訪問介護の褥瘡予防研修、在宅でヘルパーが発見すべきリスクと対応手順。

介護

褥瘡(じょくそう)は、身体の一部に持続的な圧迫が加わることで皮膚・皮下組織が損傷する状態です。在宅の高齢者では、寝たきりや移動困難な状態が続くことで発生リスクが高まります。

訪問介護員は、医療行為として褥瘡を治療することはできません。しかし、褥瘡の発生を予防すること・早期に気づいて報告することは、ヘルパーの重要な役割です。特に独居の利用者では次の訪問日まで発見が遅れると重症化するリスクがあり、施設と異なり訪問介護のケアが「最初で唯一の観察機会」になる場面が多くあります。この記事では、訪問介護の研修で伝えるべき褥瘡予防の知識と、実際の訪問時の確認ポイントを整理します。

褥瘡が起きやすい場所と発生メカニズム

褥瘡は、骨が突出している部位に圧迫が集中することで発生します。自分で体位を変えられない利用者では、同じ部位に長時間圧力がかかり続けます。

体位 褥瘡が起きやすい部位
仰臥位(あおむけ) 仙骨部(お尻の中心)・後頭部・肩甲骨・かかと
側臥位(横向き) 耳・肩・大転子(股関節の外側の骨)・膝の内側・くるぶし
座位(車いす・椅子) 坐骨部(座ったときに当たる骨)・仙骨部・足底

圧迫のほか、皮膚の湿潤(汗・失禁による蒸れ)・栄養状態の低下・皮膚の脆弱性(加齢による薄さ)が重なると発生リスクが高まります。

褥瘡の深達度分類を確認しておく

褥瘡の状態は深さによって分類されます。日本褥瘡学会のガイドラインでは、ステージ1〜4に加えDTI(深部組織傷害疑い)・分類不能を含む6カテゴリーが用いられます。ヘルパーが早期に気づくほど、軽い段階で対処できます。

分類 皮膚の状態 発見時の対応
ステージ1 皮膚は損傷していないが、持続する発赤(赤み)がある。指で押しても白くならない 発見・記録・報告。体圧分散の対応(体位変換)を強化する
ステージ2 皮膚の表層が剥がれ、浅い潰瘍や水疱がある 記録・報告・医療専門職への連絡。ヘルパーは処置しない
ステージ3 皮下組織まで達した深い潰瘍。壊死組織が見られることがある 記録・報告・医師・訪問看護師への連絡。医療対応が必要
ステージ4 骨・腱・筋肉が露出するほどの深い壊死 緊急対応。医師・訪問看護師へ即時連絡
DTI(深部組織傷害疑い) 表面の皮膚は損傷していないが、内部(皮下組織・深部)で損傷が起きている疑いがある状態。紫色・栗色に変色する場合がある 記録・報告。皮膚の色の変化に気づいたら速やかに報告する
分類不能 壊死組織(黒色・黄色)で覆われていて、深さが判定できない状態 記録・報告・医師・訪問看護師への連絡

ヘルパーが特に気づくべきはステージ1とDTIです。「赤みがある」「皮膚の色が紫っぽく変わった」「押しても白くならない部分がある」という観察が早期発見につながります。ステージ2以降・DTI・分類不能の処置はヘルパーの業務範囲外です。

訪問介護員ができる褥瘡予防の行為

訪問介護員が行える褥瘡予防の行為と、医療専門職の役割の境界を確認します。

行為 訪問介護員の対応
体位変換(寝返り介助) 可能。同じ姿勢が2時間以上続かないよう体位を変える
クッション・ポジショニングピローを使った体圧分散 可能。利用者・家族・ケアマネジャーの指示に従って使用する
皮膚の清潔保持(陰部洗浄・清拭) 可能。失禁後の皮膚の汚れを速やかに除去する
皮膚の観察(発赤・損傷の確認) 可能。ケアの中で観察し、変化を記録・報告する
保湿ケア(保湿クリームの塗布) 可能。利用者・家族が準備した保湿剤を使用する(医師の指示がある場合はそれに従う)
褥瘡の洗浄・ガーゼ交換・薬の塗布 不可。医師・看護師の業務。発見したら報告する
体圧分散マット・エアマットの設定変更 原則不可。設定変更は医師・看護師の指示に従う

体位変換の基本

褥瘡予防で最も効果的なケアのひとつが定期的な体位変換です。一般に2時間ごとの体位変換が目安とされますが、利用者の状態・使用しているマットの種類(体圧分散マットを使用している場合は間隔を変えることがある)によって異なります。ケアプランの指示に従ってください。

体位変換の注意点

  • 皮膚を引きずらない(シーツとの摩擦・ずれが皮膚損傷の原因になる)。体を持ち上げてから移動させる
  • 骨突出部(かかと・くるぶし・大転子など)が直接シーツに当たらないようクッションを入れる
  • 側臥位にするとき、仙骨・大転子に体重が集中しないよう30度程度の傾きにとどめる
  • 体位変換後は、骨突出部に発赤・皮膚の変化がないか確認する

失禁・湿潤への対応

失禁による皮膚の湿潤は、褥瘡と似た「スキンテア(皮膚裂傷)」や皮膚炎の原因にもなります。失禁を発見したら速やかに陰部洗浄・清拭を行い、皮膚を清潔・乾燥した状態に保ちます。

  • 皮膚を強くこすらない(高齢者の皮膚は薄く、摩擦で損傷しやすい)
  • 洗浄後は水分をやさしく押さえて拭き取る
  • 皮膚の観察を合わせて行い、発赤・剥がれ・出血があれば記録・報告する

褥瘡リスクが高い利用者の確認ポイント

次のような状態の利用者は特に褥瘡のリスクが高く、訪問のたびに皮膚状態を意識して観察します。

  • 自力での体位変換が困難(寝たきり・重度の下肢麻痺)
  • 低栄養・体重が極端に少ない
  • 失禁が頻繁(常に湿潤状態になりやすい)
  • 糖尿病がある(末梢循環障害・創傷治癒の遅延)
  • 浮腫(むくみ)がある部位の皮膚は特に損傷しやすい

訪問時に発見した変化の報告・記録の仕方

皮膚の変化を発見したときは、次の情報を記録して管理者へ報告します。

  • 部位:どこに(右のかかと・仙骨部など)
  • 大きさ・外観:赤み・水疱・傷の有無、おおよその大きさ
  • いつ気づいたか:今日気づいた、先週から変化している、など
  • 利用者の訴え:痛みがある・気になっていた、など

「前回も気づいていたが報告しなかった」という状況は、処置の遅れにつながります。気になったその日に記録・報告することが大切です。

褥瘡予防研修の記録管理をキットで行う

訪問介護向け法定研修・訓練キット(https://fufumumu-design.com/kenshu-kit-houmon/)の有料版(14,800円買い切り)には、褥瘡予防の研修資料(体位変換の手順・発生部位と観察ポイント・体圧分散の考え方)・確認テスト・受講記録が含まれます。職員がスマートフォンから受講し、事業所は受講状況をまとめて確認できるため「記録を後から集める」手間が不要になります。

無料版では虐待防止の1テーマを利用できます。褥瘡予防を含む12テーマすべての利用には有料版が必要です。

あわせて読みたい:訪問介護の法定研修、何を何回やればいいか。

あわせて読みたい:訪問介護の高齢者の特性と安全な介助研修、加齢変化とリスクの対処方法。

この記事で確認した根拠

  • 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
  • 日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン」(褥瘡分類の参照)
  • 厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」
この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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