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移動式クレーンのジブ(ブーム)は荷をつり上げる腕の部分で、複数の種類があります。ジブの形状・構造によってつり上げ能力・作業半径・用途が大きく変わります。試験の「移動式クレーンに関する知識」では各ジブの特徴・長所・短所が問われます。
ジブ(ブーム)とは何か
ジブ(boom/jib)は移動式クレーンの旋回台から斜めに伸びる支柱状の構造部材です。ジブの先端(ジブポイント)にシーブ(滑車)があり、ワイヤロープを通して荷をつり上げます。
ジブの傾斜角度(起伏角度)を変えることで作業半径が変わります。ジブを立てる(傾斜角を大きくする)と作業半径が小さくなり定格総荷重が大きくなり、ジブを寝かせる(傾斜角を小さくする)と作業半径が大きくなり定格総荷重は小さくなります。
主なジブの種類
伸縮(テレスコピック)ジブ
複数の箱形鋼材が望遠鏡(テレスコープ)のように入れ子になって伸縮する構造のジブです。
- メリット:段階的または無段階にジブを伸縮できる・折りたたんだ状態では全長が短くコンパクト・移動時間が短い
- デメリット:箱形断面なのでラチス構造に比べて重量比が大きい(同じ強度でより重くなる)
- 主な使用機種:ラフテレーンクレーン・オールテレーンクレーン・トラッククレーン
現在の移動式クレーンの主流はテレスコピックジブです。油圧シリンダによる自動伸縮が可能で、運転室からの遠隔操作でジブ長さを変えられます。
ラチスジブ(トラスジブ)
格子状(ラチス・トラス)の構造で作られたジブです。山形鋼・鋼管等を格子状に組み合わせた構造で、軽量でありながら高い強度を持ちます。
- メリット:同じ重量でテレスコピックジブより長いリーチを出せる・重量比強度が高い
- デメリット:分解・組立に時間がかかる・移動・搬送に手間がかかる
- 主な使用機種:クローラクレーン・大型タワークレーン
ラフィングジブ
ラフィングジブは、メインジブの先端にさらに起伏(ラフィング)できる補助ジブ(補助ブーム)を取り付けた構造です。メインジブとラフィングジブがそれぞれ独立して起伏できます。
- メリット:高層建物の近くでの作業に適している(ラフィングジブの角度を変えて障害物を避けられる)・タワーに接触せずに近づける
- デメリット:構造が複雑で重量が増す・操作が難しい・つり上げ能力はメインジブのみより低くなる傾向
- 主な使用場所:超高層建物建設現場・タワー式クレーン
「ラフィング」とは起伏操作(ジブを立てたり寝かせたりする操作)のことで、ラフィングジブはジブ先端部が独立して起伏するため「ラフィングジブ」と呼ばれます。
フライジブ(補助ジブ)
メインジブの先端に取り付ける補助的なジブで、通常はメインジブに対して一定角度で固定されます。
- メリット:メインジブだけでは届かない高所や狭い箇所に荷を届けられる・比較的軽量
- デメリット:起伏角度が固定のため、自由度はラフィングジブより低い・つり上げ能力が下がる
ジブ(起伏式ジブ)の比較表
| 種類 | 構造 | 伸縮・起伏 | 主な使用機種 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| テレスコピックジブ | 箱形入れ子式 | 油圧伸縮 | ラフテレーン・オールテレーン | 移動性高い・都市部工事に多い |
| ラチスジブ | 格子状トラス | 継ぎ足し式 | クローラクレーン | 長尺・重量物作業に適する |
| ラフィングジブ | メインジブ+先端補助ジブ | 先端独立起伏 | タワークレーン・超高層建設 | 障害物を避けた作業が可能 |
| フライジブ | 先端固定補助ジブ | 固定角度(一定) | 各種移動式クレーン | 高所・狭所への到達性向上 |
ジブ長さと作業半径・定格総荷重の関係
テレスコピックジブを例に、ジブ長さと作業条件の関係を整理します:
- ジブを長くすると同じ傾斜角でも作業半径が大きくなり、定格総荷重は小さくなる
- ジブを短くすると同じ傾斜角でも作業半径が小さくなり、定格総荷重は大きくなる傾向
- 同じジブ長さでもジブを立てる(傾斜角を大きくする)と作業半径が小さく定格総荷重が大きくなる
このため荷重表(性能線図)はジブ長さ×作業半径の組み合わせ表として示されることが多いです。
ジブ・ワイヤロープの点検
ジブの継ぎ目(ピン接合部)やテレスコピックジブの伸縮ガイド部は摩耗・亀裂が生じやすい箇所です。始業前点検や定期自主検査(月次・年次)でこれらを確認します。
特に確認が必要な箇所:
- ジブの接続ピン・ピンの抜け止め金具(コッタピン等)の状態
- テレスコピックジブの伸縮ガイド(ウェアパッド)の磨耗
- ジブ本体の変形・曲がり・亀裂
- ラチスジブの格子部材の損傷・溶接部の亀裂
この記事のまとめ
- テレスコピックジブ:入れ子式伸縮・移動性が高い・ラフテレーン等に使用
- ラチスジブ:格子状トラス・長尺・高強度比・クローラクレーン等に使用
- ラフィングジブ:先端部が独立起伏・高層建設現場向き・障害物回避に有利
- フライジブ:先端固定補助ジブ・高所・狭所への到達性を向上
- ジブを長くすると同じ傾斜角で作業半径が大きくなり定格総荷重が下がる
ジブの構造と試験の出題ポイント
試験では各ジブの「特徴」「メリット・デメリット」「使用される機種・現場」が問われます。
| 出題パターン | 正しい答え |
|---|---|
| 「ラフィングジブが特に有効な現場はどれか」 | 高層建物周辺・障害物の多い現場(障害物を避けながら作業できるため) |
| 「テレスコピックジブを採用する主な理由はどれか」 | 移動・搬送が容易でコンパクトになるため(伸縮でジブ長さを変更できる) |
| 「ラチスジブとテレスコピックジブの違いはどれか」 | ラチスジブは格子状で軽量・高強度比、テレスコピックジブは箱形で移動性が高い |
ジブ先端部(ジブポイント)の構造
ジブの先端(ジブポイント)には巻上用ワイヤロープを通すシーブ(滑車)が取り付けられています。ジブポイントの構造:
- シーブ(滑車):ワイヤロープを方向転換させる溝付きプーリー。複数枚を組み合わせて使うことで荷を複数倍の力でつり上げられる(多掛けシーブ)
- フックブロック:複数のシーブと安全フックを組み合わせた装置。荷に取り付ける側
- 安全つめ(フックラッチ):フックからワイヤーや吊り具が外れないようにする爪状の安全装置
ジブの傾斜角度と巻上・起伏の組み合わせ操作
移動式クレーンの「水平引き」操作では、巻上とジブ起伏を組み合わせて荷を水平に移動させます:
- ジブを寝かせながら(起伏操作・倒伏)荷が遠ざかる
- 同時に巻上操作でワイヤを巻き上げると荷の高さを維持できる
- 荷を水平に移動させるには「倒伏+巻上」または「立て+巻下」を同時操作する
この「ラジアルジブ操作」(水平引き)は実技教習でも練習します。
ジブの強度と安全係数
クレーン等の安全規則では、ジブその他の構造部材に適切な強度が求められています。ジブは作業中の動的荷重(風・衝撃荷重)を考慮した強度設計が必要です。特に:
- ジブの接続ピンは繰り返し曲げ荷重を受けるため、疲労破壊に注意
- テレスコピックジブの伸縮ガイド部は摩耗が生じるため定期的な確認が必要
- ジブを最大伸長・最大起立(傾斜角最大)で使うのと、最小ジブ長・適度な傾斜角で使うのでは荷重分布が異なる
ラフィングジブとスーパーリフトの比較
| 比較項目 | ラフィングジブ | スーパーリフト |
|---|---|---|
| 概要 | ブーム先端に取り付けた起伏するジブ | ブームの安定を補助するための後方マスト |
| 目的 | 荷の到達高さを増やす・障害物を越える | 大型ブームの転倒モーメントを相殺する |
| 主な使用機種 | 中・大型クローラークレーン・オールテレーン | 超大型クローラークレーン・一部オールテレーン |
ジブが使われる現場の例
- 固定ジブ:橋桁架設・プレキャストコンクリート部材の設置。ブームを長く伸ばして作業半径を広げる
- ラフィングジブ:超高層建築での重量部材吊り込み・既存建物のそばでの作業(ジブを起こして障害物を避ける)
ジブの取り付けによる能力変化
ジブを追加するとブーム全体の長さ(リーチ)が増えますが、ジブの重量がブームにかかるため、同じ作業半径での定格総荷重はジブなしの場合より小さくなります。荷重表はジブの有無・ジブ長・ジブ角度ごとに異なります。ジブを使用する際は必ずジブ付きの荷重表を確認します。
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