面接では感じが良かったのに、入職してみたら思っていたのと違った。介護施設の採用担当者から、こうした声をよく聞きます。今日は、面接で本当に見極めるべきことは何か、営業組織で長年採用・見送りに関わってきた立場から、正直に書いていきます。
- 「退職理由」「志望動機」「将来のビジョン」、本当の意図
- 雇用形態では、判断できません
- 具体的なエピソードを聞く
- 場面別に見る、具体的な質問例
- 聞いてはいけない質問にも、注意が必要です
- 逆質問からも、見えることがあります
- ミスマッチを防ぐのは、施設側の役割でもあります
- 可能であれば、複数人・複数回の面接を
- 「とりあえず採用」が、一番の落とし穴
- 面接だけでなく、書類の段階からすでに始まっている
- 面接では見えない部分にも、目を向ける
- 見えないところでの言動にも、実は表れます
- 評価基準は、面接官の間で揃えておく
- 「面接だけ上手い人」に、気をつける
- オンライン面接だからこそ、意識したいこと
- 未経験者を面接する時は、視点を変える
- 面接は、一方的な選考の場ではありません
- まとめ
「退職理由」「志望動機」「将来のビジョン」、本当の意図
介護職の面接でよく聞かれる質問として、「前職を辞めた理由」「なぜ介護の仕事を選んだのか」「将来どうなりたいか」の3つがあります。これらは単なる自己紹介の延長ではなく、「長く勤めてくれる人かどうか」を判断するための、実は一番重要な質問です。
退職理由を聞くのは、同じ理由で今の職場も辞めてしまわないかを確認するためです。志望動機を聞くのは、介護という仕事そのものへの動機が本物かどうかを確認するためです。将来のビジョンを聞くのは、その人が今の施設で働き続ける将来を、自分自身で描けているかを確認するためです。
雇用形態では、判断できません
私は営業の管理職として、約70名の組織を見てきました。派遣・契約・正社員、いろいろな雇用形態のスタッフと関わってきましたが、雇用形態と仕事への意識の高さは、まったく関係がありません。派遣スタッフでも当事者意識が高く、周りを引っ張る人はいますし、正社員でも当事者意識が低く、指示待ちのままの人もいます。
介護の採用でも同じだと思います。「正社員だから安心」「パートだから戦力にならない」という思い込みで判断すると、本当に見るべきところを見逃します。面接で見るべきは、雇用形態ではなく、その人が仕事にどう向き合っているかです。
具体的なエピソードを聞く
「頑張ります」「一生懸命やります」という言葉だけでは、その人が本当にどう動く人なのかは分かりません。ここで役立つのが、コンピテンシー面接と呼ばれる手法です。これは、応募者の過去の具体的な行動を掘り下げて聞くことで、成果につながる行動パターンを見極める面接方法です。
質問の組み立て方として、「状況(その時どんな状況だったか)」「課題(何が問題だったか)」「行動(具体的に何をしたか)」「結果(どうなったか)」の順に掘り下げていく方法が知られています。介護の面接に当てはめるなら、例えば「前の職場で、利用者さんやご家族との関係で難しいと感じた場面はありましたか。その時、具体的にどう対応しましたか」というように聞きます。
ここで大事なのは、「どう対応しましたか」で終わらせず、「その結果、どうなりましたか」まで聞き切ることです。行動と結果をセットで聞くことで、その場しのぎの美談なのか、実際に考えて動いた経験なのかが見えてきます。
場面別に見る、具体的な質問例
コンピテンシー面接の考え方を、実際の介護の現場に当てはめて、具体的な質問例をいくつか挙げます。
チームワークを見る質問
「前の職場で、他のスタッフと意見が合わなかった経験はありますか。その時、どう対応しましたか」
介護は一人で完結する仕事ではなく、チームで動く仕事です。意見が違う相手とどう折り合いをつけてきたかを聞くことで、協調性の実際の使い方が見えてきます。「揉めたことはない」という答えより、「こう調整した」という具体的な話が出てくる方が、実は信頼できます。
急な対応力を見る質問
「予定していなかった急な対応が必要になった時、どう優先順位をつけますか。実際にそういう場面はありましたか」
介護の現場は、予定通りに進まないことの連続です。マニュアル通りにしか動けないのか、状況を見て自分で判断できるのかは、実際のエピソードを聞くことでしか見えません。
感情のコントロールを見る質問
「利用者さんやご家族から、理不尽だと感じる言葉をかけられた経験はありますか。その時、どう気持ちを切り替えましたか」
介護の仕事は、感情労働の側面が大きい仕事です。理不尽な場面にどう向き合ってきたか、その具体的な経験を聞くことで、ストレス耐性や気持ちの切り替え方が見えてきます。
聞いてはいけない質問にも、注意が必要です
見極めたい気持ちが強くなるあまり、家族構成や結婚・出産の予定、思想信条など、採用選考と関係のないプライベートな事柄に踏み込んでしまう面接官もいます。厚生労働省は、就職差別につながるおそれがある質問として、本人に責任のない事項(本籍・出生地・家族に関すること等)や、本来自由であるべき事項(思想・信条等)を採用選考の判断材料にしないよう求めています。見極めることと、プライバシーに踏み込むことは、まったく別の話だと意識しておく必要があります。
逆質問からも、見えることがあります
面接の最後に「何か質問はありますか」と聞く場面があると思います。ここで何を聞いてくるかにも、応募者の本気度が表れます。給与や休日についてしか聞かない人が悪いわけではありませんが、「入職後、最初の1ヶ月はどんな流れで仕事を覚えていくのか」「今活躍しているスタッフは、どんなタイプの人が多いか」といった、働く姿を具体的にイメージした質問が出てくる人は、それだけ本気で入職後のことを考えている証拠です。
ミスマッチを防ぐのは、施設側の役割でもあります
ここまで「見極める側」の視点で書いてきましたが、ミスマッチを防ぐのは、応募者を評価することだけではありません。施設側が、良いことばかりでなく、大変な部分も正直に伝えることも同じくらい大事です。人手が厳しい時期がある、夜勤の負担がある、こうした現実を面接の段階で隠さずに伝えておくことで、入職後に「聞いていた話と違う」というギャップを防げます。
採用は、施設が応募者を選ぶ場であると同時に、応募者が施設を選ぶ場でもあります。双方が本音で話せる面接ほど、結果的にミスマッチの少ない採用につながります。
可能であれば、複数人・複数回の面接を
1回・1対1の面接だけで判断すると、面接官との相性やその日の体調によって、印象が大きく変わってしまうことがあります。可能な施設であれば、複数のスタッフが別の機会に会う、あるいは施設見学と面接を分けるなど、複数の視点・複数の場面で応募者を見る機会を作ることをおすすめします。一人の面接官の印象だけに頼らないことが、結果的に見極めの精度を上げます。
「とりあえず採用」が、一番の落とし穴
人手不足が深刻な業界ほど、「とりあえず来てくれるなら採用しよう」という判断をしてしまいがちです。ですが、この「とりあえず採用」こそが、早期離職を生む一番の原因だと、私は現場で見てきました。
採用する側にも、覚悟と責任があります。この人を採用したら、この施設でどう活躍してもらうのか、どう育てていくのかまで考えた上で採用する。人手が足りないからという理由だけで基準を下げてしまうと、結局はミスマッチが起きて、短期間での離職につながり、また一から採用活動をやり直すことになります。急いでいる時ほど、一度立ち止まって考える価値があります。
面接だけでなく、書類の段階からすでに始まっている
面接の話からは少しそれますが、書類選考の段階でも、見るべきポイントがあります。手書きの履歴書には、その人がどれだけ丁寧に、時間をかけて向き合ってくれたかが表れます。字のうまい下手ではなく、そこにかけた手間そのものが、応募への本気度を伝えてくれることがあります。面接に進む前の書類選考の段階から、実はもう見極めは始まっています。
面接では見えない部分にも、目を向ける
面接という場は、応募者にとって「良く見せよう」という意識が働く、いわば特別な状態です。本当のその人らしさは、実は面接室の外に出てしまいます。もし施設見学や職場体験の機会があるなら、面接官と話している時の様子だけでなく、他のスタッフとのやり取りや、廊下でのちょっとした振る舞いにも目を向けてみてください。取り繕えない場面にこそ、その人の本当の姿が出ます。
見えないところでの言動にも、実は表れます
私がこれまで採用や見送りに関わってきた中で、一番懸念していたのは、実は面接そのものよりも、面接の前後、廊下や待合室での何気ない言動でした。受付のスタッフへの態度、待っている間の様子、面接が終わって帰る時のちょっとした一言。こうした、面接官の評価が及ばないと本人が思っている場面ほど、その人の本当の姿が出ます。
面接の場では誰でも多少なりとも構えるものですが、気を抜いた瞬間の振る舞いは意外と隠せません。可能であれば、受付や他のスタッフからも、応募者の様子について一言聞いてみることをおすすめします。面接官一人では気づけなかった情報が集まることがあります。
評価基準は、面接官の間で揃えておく
複数の面接官で採用に関わる場合、それぞれが違う基準で「良い」「悪い」を判断してしまうと、結局は面接官個人の好みで採用が決まってしまいます。事前に「この施設が求める人物像はどういう人か」「どの質問で何を確認するか」を、面接官同士ですり合わせておくことが大切です。
簡単な評価シートを用意し、コミュニケーション力・協調性・当事者意識といった項目ごとに、面接官それぞれが評価をつけてから照らし合わせる、という方法も有効です。一人の主観だけに頼らない仕組みを作ることで、採用の精度は上がっていきます。
「面接だけ上手い人」に、気をつける
面接の受け答えがとても流暢で、好印象だった応募者ほど、実は注意が必要な場合があります。話が上手いことと、実際の仕事ぶりが良いことは、必ずしも一致しません。特に、質問に対してすらすらと答えるものの、内容が抽象的で、具体的なエピソードが出てこない場合は、要注意です。
「困難を乗り越えた経験は?」と聞いた時に、「いろいろありましたが、前向きに頑張りました」というような、具体性のない答えが続くようなら、もう一段掘り下げて聞いてみてください。「いろいろ、というのは具体的にどんなことですか」と聞き返した時に、初めて本当の経験が語られることもあれば、話が曖昧なまま終わることもあります。この違いは、見極めの重要な手がかりになります。
オンライン面接だからこそ、意識したいこと
近年はオンラインでの一次面接を取り入れる施設も増えています。オンライン面接は、画面越しのやり取りになる分、対面よりも表情や間の取り方から読み取れる情報が減ります。その分、質問の一つひとつを、対面以上に具体的に、丁寧に掘り下げることを意識してください。また、通信環境や部屋の様子から、応募者がどれだけこの面接に準備をして臨んでいるかが見えることもあります。ただし、通信トラブルなど本人の努力ではどうにもならない事情もあるため、そこだけで評価しすぎないよう注意も必要です。
未経験者を面接する時は、視点を変える
介護業界は、他業種からの未経験入職者が少なくない業界です。未経験者を面接する時、介護の知識や経験そのものを問うのは、あまり意味がありません。それよりも、これまでの仕事でどんな姿勢で働いてきたか、人と関わる場面でどう振る舞ってきたかを聞く方が、はるかに参考になります。
例えば、接客業出身の人であれば「クレーム対応で工夫したこと」、事務職出身の人であれば「複数の業務を同時に抱えた時、どう優先順位をつけていたか」など、前職の経験を介護の場面に置き換えて想像できるような質問をすると、その人が持っているポータブルスキル(業種を超えて活かせる力)が見えてきます。
面接は、一方的な選考の場ではありません
最後にもう一つ、大事な視点を書いておきます。面接は、施設が応募者を試す場であると同時に、応募者にとっても「この施設で働きたいかどうか」を判断する場です。威圧的な雰囲気で質問攻めにするような面接では、たとえ良い人材だったとしても、他の施設を選ばれてしまいます。見極めることと、丁寧に向き合うことは、両立できるものです。緊張をほぐす一言から始める、応募者の話にきちんと相槌を打つ。こうした基本的な姿勢も、結果的に良い人材に選ばれる採用につながります。
まとめ
面接で本当に見極めるべきなのは、話のうまさや第一印象の良さではありません。退職理由・志望動機・将来のビジョンという定番の質問の裏にある意図を理解し、具体的な行動と結果を掘り下げて聞き、雇用形態にとらわれず当事者意識を見る。そして何より、「とりあえず採用」で妥協しない覚悟を持つことが、結果的にミスマッチを防ぎ、長く働いてもらえる採用につながります。
【採用担当者さんへ】次の面接では、定番の質問をただ聞くだけでなく、その答えの先にある具体的なエピソードまで、一歩踏み込んで聞いてみてください。


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