結論:2割特例は2026年分(2027年3月の申告)で終わり、2027・2028年分は3割特例、2029年分からは特例がなくなります。農産物・水産物の販売(飲食料品の譲渡)は、簡易課税では第2種(みなし仕入率80%)です。税込売上300万円なら、納める消費税は年約5.5万円(2026年分)、約8.2万円(2027・2028年分)、約5.5万円(2029年分から・簡易課税)と変わっていく計算です(すべて試算)。農業は3割特例が終わった後でも、みなし仕入率80%の恩恵で、売上税額の20%だけ納めればよいため、建設・軽貨物より負担が軽くなります。
1. あなたの数字で試算する
このツールの対象:農産物・水産物の販売(飲食料品の譲渡)が主な収入の方
農作業の受委託(田植え代行・収穫代行など)は第3種(みなし仕入率70%)の可能性があり、このツールの計算とは異なります。農業サービス業を主な収入とする方は、税務署や税理士に確認してください。また、農協との取引(委託販売・特例)については、お取引の農協に直接確認してください。
※試算は、国と地方を合わせた消費税10%で計算した概算です。端数処理や、個別の事情(課税期間の短縮、高額な農機具の購入など)は反映していません。
2. 農協・直売所・取引先に「消費税分の上乗せ」を相談するシート
インボイスに登録して新しく消費税を納めることになったのに、農協・直売所・取引先からの支払いが前と同じままなら、納める消費税の分だけ手取りが減ります。国は、この消費税分について「仕入先と明示的に協議することなく取引価格を据え置くこと」は問題となるおそれがあると、Q&Aではっきり書いています(下の原文を参照)。このシートは、取引先に話し合いをお願いするときに見せる資料を、あなた自身が作るためのものです。
シートの中身①相談のお願いの文例 ②この取引先との取引分で納める消費税の表(あなたの数字で自動作成) ③国の資料の原文(Q&A・取適法・フリーランス法) ④出典 ⑤自分用:話す順番のメモ(取引先には渡さない2枚目)
3. よくある質問
2割特例は、2026年分で終わります
個人事業者は2026年分(2026年1〜12月)が最後です。国税庁のインボイスQ&A(問115)は、2割特例の期間を「令和8年9月30日までの日の属する各課税期間」としていて、個人の課税期間は1〜12月なので、2026年分までとなります。2026年分の申告期限は2027年3月31日です。
3割特例は、2027年分と2028年分の2年だけです
国税庁の「令和8年度税制改正特集 3割特例」(PDF)は、「インボイス発行事業者の登録を受けたことにより免税事業者から課税事業者となった個人事業者に係る令和9年分・令和10年分の消費税の確定申告において納付税額を売上税額の3割とすることができる特例です。」と説明しています。主な条件は、2年前の課税売上高が1,000万円以下であることなどで、事前の届出は要らず、申告書に適用を受ける旨を書きます。
農産物・水産物の販売は、簡易課税では第2種(みなし仕入率80%)です
国税庁のタックスアンサー(No.6509)は、第2種事業(みなし仕入率80%)を「農業、林業、漁業(飲食料品の譲渡に係るもの)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業」としています。飲食料品を売る農業・漁業は第2種(80%)なので、建設業や軽貨物(第5種・50%)より納める消費税が少なくなります。3割特例が終わった2029年分以降は、売上税額の20%だけ納めればよい計算です。簡易課税を使うには、2年前の課税売上高が5,000万円以下であることなどが条件で、原則として使う年の前の年までに届出が必要です。
農業サービス業(農作業の受委託など)は、第3種になることがあります
国税庁No.6509によると、農業・林業・漁業のうち「飲食料品の譲渡に係るもの以外のもの」は第3種(みなし仕入率70%)に分類されます。田植え代行・収穫代行・農薬散布代行などの農業サービスを受け取る収入がある場合、その分は第3種になる可能性があります。2つの事業が混在する場合は、計算が複雑になります。税務署や税理士に確認してください。
登録しないで免税のままなら、取引先の負担が少しずつ増えます
あなたが消費税を納めることはありません。ただし農協・直売所・スーパーなどは、あなたへの支払いに含まれる消費税を、少しずつ差し引けなくなります(2026年10月から70%、2028年10月から50%、2030年10月から30%、2031年10月から0%しか控除できない)。取引先の負担が増えるぶん、値下げや取引の見直しを求められることがあります。上の試算で「登録していない」を選ぶと、その額の目安を表示します。
農協との取引は、別途確認が必要です
農協(JA)との取引は、委託販売・買取・農協特例など、様々な取引形態があります。農協特例(消費税法上の特例)が適用される場合は、個々の農家のインボイス登録有無に関わらず農協が一括して処理できることがあります。ご自身の農協との取引がどの形態に当たるかは、お取引の農協・JAに直接確認してください。
フリーランス法や取適法が当てはまるかは、取引の中身で決まります
フリーランス法は、従業員を使わない個人などに業務を委託する場合の取引のルールです。農産物の販売や農作業の委託がこの法律の対象になるかどうかは、取引の中身や相手方の規模によって変わります。取適法は、委託元の資本金や従業員の数、委託の中身によって当てはまる法律です。あなたの取引に当てはまるかどうかは、公正取引委員会などの相談窓口で確かめてください。
このシートを使っても、値上げが必ず通るわけではありません
国の資料は、話し合いを求める根拠になりますが、相手に値上げを強制するものではありません。農協・直売所・スーパーの買取価格の決まり方によっては、個別の相談がしにくい取引もあります。このシートは、あなたが自分の名前で相談するための材料です。結果を約束するものではありません。