類の種類、事前相談の進め方、申請スケジュールの組み方、よくある指摘事項、指定後に必要な手続きを順に整理します。
指定申請の根拠は障害者総合支援法第36条
就労継続支援B型のサービス提供事業者になるためには、都道府県知事の指定を受ける必要があります(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律、以下「障害者総合支援法」第29条・第36条)。
第36条は指定の基準を定めており、申請者が次の要件をすべて満たすことを求めています。
- 法人であること(個人事業主は申請できない)
- 人員基準を満たしていること(指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第186〜192条)
- 設備基準を満たしていること(同省令第191条)
- 運営基準を満たしていること(同省令第193〜205条)
申請先は、事業所の所在地を管轄する都道府県の障害福祉担当部署です。政令指定都市(例:大阪市・名古屋市)や中核市(例:宇都宮市・岐阜市)では、市が指定権限を持つため、市の担当課への申請になります。管轄先は事前に確認してください。
申請に必要な書類の主な種類
指定申請に必要な書類は、都道府県によって様式や要求内容が異なります。以下は多くの都道府県で共通して求められる主な書類です。申請前に管轄の担当窓口から最新の申請の手引きを入手し、必要書類の一覧を確認してください。
法人の基本書類
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 指定申請書 | 都道府県が定める様式。事業所名・所在地・サービスの種類・開設予定日などを記載する |
| 定款(または寄附行為) | 法人の目的に「障害福祉サービス事業」が明記されていることが条件。明記がない場合は定款変更が必要 |
| 登記事項証明書 | 法務局が発行する法人の登記証明書。発行から3か月以内のものを求められることが多い |
| 役員名簿・誓約書 | 理事等の氏名・住所の一覧。欠格事由(禁錮以上の刑・障害者虐待等)に該当しないことの誓約書 |
事業所の運営に関する書類
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 運営規程 | 事業の目的・運営方針・従業者の職種と員数・利用定員・サービスの内容・利用者負担額等を定めた規程。省令第194条の必要記載事項を漏れなく盛り込む |
| 利用者との契約書(ひな型) | 利用者またはその保護者と締結する重要事項説明書・契約書のひな型 |
| 平面図 | 事業所の各室の用途・面積を記載した図面。訓練・作業室(利用者1人あたり2.5平方メートル以上・省令第191条)の面積が分かること |
| 設備一覧 | 必要な設備(訓練・作業室・相談室・洗面所・便所)の整備状況の一覧 |
| 建物の使用権限を示す書類 | 賃貸借契約書のコピーまたは自己所有の場合は登記事項証明書 |
人員に関する書類
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 人員配置体制等一覧表 | 職種別の配置人数・常勤・非常勤の別・専従・兼務の別を一覧にした表 |
| 勤務形態一覧表 | 各職員の週の勤務時間・担当曜日等を記載した表。常勤換算の根拠となる |
| サービス管理責任者の経歴書・資格証明書 | 実務経験(障害者支援の直接業務5年以上等)の経歴書と、研修修了証のコピー。都道府県が実務経験の期間を確認するため、業務内容の詳細な記載が求められることが多い |
| 各職員の資格証明書・雇用契約書 | 職業指導員・生活支援員の雇用関係を示す書類。既存法人からの配置転換の場合は辞令や配置証明 |
書類の不備や記載漏れは、申請の差し戻し・審査期間の延長につながります。特に運営規程の必要記載事項の漏れと、サービス管理責任者の実務経験の確認不足は、多くの都道府県でよく指摘される点です。
事前相談は申請の3〜4か月前が目安
ほとんどの都道府県では、指定申請書を窓口に提出する前に「事前協議」または「事前相談」の機会を設けています。開所予定日の3〜4か月前を目安に、管轄の担当課へ連絡して事前相談の予約を取ってください。
事前相談では主に次のことを確認します。
- 申請書類の一覧と様式の入手方法
- 事業所の所在地が指定申請の対象区域に含まれるか(総量規制の確認)
- 人員配置の考え方(常勤換算の計算方法・兼務制限)
- 設備基準の確認(面積・室数・バリアフリー対応等)
- 書類の提出期限と審査スケジュール
都道府県によっては、事前相談の段階で運営規程の草稿や平面図の下書きを確認してもらえる場合があります。本提出前に担当者から指摘を受けておくと、差し戻しのリスクを減らすことができます。事前相談で聞いた内容は、担当者名・日付とともに必ず記録しておいてください。
申請スケジュールは開所予定月から逆算して組む
指定申請は提出から指定通知書の受け取りまで、審査に2か月前後かかるのが一般的です。ただし都道府県によって審査期間は異なります。開所を予定する月の2か月前より前に書類を提出できるよう、逆算してスケジュールを組んでください。
| 時期の目安 | やること |
|---|---|
| 開所予定の6か月以上前 | 法人設立(定款認証・登記)。定款の事業目的に障害福祉サービス事業が含まれているか確認。含まれていない場合は定款変更から始める |
| 開所予定の4〜5か月前 | 物件の確保。設備基準(訓練・作業室の面積・相談室・洗面所・便所)を満たせるか確認。改修が必要な場合はこの時期に着手 |
| 開所予定の3〜4か月前 | 管轄の担当課へ連絡し事前相談の予約を取る。事前相談で書類一覧・様式・審査スケジュールを確認。サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員の採用を開始 |
| 開所予定の2〜3か月前 | 申請書類の作成。運営規程・重要事項説明書・各種様式を作成。担当課に書類の下書きを確認してもらえる場合は確認を依頼 |
| 開所予定の2か月前(目安) | 申請書類一式を提出。都道府県によって提出期限が異なるため、担当課の指定する期限を必ず確認する |
| 開所予定の1か月前〜前日 | 指定通知書を受け取る。国保連への加入手続き。市区町村への受給者証の確認体制の準備。開所に向けた内部研修・記録様式の準備 |
| 開所 | サービス提供開始。初月は受付・アセスメント・個別支援計画の作成が集中する |
この表のスケジュールはあくまで目安です。都道府県によっては書類提出から指定通知まで3か月以上かかる場合もあります。開所予定日が決まったら、まず管轄の担当課に審査スケジュールを確認し、そこから逆算して計画を立ててください。
よくある指摘事項と対処法
指定申請の審査で指摘を受けやすい点を整理します。事前相談の段階で確認しておくと、差し戻しのリスクを減らすことができます。
設備基準の確認漏れ
就労継続支援B型の設備基準(省令第191条)は次のとおりです。
- 訓練・作業室:利用者1人につき2.5平方メートル以上(利用定員10人の場合、25平方メートル以上が必要)
- 相談室:間仕切り等でプライバシーを確保できる構造であること
- 洗面所・便所:利用者が使用するのに適した設備
物件を選定する際、訓練・作業室として使う部屋の面積が利用定員と照らして基準を満たすか確認してください。廊下や収納スペースは面積に含めない場合があります。測り方の解釈は都道府県によって異なるため、平面図を持参して事前相談で確認するのが確実です。
サービス管理責任者の実務経験の確認
サービス管理責任者になるためには、一定の実務経験と研修の修了が必要です(省令第186条第2項・別表第1)。実務経験の要件は、従事した業務の種類によって異なります。
申請書類では経歴書に業務内容・雇用形態・従事年数を具体的に記載します。「障害者支援施設勤務」などの記載だけでは要件確認が難しく、担当者から追記を求められることがあります。担当した業務の具体的な内容(例:「知的障害者の生活支援業務に直接従事」)まで記載しておくと審査がスムーズです。
運営規程の記載漏れ
運営規程には省令第194条が定める記載事項をすべて盛り込む必要があります。記載が必要な主な項目は次のとおりです。
- 事業の目的・運営方針
- 従業者の職種・員数・職務内容
- 利用定員
- 指定就労継続支援B型の内容
- 利用者から受領する費用の種類・額
- 通常の事業の実施地域
- サービスの利用に当たっての留意事項
- 緊急時等における対応方法
- 虐待防止のための措置に関する事項
- その他運営に関する重要事項
市販のひな型をそのまま使う場合でも、定員・料金・実施地域など事業所固有の情報を正確に書き直す必要があります。ひな型の変更箇所の書き換え漏れは、よくある指摘事項のひとつです。
人員配置の常勤換算の計算ミス
就労継続支援B型の人員基準(省令第186条)では、職業指導員・生活支援員の合計が利用者数に対して一定の常勤換算数以上であることが求められます。常勤換算は「1週間の勤務時間の合計 ÷ 事業所が定める常勤職員の1週間の勤務時間」で計算します。
パートタイム職員を複数配置する場合、それぞれの週の勤務時間を合算して常勤換算数を計算します。勤務形態一覧表の記載が実際のシフトと食い違っていると、審査で指摘を受けます。雇用契約書に記載された週の所定労働時間と一覧表の数字が一致していることを確認してください。
指定後に必要な手続き
指定通知書を受け取った後も、開所前後にいくつかの手続きがあります。
国保連への加入手続き
障害福祉サービスの給付費は、国民健康保険団体連合会(国保連)を通じて請求します。指定を受けた後、事業所の所在地を管轄する国保連に加入し、請求のための電子証明書・請求ソフトの準備を行います。請求は月ごとの締め・支払いサイクルで行われ、サービス提供月の翌月10日までに請求する必要があります(支払いは翌々月20日前後)。
市区町村への事業所情報の提供
サービスを利用する方は市区町村が発行する受給者証を持っています。市区町村の担当窓口に事業所の開設を連絡し、支給決定や計画相談との連携体制を確認しておくと、最初の利用者受け入れがスムーズになります。
福祉・介護職員等処遇改善加算の届出
処遇改善加算を算定する場合は、算定を開始する年度の前月末(4月算定開始なら3月末)までに体制等届出書を都道府県に提出する必要があります。開所直後から算定したい場合は、指定申請と並行して加算の要件(就業規則・賃金規程の整備等)を準備してください。
工賃支払計画の準備
就労継続支援B型では、利用者に生産活動の対価として工賃を支払う義務があります(省令第201条第1項・最低工賃月額3,000円以上)。開所前に生産活動の内容・工賃の計算方法・支払いサイクルを定め、工賃台帳の様式を準備しておきます。
指定申請は「書類を集める」前に「要件を確認する」
指定申請でよく起きるつまずきは、物件を借りてから「設備基準を満たしていない」と気づくケースや、採用した予定者が「サービス管理責任者の要件を満たしていない」と判明するケースです。書類を集め始める前に、設備基準・人員基準の要件を確認し、物件と人材がその要件を満たすかを先に確かめる順序で進めてください。
申請スケジュールは都道府県によって異なります。管轄の担当課が公表している「指定申請の手引き」や「申請の流れ」を入手し、提出期限と審査期間を確認することが、スムーズな開設への第一歩です。
まとめ
就労継続支援B型の指定申請は、障害者総合支援法第36条に基づき、都道府県知事(政令市・中核市では市長)に対して行います。申請に必要な主な書類は、定款・登記事項証明書・運営規程・人員配置体制等一覧表・勤務形態一覧表・サービス管理責任者の経歴書・平面図等です。提出から指定通知書の受け取りまで2か月前後かかるため、開所予定月から逆算して、3〜4か月前の事前相談、2か月前の書類提出を目安にスケジュールを組みます。よくある指摘事項は、訓練・作業室の面積確認、サービス管理責任者の実務経験の記載不足、運営規程の記載漏れ、人員配置の常勤換算ミスです。指定後は国保連への加入・処遇改善加算の届出・工賃支払計画の準備を行い、開所に備えます。
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出典:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)第29条・第36条。指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第186〜192条・第194条・第201条。作成日:2026年10月。


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