旅から帰ってきたのに、なんだか疲れたまま、という経験はありませんか。
2泊3日の旅行、楽しかったのに、月曜日の朝がしんどい。温泉にも入ったし、おいしいものも食べたのに、どこかすっきりしない。
「旅って本当に休めているのかな」と感じたことがある人は、意外と多いです。
OECD(経済協力開発機構)が2021年に実施した調査では、日本人の平均睡眠時間は加盟国の中でも最も短い水準のひとつとされています。1日あたり平均7時間22分。アメリカ(8時間51分)、フランス(8時間32分)と比べると、1時間以上短い数字です。(出典:OECD「Society at a Glance 2021」)
しかも「旅行中も、実はしっかり眠れていない」という人が少なくありません。観光の予定を詰め込みすぎて夜更かし。お酒で寝つきが悪くなる。知らない場所の音や光で眠りが浅くなる。
旅に出ても、眠れていなければ、疲れは取れません。
だからこそ、最近こんな考え方が静かに広がっています。
「眠るために旅に出る」という選択肢です。
まだ聞き慣れない言葉かもしれません。でもこの記事を読み終わったとき、旅の目的がちょっと変わるかもしれません。宿を営んでいるオーナーさんには、ある「世界の数字」が気になるかもしれません。
第1章:日本人の睡眠は、世界で最も短い。これは「気のせい」ではない
「最近、なんだか疲れがとれない」と感じている人は、あなただけではありません。
OECD(経済協力開発機構)が2021年に調査した「Society at a Glance」によると、日本人の平均睡眠時間は1日7時間22分です。これは調査対象となったOECD加盟国の中でも最も短い水準のひとつです。
同じ調査でフランスは8時間32分、アメリカは8時間51分です。日本はその1時間以上短い計算になります。
「たった1時間」と思うかもしれませんが、毎日1時間の睡眠不足が続くと1週間でほぼ1晩分の睡眠を失う計算になるという研究が複数あります。(参考:米国睡眠医学会が公表している睡眠負債に関する情報)
「忙しいから眠れない」という説明をよく聞きます。でも、睡眠の研究者のあいだでは「眠り方を知らないから質が下がっている」という指摘も多くあります。
眠る時間の長さよりも、「ちゃんと眠れているかどうか」のほうが大切なのです。
次の章では、多くの人が旅行から帰ってきても疲れが取れない、本当の理由を見ていきます。
第2章:観光旅行から帰っても、疲れが取れない理由
「旅行に行ったのに、帰ってきたら疲れた」という話を周りでよく聞きます。
これは珍しいことではありません。多くの人が旅行中に「休むこと」よりも「楽しむこと」を優先しているからです。
観光地の移動で1日1万歩以上歩く。食べ放題のバイキングで胃腸を使いすぎる。夜は地元の居酒屋で深夜まで飲む。翌朝は早起きして次の観光地へ向かう。
楽しいのですが、体は休んでいません。
特に睡眠に影響するのは「お酒」「光」「音」の3つです。
お酒は、眠りを浅くすることが知られています。初めての場所の音(廊下を歩く人、隣の部屋の声)は、脳を警戒させて眠りを妨げます。遮光カーテンが薄い部屋では、朝日で目が覚めてしまいます。
こうして「旅に行ったのに、眠れなかった」という状況が生まれます。
旅の目的を「観光」から「眠ること」に変えるだけで、帰ってきたときの体の感覚がまったく違う、という声が少しずつ増えています。
では、「眠るための旅」とは具体的にどういうものなのでしょうか。次の章で見ていきます。
第3章:いま静かに広がる「眠るために旅に出る」という考え方
「スリープツーリズム」という言葉を耳にしたことはありますか。
日本語に訳すと「眠るための旅行」です。観光ではなく、睡眠の質を高めることを目的として旅に出る、という考え方です。
欧米を中心に、この考え方が少しずつ広がっています。
「ウェルネスツーリズム(健康を目的にした旅行)」全体の世界市場規模は、Global Wellness Instituteの試算によると2024年時点で約8,000億ドル規模とも言われており、スリープツーリズムはその中の一分野として注目されています。(出典:Global Wellness Institute「Global Wellness Economy Monitor」)
なぜここまで大きくなっているのでしょうか。
ひとつの理由は「眠れない人が世界中で増えている」からです。スマートフォン、仕事のメール、深夜まで続く動画の視聴。現代の生活には、眠りを奪う仕掛けがあふれています。
海外では、高級ホテルが「睡眠コンシェルジュ」を配置して、枕や照明を部屋ごとに調整するサービスを提供し始めています。「快眠プログラム」付きの宿泊プランを売り出す施設も出てきています。
日本ではまだ広く知られていませんが、「眠るための旅」という選択肢は確実に広がりつつあります。
ただ、こうした宿泊プランを提供している宿は、日本ではまだごくわずかです。多くの宿が「観光地として」お客さんを迎えるスタイルのままです。
では、実際によく眠れる宿には、どんな共通点があるのでしょうか。
第4章:よく眠れた宿に、共通していた5つのこと
「旅先でよく眠れた」という経験がある人に話を聞くと、興味深いことがわかります。「設備が豪華だったから」ではなく、もっとシンプルな理由が多いのです。
よく眠れる宿に共通していた5つのことをまとめました。
1. 音が静かです
交通量の多い道路から離れています。隣の部屋の声が聞こえません。自然の音(川・虫・風)だけが聞こえます。この「静けさ」が、最もよく挙げられる理由です。
2. 光を調整できます
朝日が入りすぎない厚めのカーテンがあります。部屋の照明を自分で暗くできます。朝、自分のペースで目を覚ませる環境です。
3. 夜の温度がちょうどよいです
寒すぎず、暑すぎません。山や高原の宿は夜になると気温が下がり、眠りやすくなるという声が多いです。
4. 寝具が体に合っています
枕の高さが選べます。布団やマットレスが硬すぎず柔らかすぎません。「合わない枕で一晩を過ごすと首が痛くなる」という経験がある人は多いはずです。
5. 急かされる感じがありません
チェックアウトが遅めで、朝をゆっくり過ごせます。次の観光地への移動がなく、ただぼーっとできる時間があります。この「急かされない感覚」が大きいという声があります。
宿を選ぶ前に、次のことを確認してみてください。
- 宿の周辺に幹線道路や繁華街はないか
- 客室の写真でカーテンの厚みが確認できるか
- チェックアウト時間にゆとりがあるか
- 口コミに「静か」「よく眠れた」「ぐっすり」という言葉があるか
第5章:「大きな観光ホテル」より「ペンション・民宿」で眠れる理由
大型の観光ホテルには、たくさんの魅力があります。施設が充実していて、レストランも豪華で、サービスも行き届いています。
ただ「眠ること」を目的にするとき、大型ホテルが向いているとは限りません。
理由は「人の多さ」と「音の多さ」です。
廊下を歩く人の音があります。エレベーターが止まる音もあります。隣の部屋からの話し声も聞こえます。100室以上ある大型ホテルは、多くの人が同じ時間に動いているため、どうしても音が多くなります。
一方、ペンションや民宿のような宿は、部屋数が少ないぶん静かです。周囲が自然に囲まれていることも多く、夜になると驚くほど静かになります。
オーナーさんが近くにいることで、「枕の高さが合わなかったら言ってください」「夜中に寒かったら声をかけてください」という対応ができるのも、そうした宿ならではのことです。
「眠るための旅」に向いているのは、サービスの量よりも「静けさ」と「余白」がある場所なのかもしれません。
では最後に、今週末からでも実際に試せる手順をまとめます。
第6章:今週末から試せる「眠るための旅」の探し方と準備
「いいな」と思っても、何から始めればいいかわからない、という人のために、具体的な手順をまとめます。
ステップ1:目的地を「自然の多い場所」に絞る
山・高原・湖畔・林のなかなど、夜になると静かになる場所が向いています。都市部の観光地は夜も人が多く、眠りに向かない場合があります。「〇〇高原 ペンション」「〇〇湖 民宿」という検索がおすすめです。
ステップ2:口コミで「眠れた」という言葉を探す
じゃらん・楽天トラベル・Googleマップの口コミで、「よく眠れた」「静かだった」「ぐっすり」「朝がスッキリ」という言葉があるかを確認します。写真よりも、この言葉のほうが信頼できる情報です。
ステップ3:チェックアウトが遅い宿を選ぶ
チェックアウトが10時の宿よりも、12時やレイトチェックアウト可能な宿を選ぶと、自分のペースで目を覚ませます。「急いで出発しなければ」という感覚がなくなるだけで、旅の質が変わります。
ステップ4:夕食後のスマートフォンを意識的に置く
旅先でも無意識にスマートフォンを見てしまうと、眠りが浅くなりやすいと言われています。夕食後の1〜2時間だけでも、画面から離れる時間をつくるだけで違います。
ステップ5:翌日の予定を入れない
「眠るための旅」の一番の敵は「予定の詰め込み」です。帰りの時間だけ決めて、あとは何もしない日をあえて作ること。これがこの旅の核心です。
【宿のオーナーさんへ】
ここまで読んでいただきありがとうございます。
「眠るための旅」という考え方は、まだ多くの人に知られていません。でも「よく眠れる宿」を探している旅行者は、確実に増えてきています。
もしあなたの宿が「静かな場所にある」「自然に囲まれている」「ゆっくりできる」という特徴を持っているなら、それはそのまま、この旅を求めている人への価値になります。
その魅力を、ホームページやLPでしっかり伝えることができれば、「泊まってみたい」と思ってもらえる可能性が高まります。
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