就労継続支援B型のヒヤリハット、作業中の記録様式と研修への活用方法。

就労継続支援B型のヒヤリハット、作業中の記録様式と研修への活用方法。 福祉事業の開業と運営





就労継続支援B型のヒヤリハット、作業中の記録様式と研修への活用方法。


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就労継続支援B型では、製造・梱包・農作業・清掃など生産活動を行う中で、事故に至りかけた出来事(ヒヤリハット)が起きます。ヒヤリハットは記録して集計し、研修のテーマに活かすことで、作業中の事故を未然に防ぐことができます。

この記事では、B型の作業で起きやすいヒヤリハットの場面、記録票の書き方、月次集計の方法、研修への活用手順を整理します。

ヒヤリハットの法的根拠は、指定基準第84条(第202条で準用)

就労継続支援B型の安全管理の根拠は、指定基準第84条(第202条で準用)です。第84条では、利用者が安全に生産活動を行えるよう、障害の特性をふまえた工夫をすること、防塵・消火設備などの安全上の措置を講じることが求められています。

ヒヤリハットの記録と分析は、この「安全上の措置」の一部として位置づけられます。発生した事実を積み上げて改善に活かすことが、指定基準の趣旨に沿った対応です。

B型の作業で起きやすいヒヤリハットの場面

B型の生産活動の内容は事業所によって異なりますが、共通して起きやすいヒヤリハットの場面があります。

場面 具体的な出来事の例
作業台・通路 床に落ちた資材に足をとられてよろけた。通路に荷物が出ていて当たりそうになった
工具・刃物 カッターを使っていて指の方向に刃が滑った。ハサミを置いた場所から落ちた
重量物の運搬 段ボール箱を持ち上げた際にバランスを崩した。台車が急停止して荷物が崩れそうになった
機械・電動工具 シーラーに指が近づきすぎた。印刷機の紙送りで手が引き込まれそうになった
農作業・屋外作業 土の斜面で足が滑りそうになった。農機具の向きを変えた際に他の利用者に近づきすぎた
清掃・洗浄 洗剤で床が濡れていて滑りそうになった。高所の窓ふきでバランスを崩した
送迎中 乗降時に足元に段差があって転倒しそうになった。シートベルト未着用のまま発車しかけた

作業内容によって起きやすい場面が変わるため、各事業所の実際の作業を念頭に置いて洗い出します。

ヒヤリハット記録票に書く5つの項目

ヒヤリハットが起きたら、気づいた職員がその日のうちに記録票に書きます。記録票には最低でも次の5項目を含めます。

  • 発生日時・場所(何月何日・何時ごろ・作業場のどのエリアか)
  • 当事者(利用者・職員・その両方)
  • 起きた出来事(「何をしていたときに、どうなりそうになったか」を具体的に)
  • その場の対応(その場でどう対処したか)
  • 考えられる原因(なぜそれが起きたか・環境・手順・健康状態など)

「転びそうになった」ではなく「通路に段ボール箱が出ていて、右足がつまずいた」のように具体的に書くと、原因の分析と対策の検討に使いやすくなります。

利用者名は記録に含めますが、外部への共有時は匿名化します。記録票は事故記録とは別に保管します。

月1回の集計で、同じ場面を洗い出す

ヒヤリハット記録票は、月に1回、担当者または管理者が集計します。集計では次の2点を確認します。

  • 同じ場所・同じ作業でのヒヤリハットが複数件ないか(環境や手順の問題がある可能性)
  • 同じ利用者・職員に関するヒヤリハットが続いていないか(個別の配慮が必要な状態か)

集計の結果は、ミーティングや研修で共有します。「先月3件あった作業台でのよろけ」のように件数と場面を示すと、職員が具体的なイメージを持ちやすくなります。

ヒヤリハットを研修のテーマにする手順

月次集計で同じ場面が続いていたり、重大な事故に近い内容があったりする場合は、研修のテーマとして取り上げます。研修での進め方は次のとおりです。

  1. 事例を共有する:「先月、○○作業中にこういう出来事がありました」と具体的な場面を提示する(個人が特定されない形で)
  2. 原因を考える:なぜ起きたのか・環境・手順・体調・連絡のタイミングなど複数の視点から出し合う
  3. 改善策を決める:環境の変更(通路の幅・物の置き場所)・手順の見直し・個別配慮の追加など、具体的に何をするかを決める
  4. 改善策を記録して実行する:決めた改善策を議事録に残し、実行後に効果を確認する

研修の目的は「担当者を責める」ことではなく「次の事故を防ぐ環境を作る」ことです。誰でも報告しやすい空気を職場全体で作ることが、ヒヤリハット収集の土台になります。

事故発生との違い:ヒヤリハットは行政への報告義務がない

実際に利用者が負傷した事故は、指定基準第40条に基づいて市区町村などへの報告義務があります。一方、ヒヤリハット(事故に至らなかった出来事)については行政報告の義務はありません。ただし、内部での記録・分析・改善の義務は存在します(第84条の安全管理の観点から)。

ヒヤリハットの記録が積み上がって分析されている事業所は、事故発生後の運営指導でも「予防の取り組みを行っていた」という証明になります。

まとめ

就労継続支援B型のヒヤリハット管理は、指定基準第84条(第202条で準用)の安全管理義務の一部です。作業台・工具・重量物・農作業・送迎中など、B型固有の場面でヒヤリハットが起きやすいことを職員全員で認識します。記録票に発生日時・当事者・出来事・対応・原因を書き、月1回集計して同じ場面を洗い出します。件数が多い場面は研修のテーマとして取り上げ、環境の改善・手順の見直しにつなげます。

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出典:指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第40条・第84条・第202条。解釈通知(厚生労働省障発第1206001号)。作成日:2026年10月。


この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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