医療的ケア児とは、人工呼吸器・たん吸引・経管栄養などの医療的処置を日常的に必要とする子どものことです。2021年9月に施行された「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(以下、医療的ケア児支援法)は、地方公共団体に対して保育所・学校・障害児通所支援事業所等における医療的ケア児の受け入れ体制整備を進める責務を課しています。
事業所への直接の受け入れ義務は法律上ではなく指定通所支援基準の安全管理・事故発生防止規定に由来しますが、法律の趣旨として医療的ケア児が通所できる環境づくりが社会全体に求められており、受け入れ体制の整備と職員研修の実施が重要です。
医療的ケア児支援法および指定基準が求める主な対応
| 要件の内容 | 根拠・備考 |
|---|---|
| 医療的ケア児を受け入れる場合の看護職員(看護師・准看護師)の配置 | 指定通所支援基準・医療連携体制加算の算定要件 |
| 個別支援計画への医療的ケアの内容の記載と保護者・医療機関との共有 | 指定通所支援基準 個別支援計画に関する規定 |
| 医療的ケアを実施できる職員(喀痰吸引等研修修了者)の確保 | 社会福祉士及び介護福祉士法(喀痰吸引等の制度) |
| 緊急時対応手順の整備と職員への周知 | 指定通所支援基準 事故発生防止規定 |
| 医療的ケアに関する職員研修の実施 | 事故発生防止・安全管理研修の一環として |
(出典:医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3年法律第81号)・指定通所支援基準)
医療的ケアの主な種類
| ケアの種類 | 内容・注意点 |
|---|---|
| 喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内) | 看護師または喀痰吸引等研修(3号研修を含む)修了者が実施。個別の手順書が必要 |
| 経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管) | 実施手順・注入速度・チューブの固定状況を毎回確認。嘔吐・チューブ抜去時の対応手順も整備する |
| 人工呼吸器管理 | 看護師の配置が必須。アラームの種類と対応・停電時のバッテリー確認手順を整備する |
| 導尿・ストーマ管理 | 担当職員が手順を理解し、プライバシー配慮のある場所で実施 |
| 発作時の薬(坐剤・口腔用液等)投与 | 医師の指示書・保護者の同意書が必要。薬の種類・投与条件は個別対応で、主治医・保護者と事前に手順を確認する。使用可否の判断は医師の指示に従う |
医療連携体制加算の概要
医療的ケア児を受け入れ、看護職員を配置する場合は「医療連携体制加算」を算定できます。区分の例を示します(令和6年度報酬改定時点。最新の単位数は自治体・厚生労働省の通知を確認)。
| 区分 | 算定のめやす |
|---|---|
| 医療連携体制加算I | 看護職員を32時間以上/週配置し、医療的ケアが必要な子どもを受け入れる |
| 医療連携体制加算II | 看護職員を32時間未満/週配置し、医療的ケアが必要な子どもを受け入れる |
| 医療連携体制加算IV | 看護職員が医療機関等と連携して医療的ケアを行う場合(事業所内配置でない場合) |
加算の区分・単位数・算定要件は自治体・指定権者によって解釈が異なる場合があります。受け入れ前に指定権者に確認します。
看護師・喀痰吸引等研修修了者の確保
看護職員の配置:医療的ケア児(特に人工呼吸器使用)を受け入れる場合、看護師または准看護師の配置が実質的に必要です。常勤での採用が難しい場合は、訪問看護ステーションとの医療連携体制を構築する方法もあります。
喀痰吸引等研修(3号研修):特定の利用者に対する喀痰吸引・経管栄養を介護職員(保育士・支援員等)が行うための研修制度です。研修を修了し認定証を取得した職員は、医師の指示・手順書に基づいて医療的ケアを実施できます。在籍する子どもの状態に応じた研修の受講を年間計画に組み込みます。
研修で扱う内容
医療的ケアの基礎知識の共有:在籍する子どもが必要としているケアの種類・手順・注意点を、担当職員だけでなく全職員が概要として把握します。直接ケアを担当しない職員が急変に最初に気づく場面もあります。
緊急時対応フローの確認:人工呼吸器のアラーム・胃ろうチューブの抜去・けいれん発作など、緊急事態が起きたときに誰が何をするかを手順として確認します。看護職員がいる時間帯といない時間帯で対応が変わる場合は両方のフローを整備します。
保護者・医療機関との連携手順:施設でケアを実施する際は、保護者からの「医療的ケア実施の同意書」と医師からの「指示書」が必要です。書類の取得タイミング・更新・保管の手順を職員間で共有します。
停電・災害時の対応:人工呼吸器使用児が在籍している場合、停電時のバッテリー確認・電力会社への登録・避難先での電源確保を BCP(業務継続計画)に明記しておきます。
医療的ケア児を受け入れる前に整備すること
- 主治医・訪問看護・保護者を交えた「受け入れカンファレンス」の実施
- 個別支援計画への医療的ケアの内容の記載
- 医師の指示書・保護者の同意書の取得と保管(年度ごとに更新)
- 看護師・喀痰吸引等研修修了者の配置または連携体制の確保
- 必要な医療機器・消耗品の準備と補充手順の確立
- 緊急時対応フローの文書化と全職員への周知
記録として残すもの
- 研修の実施記録(実施日・内容・参加職員名・受講確認サイン)
- 医療的ケア実施記録(実施日時・担当者・内容・子どもの状態)
- 医師の指示書・保護者の同意書(年度ごとに更新)
- 喀痰吸引等研修修了者の認定証のコピー
- 緊急時対応の実績記録(発生日時・内容・処置・報告先)
記録の保存期間は一般的に「完結の日から5年間」が目安です。
法定研修・訓練のキットを使う
放課後等デイサービス・児童発達支援向けの安全管理・事故発生防止・緊急時対応テーマの教材・確認テスト・記録様式を収録した研修キットを公開しています。
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出典:医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3年法律第81号)・指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準・社会福祉士及び介護福祉士法(喀痰吸引等の制度)・厚生労働省「障害児通所支援の報酬・基準について」(令和6年度報酬改定)。


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