カリウム(K)とナトリウム(Na)は第3類危険物の中でも指定数量10kgという最少クラスの危険物です。空気中で自然発火し、水と激しく反応して水素を発生させる自然発火性・禁水性の両方を持ちます。危険物取扱者乙3の試験で必ず出題される最重要テーマです。
カリウムとナトリウムの基本情報
| 項目 | カリウム(K) | ナトリウム(Na) |
|---|---|---|
| 原子番号 | 19 | 11 |
| 分類 | アルカリ金属 | アルカリ金属 |
| 指定数量 | 10kg(危険等級I) | 10kg(危険等級I) |
| 自然発火性 | あり | あり |
| 禁水性 | あり | あり |
| 融点 | 63.5℃ | 97.8℃ |
| 比重 | 0.86(水より軽い) | 0.97(水より軽い) |
| 色・外観 | 銀白色の柔らかい金属 | 銀白色の柔らかい金属 |
| 保管方法 | 石油(灯油)中 | 石油(灯油)中 |
両物質とも水より密度が低く(比重が1未満)、水に浮きます。水に浮いて反応するため、水中では激しく動き回りながら反応・発火します。
カリウムの水との反応
カリウムは水と激しく反応して水酸化カリウムと水素を発生させます。
2K + 2H₂O → 2KOH + H₂↑
この反応は発熱反応であり、発生した水素が自然発火して紫色の炎を上げます(カリウムの炎色反応は紫色)。反応速度はナトリウムより激しく、少量でも爆発的に反応することがあります。
ナトリウムの水との反応
ナトリウムも同様に水と反応します。
2Na + 2H₂O → 2NaOH + H₂↑
発生した水素が燃焼して黄色の炎を上げます(ナトリウムの炎色反応は黄色)。カリウムより反応速度はやや遅いですが、依然として非常に危険な反応です。
カリウムとナトリウムの空気中での反応
両物質は空気中でも酸素・水分(湿気)と反応します。
- 酸素との反応:カリウムはK₂O₂(過酸化カリウム)やKO₂(超酸化カリウム)を生成します。ナトリウムはNa₂O・Na₂O₂を生成します。
- 水蒸気との反応:空気中の水分(湿気)でも徐々に反応が進みます。
この酸化反応は発熱反応であるため、反応が進むと温度が上昇し、最終的に自然発火につながります。長期保管したカリウム・ナトリウムは表面に酸化物が蓄積しており、特に危険です。
カリウムとCO₂の反応(試験頻出)
カリウムは二酸化炭素(CO₂)とも反応します。これが「CO₂消火器を使ってはいけない」理由です。
4K + 3CO₂ → 2K₂CO₃ + C(炭素)
この反応も発熱し、反応で生成した炭素が燃焼して火災を拡大させます。試験では「カリウムの消火にCO₂消火器を用いることはできない。理由を答えよ」という形でも問われます。
保管方法:なぜ灯油中なのか
カリウム・ナトリウムを石油(灯油)中で保管する理由は、空気・水分との接触を完全に遮断するためです。
- 灯油は水に溶けず、金属との反応がほとんどない。
- 金属を完全に液体に沈めることで、空気(酸素・水分)が金属表面に触れない状態を維持できる。
- 使用時は灯油から取り出し、乾燥した状態で素早く切断・計量などの作業を行う。
注意点として、灯油中でも長期保管すると金属表面が徐々に酸化物を形成することがあります。古い試料を取り出す際は、表面に付着した酸化物の存在に注意が必要です(酸化物は衝撃・摩擦で爆発することがある)。
正しい消火方法
カリウム・ナトリウムの火災への消火方法は限られています。
| 消火方法 | 使用可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 乾燥砂 | 使用可 | 窒息効果で消火する。反応なし。 |
| 膨張ひる石・膨張真珠岩 | 使用可 | 同様の窒息効果。 |
| 水・水道水 | 使用不可 | 激しく反応して水素を発生・発火が拡大。 |
| 泡消火剤 | 使用不可 | 水分を含むため不可。 |
| 強化液消火剤 | 使用不可 | 水分を含むため不可。 |
| CO₂消火器 | 使用不可 | CO₂と反応して炭素を生成し、火災が拡大。 |
| ハロゲン化物消火器 | 使用不可 | ハロゲンとも反応するため不可。 |
実質的に使える消火方法は乾燥砂・膨張ひる石・膨張真珠岩のみです。
カリウム・ナトリウムの主な用途
危険な物質ですが、産業上の重要な用途があります。
- カリウム:Na-K合金(液体金属。原子炉の冷却材に使用)・有機合成の還元剤・農薬(硝酸カリウムの原料)
- ナトリウム:有機合成の還元剤・ナトリウム灯(道路照明)・冷凍機の熱媒体
こうした工業上の用途で取り扱う場所には危険物取扱者の資格が必要です。
試験で問われるポイントのまとめ
| 問われる内容 | 答え |
|---|---|
| カリウム・ナトリウムの指定数量 | 10kg(危険等級I) |
| 水との反応で発生するもの | 水素(H₂) |
| 正しい保管方法 | 石油(灯油)中に沈める |
| 正しい消火方法 | 乾燥砂・膨張ひる石 |
| 使用不可な消火方法 | 水・泡・CO₂・ハロゲン化物 |
| カリウムの炎色反応 | 紫色 |
| ナトリウムの炎色反応 | 黄色 |
カリウム・ナトリウムの切断と使用の注意点
カリウム・ナトリウムは必要量だけを切り取って使用します。切断は石油中から取り出した直後に素早く行い、切断面が空気・水分に触れる時間を最小限にします。
- 切断には金属製のスパチュラ・ナイフを使う(プラスチック製は不可)。
- 切断後は切断面を確認し、金属光沢(銀白色)がある新鮮な面であることを確認する。
- 使用しない部分は即座に石油中に戻す。
- 切断作業は防火性の高い場所で行い、周囲に水・水分源がないことを確認する。
古いカリウム・ナトリウムの表面には黄色〜褐色の酸化物層が形成されることがあります。この酸化物(特に過酸化物K₂O₂・超酸化物KO₂)は衝撃・摩擦・加熱で爆発する危険があるため、表面に酸化物が多い場合は廃棄処理専門業者に依頼します。
事故防止のための管理ルール
カリウム・ナトリウムは少量でも重大事故につながるため、使用・保管における管理ルールが重要です。
- 在庫量を常に把握し、必要最小限の量だけ購入・保管する。
- 容器の状態(密閉性・石油量・酸化物の有無)を定期的に点検する。
- 使用済みの廃石油・廃カリウム片は絶対に下水・水中に廃棄しない。
- 廃棄は少量のエタノールで徐々に反応させて無害化するか、専門業者に依頼する。
- 取り扱いは必ず2名以上で行い、単独作業はしない。
消防法上の取り扱い規制(カリウム・ナトリウム)
カリウム・ナトリウムは消防法施行令別表第一(第3類危険物)に指定されており、指定数量は10kgです。指定数量以上を貯蔵・取り扱う施設には消防署長の許可が必要です(消防法第10条)。
指定数量未満(1/5以上)の場合は所轄消防署への届出が必要です。研究室などでの少量使用であっても法令上の規制があることを認識する必要があります。
製造所等(貯蔵・取り扱い施設)の基準として、防水・防湿措置・乾燥砂等の消火設備の設置が求められます(危険物の規制に関する規則の基準による)。
乙3試験の「カリウム・ナトリウム問題」の出題形式
乙3の性質科目ではカリウム・ナトリウムについて以下の形式で問われます。
- 「カリウムの消火方法として正しいものを選べ」→乾燥砂が正解。泡・水・CO₂等は誤り。
- 「カリウムはCO₂消火器で消火できる。正か誤か」→誤り(CO₂とも反応する)。
- 「ナトリウムの保管方法として正しいものを選べ」→灯油中が正解。水中は誤り。
- 「カリウムが水と反応したときの生成物は何か」→水酸化カリウム・水素。
- 「カリウムの炎色反応は何色か」→紫色。ナトリウムは黄色。
各物質の「保管方法・消火方法・水との反応生成物・炎色反応の色」の4点を確実に押さえましょう。
AI問題集でカリウム・ナトリウムを演習する
カリウム・ナトリウムは乙3試験の頻出テーマです。AI問題集ではこれらに関する問題を繰り返し演習できます。
アルカリ金属の全体的な性質と第3類危険物との関係
カリウム(K)・ナトリウム(Na)はアルカリ金属グループに属します。アルカリ金属全体の性質として以下が挙げられます。
- すべて柔らかい金属で、ナイフで切断できるほど軟らかい。
- 密度が水より小さく(比重1未満)、水に浮く。
- 常温で空気・水分と反応し、反応性は原子番号が大きくなるほど高い(Li<Na<K<Rb<Cs)。
- 炎色反応:Li=赤、Na=黄、K=紫(赤紫)、Rb=赤紫、Cs=青紫。
第3類危険物として指定されているアルカリ金属はK(カリウム)・Na(ナトリウム)が独立した品名で指定されており、Li(リチウム)・Rb・Csは「アルカリ金属(K・Na除く)」の品名に含まれます(指定数量50kg・危険等級II)。
この区分の違い(指定数量10kgのK・Naと50kgのLi等)は試験でも問われます。「Kの指定数量とLiの指定数量は同じか」という形式の問題で、答えは「異なる(K=10kg、Li=50kg)」です。
乙3の他の物質との体系的な整理
乙3試験対策として、カリウム・ナトリウムを他の第3類危険物と体系的に比較することが重要です。指定数量が同じ10kgのアルキルアルミニウム・アルキルリチウムとは保管方法が異なります(金属K・Naは灯油中、アルキルAl・Liは不活性ガス封入)。同じアルカリ金属でもLiは指定数量50kgと異なる点も押さえましょう。
カリウム・ナトリウムの知識を中心に据えて、他の品名との違い(指定数量・保管方法・水との反応生成物)を広げていくと、乙3の性質科目全体の理解が深まります。
まとめ
カリウム・ナトリウムは指定数量10kg・危険等級Iの最も危険な部類の第3類危険物です。水と反応して水素を発生させ、空気中でも自然発火します。保管は灯油(石油)中、消火は乾燥砂のみが有効です。CO₂消火器が使えない理由(CO₂との反応)も試験でよく問われます。炎色反応(カリウム=紫・ナトリウム=黄)も押さえておきましょう。乙3試験ではカリウム・ナトリウムに関する問題は必ず出ると考えて対策してください。保管方法・消火方法・水との反応生成物の3点を確実に答えられるようにすることが最優先です。さらに炎色反応・CO₂消火器不可の理由・指定数量・危険等級・自然発火性と禁水性の両方を持つことも確認しておきましょう。乙3のAI問題集ではカリウム・ナトリウムに関する問題を繰り返し演習できます。

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