介護の採用率はどれくらい?令和6年度データから、正直に見てみます。

介護

「うちの施設、採用率は高いんだろうか、低いんだろうか」。介護施設の採用担当者の方から、こういう感覚的な悩みを聞くことがあります。今日は、公益財団法人介護労働安定センターが毎年行っている「介護労働実態調査」の最新データ(令和6年度)をもとに、実際の採用率がどれくらいなのか、正直に見ていきます。

令和6年度の採用率・離職率は、実際どれくらいか

訪問介護員と介護職員を合わせた2職種の、令和6年度の平均採用率は14.3%、離職率は12.4%でした。これは事業所全体の平均で、1年間に採用した人数を、前年の在籍者数で割って算出した数字です。

感覚的な話として「介護は離職率が高い業界」というイメージを持たれがちですが、実は令和6年度の離職率は2年連続で低下しており、過去の調査の中でも低い水準です。一方で、採用率の方は3年ぶりに低下しました。低下の幅で見ると、採用率の低下幅(2.6ポイント)が、離職率の低下幅(0.7ポイント)を大きく上回っています。

つまり、「辞める人は減っているが、それ以上に新しく入ってくる人も減っている」というのが、令和6年度の実態です。

過去5年の推移で見ると、傾向がはっきりします

2職種計の採用率は、令和2年度16.2%→令和3年度15.2%→令和4年度16.2%→令和5年度16.9%→令和6年度14.3%と推移しています。令和5年度までは16%台で比較的安定していたのが、令和6年度に一気に2.6ポイント下がった形です。

離職率の方は、令和2年度14.9%→令和3年度14.3%→令和4年度14.4%→令和5年度13.1%→令和6年度12.4%と、こちらは緩やかに下がり続けています。

離職率が下がっているのは良いニュースですが、採用率の急な低下は、業界全体で「介護の仕事を選ぶ人自体が減っている」可能性を示しています。

職種別・年齢別に見ると、差がはっきり出ます

訪問介護員と介護職員を分けて見ると、採用率は訪問介護員14.1%、介護職員14.4%と、ともに3年ぶりの低下でした。離職率は訪問介護員11.4%(4年連続の低下)、介護職員12.8%(2年連続の低下)です。

年齢階層別に見ると、訪問介護員・介護職員のどちらも「29歳以下」が、採用率・離職率ともに他の年齢層より明確に高くなっています(2職種計で採用率31.4%、離職率18.7%)。若い世代ほど、出入りが激しいということです。逆に50歳以上になると、採用率・離職率とも一桁台まで落ち着きます。

訪問介護員・介護職員以外の5職種で見ると、看護職員が採用率21.6%・離職率15.9%と、調査対象7職種の中で最も高くなっています。逆に最も低いのはサービス提供責任者で、採用率・離職率ともに8.3%でした。職種によって、動きの激しさがまったく違うということが分かります。

「採用率」という数字の中身を、もう少し詳しく見る

平均値だけを見ると実感がわきにくいので、事業所ごとの分布も見てみます。事業所ごとの採用率を見ると、「10%未満」の事業所が50.4%と、半数を占めています。つまり、平均採用率14.3%という数字は、一部の採用が活発な事業所によって底上げされている面があり、多くの事業所は10%未満、つまり「ほとんど新しい人が入ってこない」という状態にあるとも言えます。

それでも、人手不足感はむしろ悪化しています

従業員の過不足状況を見ると、「大いに不足」「不足」「やや不足」を合わせた「不足」と回答した事業所は65.2%で、前年度(64.7%)よりわずかに上昇しています。職種別に見ると、訪問介護員の不足感が特に強く、83.4%の事業所が不足と回答しており、そのうち「大いに不足」「不足」という深刻なレベルの回答だけでも58.1%にのぼります。

採用率の低下と、不足感の上昇。この2つが同時に起きているのが、令和6年度の介護業界の実態です。

採用活動で、実際に効果があった方策は何か

事業所が行っている採用活動のうち、「採用に効果があった」と回答した割合が最も高かったのは、採用や職場定着の方策全体で見ると「賃金水準の向上」(36.0%)でした。次いで「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」(25.7%)、「託児所設置や保育費用支援等」(20.2%)と続きます。

個別の採用活動としては、「ハローワークや福祉人材センターの担当者に相談」を行っている事業所が66.9%と最も多く、そのうち40.1%が「効果があった」と回答しています。「職員に対して友人・知人などの紹介を依頼」も65.6%の事業所が行っており、効果があったとする割合は46.0%と、こちらの方が実感としての効果は高めです。

また、有料職業紹介所を活用している事業所のうち、活用している紹介所の数が「3~5社」の事業所では、効果があったとする割合が56.5%と最も高くなっています。1社だけの活用では32.6%にとどまっており、複数の紹介所を併用している事業所の方が、採用の実感を得やすい傾向がうかがえます。

賃金は、実際にどれくらい上がっているのか

賃金支払形態が月給の人の、通常月の平均月収は248,884円で、前年度に比べて3.1%の増加でした。職種別に見ると、看護職員が3.6%、訪問介護員が3.2%と、伸びが高くなっています。年齢階層別では、20~24歳が5.8%、25~29歳が5.0%と、若い世代ほど賃金の伸びが大きい傾向があります。

平均時間給は1,262円で、前年度に比べて3.5%の増加でした。時間給は平成27年度の1,051円から令和6年度の1,262円まで、10年連続で上昇し続けています。

介護職員等処遇改善加算を取得している施設・事業所の介護職員(月給・常勤)については、令和5年9月から令和6年9月にかけて、基本給等が11,130円、賞与等を含めた平均給与額では13,960円増加しているというデータもあります。賃金は着実に上がってきていますが、それでも後述する満足度調査では「賃金水準」への不満が根強く残っています。

働いている人の満足度は、実はどこにあるのか

介護労働者に、現在の仕事の満足度を聞いた調査では、「満足」「やや満足」の合計から「不満足」「やや不満足」の合計を差し引いた指標(満足度D.I.)で見ると、「職場の人間関係」(+32.4)、「仕事の内容」(+28.2)が高いプラスになっています。一方で、「人員配置体制」(-21.3)、「休憩室などの付帯設備」(-15.3)、「賃金水準」(-14.3)は、いずれもマイナスが大きくなっています。

つまり、「仕事内容そのものや、人間関係には満足しているが、人手の余裕や設備、給与には不満がある」というのが、現場で働く人たちの実感です。この構造は、採用の段階で伝えるべきこと(仕事内容・人間関係の良さ)と、職場定着のために改善すべきこと(人員配置・設備・賃金)が、はっきり分かれていることを示しています。

また、「今の仕事や職場にあてはまるもの」を聞いた設問では、「利用者や家族から感謝される」が57.3%と最も高く、次いで「利用者の援助・支援や生活改善につながる」(49.8%)、「福祉に貢献できる」(34.6%)となっています。こうした「やりがい」の部分は、賃金や設備とは別に、介護という仕事が持つ強みとして、採用の場面でも伝える価値があります。

「続けたい」と思っている人は、実は多数派です

今後の仕事(職種)の希望を聞いた設問では、「今の仕事(職種)を続けたい」が58.3%と半数を超えています。今の事業所での就労についても、「今の事業所で働き続けたい」が53.0%と、約半数が現状維持を希望しています。

「今の仕事を続けたい」と回答した人のうち、「今の事業所で働き続けたい」人は81.1%にのぼります。つまり、仕事そのものを続けたいと思っている人の多くは、今いる事業所にも留まりたいと考えているということです。離職を防ぐには、まず「介護という仕事を続けたい」と思ってもらうことが土台になり、その上で「この事業所で」と思ってもらえるかどうかが次の課題になる、という構造が見えてきます。

外国籍労働者の受け入れは、少しずつ広がっています

外国籍労働者を受け入れている事業所は、まだ全体の15.8%にとどまりますが、前年度(13.4%)と比較すると2.4ポイント上昇しています。受け入れていない事業所のうち、「今後、受け入れを検討してみたい」とする事業所も30.1%あり、今後さらに広がっていく可能性があります。

受け入れの課題としては、「利用者や他の従業員との意思疎通(日本語能力及びコミュニケーション)が難しい」(36.5%)が最も高く、次いで「受け入れのための住宅や寮などを確保することが困難」(23.6%)となっています。人材不足の解決策の一つとして注目されている一方で、現場レベルではまだ課題も多いというのが実態です。

辞めた理由から見える、採用の質を上げるヒント

中途採用の介護労働者が、直前の仕事(介護関係)を辞めた理由で最も多かったのは「職場の人間関係に問題があったため」(24.7%)でした。その具体的な内容をさらに聞くと、「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」が49.1%と、約半数を占めています。

これは、採用の「入口」だけでなく、過去に辞めていった人がなぜ辞めたのかを知ることが、次の採用の質を上げるヒントになる、ということを示しています。求人を出す前に、自分の施設で過去に辞めた人の理由を、一度振り返ってみる価値はあると思います。

就職を決めた理由から、施設が発信すべきことが見えてきます

逆に、現在の法人に就職した理由を見ると、「通勤に便利だから」(51.9%)が最も多く、次いで「自分のやりたい介護ができそうだったため」(33.6%)、「職場の人間関係がよさそうだったため」(33.6%)が高くなっています。

「通勤の便利さ」は施設の立地に左右される部分ですが、「自分のやりたい介護ができそう」「職場の人間関係が良さそう」という2つは、求人票やホームページで、具体的に伝えることができる情報です。実際にどんな介護を大事にしているのか、職場の雰囲気はどうなのか。こうした情報を、応募を検討している人が就職を決める前に確認できる形で発信できているかどうかが、採用の分かれ目になっていると考えられます。

ICT機器・介護ロボットは、人手不足の解決策になるか

ICT機器や介護ロボットの導入効果を聞いた調査では、「効果がある」「やや効果がある」を合わせた割合が、「昼間の業務負担の軽減」で49.4%、「夜間の業務負担の軽減」で44.6%と、それぞれ約半数の事業所が効果を実感しています。特に施設系(入所型)では、この割合がそれぞれ73.1%、72.6%と7割を超えており、入所型の施設ほど効果を感じやすい傾向があります。

実際の導入状況を見ると、パソコンによる介護ソフト(利用者情報の入力・保存・転記機能)は全体の75.4%が「日常的に利用している」と回答している一方、介護ロボット本体(移乗支援・入浴支援など)の利用率は、最も高いものでも施設系(入所型)の「入浴を支援する介護ロボット」が8.4%にとどまり、いずれも10%未満にとどまっています。ソフトウェア面のICT化は進んでいますが、ロボット本体の普及は、まだこれからという段階です。

令和6年度の新しい調査項目:サービス提供責任者の役割

令和6年度の調査では、新しいトピックとして「訪問介護・サービス提供責任者」に関する項目が追加されました。サービス提供責任者は、訪問介護員の指導・調整・同行訪問などを担う、いわば現場のまとめ役です。

興味深いのは、サービス提供責任者が訪問介護員に対してコミュニケーションや指導をどれだけ行っているかによって、担当する訪問介護員の離職率がはっきり変わるというデータです。「訪問介護員からの仕事上の課題などに関する相談や指導など」を実施している場合の離職率10%未満の割合は63.0%であるのに対し、実施していない場合は50.5%にとどまります。同様の傾向は、日常的な情報交換や、新任者への同行訪問など、複数の項目で確認されています。

一方で、サービス提供責任者自身の課題としては、「担当業務に専念できる時間が足りない」が60.3%と最も高く、「訪問介護員の指導・研修のための時間が確保できていない」も30.8%にのぼります。サービス提供責任者本人の業務量に余裕がないと、訪問介護員へのフォローが手薄になり、結果として離職率が上がってしまう。この悪循環が、データからも見えてきます。訪問介護事業所であれば、サービス提供責任者の負担を減らす工夫そのものが、間接的に定着率を上げる採用対策になるとも言えます。

1つの数字だけで判断しない

ここまで見てきたように、「採用率」という1つの数字の裏には、職種・年齢・地域・事業所ごとの、かなり大きな差が隠れています。全体の平均採用率14.3%という数字だけを見て「うちの施設は平均より低いから駄目だ」と落ち込む必要はありません。訪問介護なのか施設介護なのか、若手中心の採用を目指しているのか、といった条件によって、比較すべき基準はまったく変わってきます。

大事なのは、自分の施設がどの職種・どの層の採用に課題を抱えているのかを、こうした統計と照らし合わせながら、具体的に把握することだと考えています。

まとめ

令和6年度の介護業界は、離職率は改善している一方で、採用率が3年ぶりに低下し、人手不足感はむしろ強まっているという、少し複雑な状況にあります。効果があった採用施策として「賃金水準の向上」が上位に来る一方で、それだけでなく、辞めた人の理由を知ること、そして「自分のやりたい介護ができそう」「人間関係が良さそう」といった、求職者が本当に知りたい情報を発信することも、採用の実感につながっています。

【採用担当者さんへ】求人票や施設のホームページで、こうした情報を具体的に伝えられているか、一度見直してみることをおすすめします。

出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査結果の概要について」(https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/)

面接で実際に何を見るべきかはこちらの記事にまとめています。

この記事を書いた人

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