ハロゲン化物消火設備は、フッ素・塩素・臭素などのハロゲン元素を含む化合物(現在はHFC系が主流)を消火薬剤として使う設備です。消防設備士 甲種第3類(以下、甲3)の試験では、HFC系薬剤の種類・NOAEL(無毒性影響濃度)とLOAEL(最小毒性影響濃度)・各部品の機能が出題されます。
この記事では、甲3の試験で出るハロゲン化物消火設備の知識を整理します。
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ハロゲン化物消火設備の消火の仕組み。燃焼の連鎖反応を断つ
ハロゲン化物消火設備の消火原理は主に「負触媒効果(抑制消火)」です。ハロゲン化物が燃焼の連鎖反応(ラジカル反応)に介入して消火します。CO2設備と異なり、設計濃度が低くても消火できる(少量で効果が高い)という特徴があります。
ハロゲン化物消火設備の特徴は次のとおりです。
- 電気絶縁性がある(不導電性)ため、電気設備の火災に使える
- 消火後の残留物がほぼないため、精密機器の保護に向いている
- CO2より設計濃度が低く(約7〜10%前後)、人体への影響が少ない
- 現在使用が認められているのはオゾン層破壊係数ゼロのHFC系薬剤のみ
現在使用される主なHFC系薬剤
かつて広く使われていたハロン1301・ハロン2402は、オゾン層破壊物質として現在は製造・輸入が原則禁止されています。現在は「特定ハロン代替物質」として次のHFC系薬剤が使用されています。
| 薬剤名 | 別名 | 主な用途 | NOAEL |
|---|---|---|---|
| HFC-227ea(七フッ化プロパン) | FM-200 | コンピューター室・通信機器室・美術館 | 9% |
| HFC-23(三フッ化メタン) | FE-13 | 低温保管室・特殊な電気設備 | 30% |
| FK-5-1-12(ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-ワン) | Novec 1230 | 精密機器室・データセンター | 10% |
甲3の試験では「HFC-227ea」が最も多く出題されます。NOAEL9%という数値と、設計濃度がNOAEL以下であることが重要なポイントです。
NOAEL・LOAELとは何か
ハロゲン化物消火設備の設計では、NOAEL(無毒性影響濃度)とLOAEL(最小毒性影響濃度)が重要な概念です。
| 用語 | 英語の意味 | 定義 | HFC-227eaの値 |
|---|---|---|---|
| NOAEL | No Observed Adverse Effect Level | この濃度以下であれば人体への悪影響が確認されない濃度 | 9% |
| LOAEL | Lowest Observed Adverse Effect Level | この濃度以上で人体への悪影響が最初に確認される最低濃度 | 10.5% |
有人区画でハロゲン化物消火設備を使用する場合、設計濃度はNOAEL以下に設定しなければなりません。設計濃度がNOAELを超えると、消火中に区画内に人がいた場合の安全が確保できなくなります。
試験では「NOAEL・LOAELの意味」と「HFC-227eaの9%という数値」がよく問われます。
ハロゲン化物消火設備の構成機器
ハロゲン化物消火設備の系統は、CO2消火設備と基本的に同じ構成です。貯蔵方法が液化ガス(常温・加圧保管)である点も共通しています。
| 機器名 | 役割 |
|---|---|
| 貯蔵容器 | 液化したハロゲン化物消火薬剤を加圧状態で貯蔵する |
| 容器弁 | 貯蔵容器の出口を開閉する。開放型が多い |
| 起動用ガス容器 | 窒素ガスで容器弁を開放する |
| 操作管 | 起動信号を容器弁まで伝える配管 |
| 選択弁 | 複数防護区画がある場合に区画を選択する |
| 集合管 | 複数の貯蔵容器をまとめる |
| 安全弁 | 過圧時に安全放出する |
| 配管・噴射ヘッド | 薬剤を防護区画に放出する |
| 起動装置(手動・自動) | 設備を起動する。有人区画では音響警報後に起動する |
設計濃度の設定。NOAELを超えないこと
ハロゲン化物消火設備の設計濃度は、使用する薬剤のNOAEL以下に設定します。CO2消火設備と異なり、ハロゲン化物は比較的低い濃度で消火できるため、設計濃度がNOAEL以下に収まる場合が多いです。
HFC-227eaの場合:設計濃度は一般的に7〜9%前後で設定します(NOAEL9%以下)。
設計濃度の計算式は、防護区画の体積と使用する薬剤の消火性能から決まります。消防法施行規則で薬剤量の計算方法が規定されています。
ハロゲン化物消火設備の設置対象
ハロゲン化物消火設備は、主に次のような場所に設置されます。
- コンピューター室・データセンター(電気絶縁性・残留物なし・精密機器保護)
- 通信機器室・電話交換室
- 美術館・博物館(水損・CO2窒息リスクを避けたい場所)
- 航空機格納庫の一部
ハロゲン化物消火設備は水損もなく残留物が少ないため、CO2設備の窒息リスクや粉末設備の清掃の手間を避けたい精密機器のある場所に向いています。
ハロン1301との違い
かつて使われていたハロン1301(三フッ化一臭化メタン・CF₃Br)は、極めて高い消火性能(少量で消火できる)をもちますが、オゾン層を破壊するため、現在はモントリオール議定書に基づいて製造・輸入が原則禁止されています。
現在はHFC系薬剤(HFC-227ea・HFC-23・FK-5-1-12)が「ハロン代替物質」として使われています。これらはオゾン層破壊係数ゼロですが、地球温暖化係数(GWP)があるため、将来的には使用を減らしていく方向があります。
試験では「ハロン1301が現在使用禁止である理由(オゾン層破壊)」と「代替品がHFC系であること」が問われることがあります。
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出典:消防法施行規則・ハロゲン化物消火薬剤の規格を定める省令(昭和50年自治省令第15号)・モントリオール議定書(1987年採択・日本1988年批准)。
作成日:2026年11月5日

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